決算書では黒字なのに、通帳残高は前月より減っている。
この状態を見ると、「利益が出ているのに、なぜお金がないのか」と不安になる経営者は少なくありません。しかし、これは必ずしも計算ミスではありません。
利益は、売上と費用を会計上のルールに沿って集計したものです。一方、現金は実際の入金と支払いで増減します。売上を計上する月と入金月、費用を計上する月と支払月が違えば、利益と現金はズレます。
日本政策金融公庫の創業者向け資料でも、回収と支払いの条件差、費用として計上されない借入金返済、在庫の増加などが、資金繰りを苦しくする要因として挙げられています。
今回は、黒字でも現金が減る代表的な5つの要因と、原因を確認する順序を整理します。
図の5項目を月次の入出金と照らすだけでも、現金が減った原因を絞り込みやすくなります。
【1】売掛金が増えている
売上は、商品を納品した月やサービスを提供した月に計上されても、入金は翌月や翌々月になることがあります。
たとえば、月末に300万円の売上を計上し、入金が翌月末なら、当月の利益には反映されても当月の現金は増えません。売掛金の増加は、「利益になったが、まだ回収していない金額」です。
【2】在庫が増えている
商品や材料を仕入れて支払いをしても、まだ販売していない在庫は、その時点ですべてが売上原価になるとは限りません。
そのため、在庫が積み上がると、現金は先に出ているのに利益への影響は後から表れます。売上増加を見込んだ先行仕入れだけでなく、売れ残りや過剰発注がないかも確認が必要です。
【3】設備投資をしている
設備代金は一度に支払っても、会計上は減価償却を通じて複数期間に分けて費用になる場合があります。
たとえば600万円の設備を現金で購入すると、支払時点では現金が600万円減ります。一方、その月の費用が同額になるとは限らないため、利益と現金に大きな差が生じます。
【4】借入金の元金を返済している
借入金返済のうち、利息は費用になりますが、元金は費用ではありません。
毎月50万円を返済し、元金45万円・利息5万円という例では、現金は50万円減りますが、利益を減らす費用は利息の5万円です。元金返済が大きい会社ほど、黒字でも手元資金が減りやすくなります。
【5】税金などの支払時期が来ている
利益が計上された時期と、税金を実際に支払う時期は一致しないことがあります。黒字の月が続いていても、まとまった支払いがある月には現金が大きく減ります。
税額や支払時期の個別判断は、税理士等の専門家へ確認してください。経営管理では、見込額と支払予定月を資金繰り表へ入れておくことが重要です。
単純化した例で確認する
次は、ほかの入出金や買掛金の増減などを省いた例です。
・月次営業利益 +100万円
・売掛金の増加 -120万円
・在庫の増加 -50万円
・設備の支払い -80万円
・借入元金返済 -30万円
・税金の支払い -20万円
この場合、営業利益は100万円の黒字でも、単純計算した現金の増減はマイナス200万円です。利益だけを見ていると、資金不足の予兆を見落とします。
まず3つの資料を並べる
原因を確認するときは、次の3つを同じ月で比べます。
・損益計算書:利益はいくら出たか
・貸借対照表:売掛金、在庫、借入金がどう増減したか
・資金繰り表:実際の入出金と今後の予定はどうか
特に、直近3か月の預金残高、売掛金、在庫、借入元金返済を並べると、現金が減った主因が見えやすくなります。そのうえで12か月先までの入出金を予測し、資金不足になる月を早めに把握します。
まとめ
・利益と現金は、計上と入出金の時期が違うため一致しない
・売掛金、在庫、設備、借入元金、税金の5項目を確認する
・損益計算書、貸借対照表、資金繰り表を同じ月でつなげて見る
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※本記事は一般的な財務管理の解説です。税務の個別判断は、税理士等の専門家へご確認ください。
参考:日本政策金融公庫「創業の手引」「黒字なのにお金がないのはなぜ?」、企業会計基準委員会「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」