営業、投資、財務の3つのキャッシュフローがどのような組み合わせになっていれば、その企業の経営状態はよいと言えるのか。または、経営に危険信号が出ていると言えるキャッシュフローのあり方はどのようなものか、類型から探ってみましょう。
営業のプラスで他のマイナスをカバーできる優良企業
前述の通り、営業キャッシュフローは本業で得たキャッシュですから、大きなプラスとなるにこしたことはありません。
財務キャッシュフローは借入金の返済が進んでいることを示すマイナスが望ましいですし、投資キャッシュフローも新規事業等の案件に投資してマイナスだとしても、2つのキャッシュフローのマイナスが営業キャッシュフローのプラスの範囲内で十分収まるのであれば問題はなく、健全経営の優良企業と言えるでしょう。
財務のプラスが大きくなりがちなベンチャー
財務キャッシュフローが大きなプラスで、営業キャッシュフローのプラスがそれほどでもないという例には、アーリーステージにあるベンチャー企業などが当てはまります。借入等で得た資金を営業活動のキャッシュに変えていけるのか、成長を注視したい企業です。
キャッシュフローでわかるゾンビ企業
営業キャッシュフローがマイナスの企業は、もうその時点で要注意ですが、さらに投資キャッシュフローと財務キャッシュフローがプラスだったら警戒信号が灯っている状況です。本業で稼げないので資産の売り食いと借入で何とかしのいでいる――いわゆるゾンビ企業がこれに当たります。
具体例に見るキャッシュフロー
上場企業なら必ず決算時にキャッシュフロー計算書を公表していますので、実例でキャッシュフローを見てみましょう。ちょっと古い数字で恐縮ですが、投資と財務のキャッシュフローが四半期で1兆円を超えていた、ソフトバンクグループを例にとります。
2018年12月に携帯電話会社のソフトバンクを切り離し、投資ファンドとしての性格を固めてきたころのソフトバンクグループです。同社のキャッシュフロー計算書(2021年3月期第1四半期)は以下のようになっていました。
・営業キャッシュフロー 1540億2400万円
・投資キャッシュフロー 1兆2411億300万円
・財務キャッシュフロー 1兆4153億7500万円
3分類すべてプラスになっており、投資と財務は1兆円を超える大幅なプラスです。しかも第1四半期の3か月間だけでこれです。
投資キャッシュフローの中身を見ると、上場株式の取得で1兆60億円のマイナスがある一方で、子会社を通じて保有するTモバイル株式の一部を売却するなどによりプラス2兆4525億円強を計上するなど、ファンドらしい大きな売買が行われていました。
財務キャッシュフローは、借入や社債発行によるプラスと借入金の返済や社債償還などによるマイナスを差し引きして1兆4153億円余りですから、借入も社債発行もかなりの巨額であり、相当額の返済と償還を同時に行っていることがわかります。
もしや業態転換の兆しなのか
営業、投資、財務の3つのキャッシュフローがすべてプラスになっている企業は、教科書的には業態転換等を模索中というケースが該当します。同社は携帯事業中心から投資ファンド的な企業へと構造を変えていましたが、その頃にはさらなる変化を企図していたのかもしれません。
キャッシュフローを見ると自分の会社がヤバい…とわかるかも
ここまでキャッシュフローとは何か、3分類のキャッシュフローがそれぞれどのようなものか、キャッシュフローはマイナスだからといって必ずしも悪ではないこと、3分類それぞれのプラスとマイナスの組み合わせからわかる経営状態、実例に見るキャッシュフロー等について解説してきました。
今まではあまりキャッシュフローについて気にすることはなかったかもしれませんが、これを機会に確認してみてはいかがでしょうか。キャッシュフローを分析することによって、今いる会社や転職先として検討している会社が実は……、というようなことがわかる可能性があります。