「非対称な有限べき乗和 S(a,b,n) を、対称な形の多項式だけで表せるんじゃないか…?」と、ことは始まりました。
まずは、bの部分がaより1つだけ大きい、S(a,a+1,n) について。
S(a,a+1,n) = Σk^a(n-k)^a(n-k) = nΣk^a(n-k)^a - Σk^(a+1)(n-k)^a = nS(a,a,n) - S(a+1,a,n)
対称性の性質 S(a,b,n) = S(b,a,n) を使うと、 S(a+1,a,n) は S(a,a+1,n) と同じなので、上の式は
2S(a,a+1,n) = nS(a,a,n)
となります。つまり、
S(a,a+1,n) = 1/2( nS(a,a,n) )
S(a,a+2,n) だとどうなるだろう?
S(a,a+2,n) = Σk^a(n-k)^(a+1)(n-k) = nΣk^a(n-k)^(a+1) - nΣk^(a+1)(n-k)^(a+1) = nS(a,a+1,n) - S(a+1,a+1,n)
先ほど求めた結果(S(a,a+1,n) = 1/2( nS(a,a,n) ))を代入してみると、
S(a,a+2,n) = 1/2( n^2S(a,a,n) - 2S(a+1,a+1,n) )
ここで、式をすっきりさせるために、次のように置きます。
S_j = S(a+j,a+j,n) ... (14)
(_ アンダースコアは右下添え字の意味で使っています。)
特にaを基底に持ち共に同じ変位jを持つ有限べき乗和を「対称核」と呼んでいます。
以前導き出した式(4)を使います。
nS(a,b,n) = S(a+1,b,n) + S(a,b+1,n) ... (4)
これを S(a,b+1,n) について解くと、
S(a,b+1,n) = nS(a,b,n) - S(a+1,b,n)
となります。ここで b+1 = a+c と置いてみると、
S(a,a+c,n) = nS(a,a+c-1,n) - S(a+1,a+c-1,n)
という関係式ができます。
これを使って非対称な式 S(a,a+c,n) を、対称核 S_j だけで表現しようとするとどうなるか。
計算量が多いので結果だけ示します。(※見やすくするために、全体の係数 1/2 は除いて書きます)
c=1 のとき: nS_0
c=2 のとき: n^2S_0 - 2S_1
c=3 のとき: n^3S_0 - 3nS_1
c=4 のとき: n^4S_0 - 4n^2S_1 + 2S_2
c=5 のとき: n^5S_0 - 5n^3S_1 + 5nS_2
c=6 のとき: n^6S_0 - 6n^4S_1 + 9n^2S_2 - 2S_3
c=7 のとき: n^7S_0 - 7n^5S_1 + 14n^3S_2 - 7nS_3
対称核 S_j の多項式で表せました!
各項に付いている「係数」の並びに注目します。
c=1: [ 1 ]
c=2: [ 1, -2 ]
c=3: [ 1, -3 ]
c=4: [ 1, -4, 2 ]
c=5: [ 1, -5, 5 ]
c=6: [ 1, -6, 9, -2]
c=7: [ 1, -7, 14, -7]
法則性がありそうだなぁ…。なんかチェビシェフに似てるような…。
そこで、ネットで調べると、符号が違うのですがリュカの多項式の係数と同じことがわかりました。チェビシェフの方がなじみがあるので、変形チェビシェフの多項式と呼びます。
変形チェビシェフ多項式 C_c(x) を書き出してみます。
(_ アンダースコアは右下添え字の意味で使っています。)
C_1(x) = x
C_2(x) = x^2 - 2
C_3(x) = x^3 - 3x
C_4(x) = x^4 - 4x^2 + 2
C_5(x) = x^5 - 5x^3 + 5x
C_6(x) = x^6 - 6x^4 + 9x^2 -2
C_7(x) = x^7 - 7x^5 + 14x^3 -7x
上の S(a,a+c,n) の展開式の n を x に置き換えて、S_j の部分を無視して係数だけを取り出すと、変形チェビシェフ多項式そのものになるんです。
この多項式は次の漸化式の関係があります。
C_n = xC_(n-1) - C_(n-2)
さらに、対称核 S_j で表現した場合の係数は次のように表すことができます。
S(a,a+c,n)= 1/2 ΣA(c,j) n^(c-2j) S_j
(Σの範囲はj=0からc/2以下の最大の整数) ... (15)
A(c,j) = (-1)^j (c/(c-j)) (c-j C j)
(Cはコンビネーション、二項係数) ... (16)
最近になって知ったのですが、この変形チェビシェフ多項式の係数の並びは「ディクソン多項式」と一致していました。 そして、 P(c) = k^c+(n-k)^c、 W = k(n-k) として、 2S(a,a+c,n) = ΣP(c)W^a という関係式を利用することで、P(c) に「ウェアリングの公式」を適用して理論を組み立てることができることが分かりました。
べき乗の和の計算に興味深い性質を見つけて夢中になり、先人の歩いた道と交錯した様でワクワクしたのでした…。