本日も記事をご覧いただきありがとうございます。ひろです。
人について考える。
本日のテーマは、
「人の評判」
です。
事務所の前まで来る。この中にオーナーがいるのか。
おそるおそるドアノブに手をのばす。
ガチャ
僕がドアを開ける前に、ドアノブが回る。
「それじゃ、宜しくおねがいします」
中から出てきたのは2人の男性。1人は、派手なスーツにがっしりとした体格。オーナーだ。でも、もう一人は・・・。
「こんにちは。今日も店の前、掃除してきた?」
「あ、はい」
どこかで会ったような気がする。
「知り合いか?」
オーナーが男性に話しかける。
「いつも店の前を掃除してくれてるんです」
男性が答える。店の前、掃除・・・あ!
以前、掃き掃除をしていたら、声をかけてくれたあの人だ。
「ど、どうも」
僕の精一杯の挨拶に、男性は笑顔を向け、オーナーに一礼し去っていく。
「何ぼーっとしてんねん。入れよ」
「はい!」
事務所内の応接室に招かれる。
「とりあえず座れよ。なんか飲むか?」
「いえ、大丈夫です」
何を言われるんだろう。いまのところ、怒っているようには見えない。部屋の中央にあるソファーに座り、オーナーが話し出すのを待つ。
「昨日給料日やったやろ?」
「あ、そうですね」
「いつもなら、ミーティングの時に渡すんやけど。昨日から、個人個人に話を聞きながら渡すことになったから」
なるほど。良かったと一安心。
「そん時によくお前の話が出てきたから、ちゃんと話してみようと思ってな」
「僕の話ですか・・・」
なんだろう。
「頑張ってるらしいやん」
「そうですかね?」
あんまり覚えがない。
「頑張ってへんのか?」
「そうですね。以前、働いてたところよりは頑張ってないかもしれません」
「お前、俺が頑張ってるって言ってんのに、頑張ってないってケンカ売ってんのか」
オーナーは笑いながら話を続ける。
「他の従業員と話したんやけど、最終的にお前の話になることが多くてな」
「そうなんですか?」
「調理場のおっちゃん分かるか?」
「はい」
「お前の事褒めてたで。お前、早く出勤してるんやろ?」
「まぁ、早くというか。遅刻が嫌いなので、早く行く感じですね」
「そっから買い出しやってるんやろ。本来、調理場の若いやつおるやろ。あいつが行くんやで」
「あ、そうなんですか」
知らなかった。
「何回言っても覚えんから、一度言ったら覚えるお前に行かせてるって言ってたわ」
「そうなんですね」
「他の従業員もそうやで。店の細かい事聞いたら、みんな大山が知ってると思いますって。発注とかもメモってるって聞いたけど」
「備品とか消耗品の発注とかはメモしてます」
「メモしてどうすんの?」
「消耗品とか、1日の最低限使う量を把握していれば、必要以上に買い込む必要はないので」
「必要以上に買い込む時があったんか?」
「はい。先輩があれが足りない、これが足りないって、営業時間中でも買いに行かされる機会が多かったんです。でも、店の中探したら、本当はあるケースが多かったんで整理しました。あとは、買い出しに行くと、僕がこなさなきゃいけない仕事がたまったりするんで」
そして、仕事が回らなくなると怒られる。
「なるほどな。あとレジ締めもやってるんやろ?」
「そうですね」
レジ締めとは、店の1日の収支を把握するお仕事。お客様の会計や、急な買い出しの費用などを把握して、最初に入れたレジ金との差額を合わせる作業。
「まだ店に入って3ヶ月目やろ」
「そうなんですけど、店長にお金に困ってるかって聞かれて。貯金あるんで大丈夫ですって言ったら任されました」
「あいつ(店長)も適当やな。今の店の1日の売上分かるか?」
「昨日のは休んだんで分かんないんですけど。先週とか、月の平均なら分かります」
「すごいなお前。レジ締めとか、たまに合わない時あるやろ」
「はい。でも、店長から店の鍵もらったんで。最悪、自分のタイミングで帰れます」
「鍵持ってんの!」
「はい。いつも早く出勤してたら、後から来るのは悪いからって店長がくれました」
オーナーの表情がみるみる変わっていく。
「さっき入り口で会ったあいつは?」
「どうかしましたか?」
「店の前掃除してくれてるって。あいつ、斜め向かいの店のオーナーやで」
「あ、そうなんですね。店の前だけキレイにしてたら、周りのゴミが目立ってしまうんで。ついでに」
「店の前だけじゃなくて、あの一帯を掃除してるんか!」
オーナーは驚きながら、何度も頷いている。
「なるほど。お前、きれい好きなんやな」
「そうでもないです。部屋とかは汚いですよ」
「なんでやねん! そこお前きれい好きじゃないとおかしいやろ!」
「いや、仕事なんで。仕事はちゃんとするって決めてるんで」
「でも頑張ってないんやろ?」
「はい」
「なんでやねん!」
オーナーの大きなツッコミが事務所内で鳴り響いたのでした。。
追伸
ウソのような本当のお話。
20年近く前の話になります。
引きこもり上がりで、人見知りというより、人が怖い。
接客が苦手だった男が、接客を避け続けた男が、
接客以外を短期間でマスターしてしまった時のお話。
自分が頑張っているか頑張っていないかに関係なく、
周りが自分を認めてくれていたお話です。
これは、僕にとっては魔法のような体験でした。