どうも、FXトレーダー兼システムエンジニアのナオトです。
投資と心理の話の56回目です。前回は、前もって決めた作業を当日の自分が減らしてしまう、先延ばしのくせの話でした。
今回は、経験を積んだプロでも、損を避けるくせは消えなかった、という話です。
投資と心理の1回目で、損は得の2倍ほど重く感じる、というプロスペクト理論の話を書きました。
これには、昔から反論があります。実験室の学生ならそうかもしれないが、経験を積み、競争にさらされ、大きなお金がかかっているプロなら、くせは消えるはずだ、というものです。
そこで、経済学者のポープとシュヴァイツァーは、アメリカのプロゴルフのツアーで確かめました。
ゴルフの順位は、大会の4日間の合計の打数で決まります。1つのホールで何打だったかは、本来は合計の一部でしかありません。
ただ、ホールごとに、パーという基準の打数があります。パーより1打少なければバーディー、1打多ければボギーです。
調べたのは、2004年から2009年までの239大会、421人の選手の、252万回を超えるパットです。ボールの位置はレーザーで測られています。
パーを取りに行くパットは、外せばボギー、つまり損です。
バーディーを取りに行くパットは、入れば得です。
合計の打数だけを考えるなら、どちらも同じ1打で、同じように打つはずです。
結果はこうでした。
同じような距離と位置のパットで比べると、バーディーのパットは、パーのパットより約2ポイント入りませんでした。
同じ大会の同じホールで、1インチ以内の位置から打ったパットどうしを並べても、同じ差が出ています。
外したときを見ると、バーディーのパットは弱めに打たれ、カップの手前に止まることが多くなっていました。
得の側では慎重になり、損の側では力が入る。プロスペクト理論の予測どおりの形です。
タイガー・ウッズを含む上位の選手にも、この差はありました。
もしバーディーのパットをパーと同じように打てたら、1大会で1打以上よくなる計算です。2007年の上位20人なら、賞金が平均で約64万ドル、17.6%多かったことになるそうです。
ただし、差は大会の1日目がいちばん大きく、4日目には半分より小さくなっていました。後半は、ほかの選手の点が新しい基準になるから、と著者は読んでいます。
取引に置き換えると、パーにあたるのは、自分が入った価格です。
少し利益が乗ると慎重になって早めに降り、含み損になると取り返すことに力が入る。投資と心理の1回目で書いた、ディスポジション効果と同じ向きです。
これはゴルフの研究で、取引の研究ではありません。著者も、すべてのパットを同じ集中力で打てるとは限らない、と断っています。
ただ、世界の一流が何年も続けて、それでも残っていたくせです。経験で消えるのを待つより、利確と損切りの位置を、入る前に決めて置いておく。そのほうが、くせの入り込む余地が小さくなります。
決めた位置で利確と損切りをするEAやインジケーターの開発のご依頼も受けています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。