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今日は、楠木建&杉浦泰著「逆・タイムマシン経営論」(日経BP)を紹介します。一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と社史研究家の杉浦泰氏が共同で行うオンラインゼミナール「逆・タイムマシン経営論」というのがありますが、それが書籍化されたものです。ました。
これまで多くの企業が、日本よりも先を行く米国などのビジネスモデルを輸入する「タイムマシン経営」に活路を見出そうとしてきました。しかし、それで経営の本質を磨き、本当に強い企業になれるのでしょうか?
むしろ、大切なのは技術革新への対応などの過去の経営判断を振り返り、今の経営に活かす「逆・タイムマシン経営」だと主張しています。
人間は「今、目の前で起きている状況がこれからもずっと続く」という錯覚に陥りやすく、それは高度成長期でもバブル期でも、新型コロナ禍でも同じです。そして、過去の様々な時点で、未来予測をしてきましたが、予測というものは本質的に間違うものです。予測は誰にもできない、誰でも外すと言った方が正しいのです。しかし、変わらない本質的な部分が存在します。
本質が分かっている人と、そうでない人との違いは、「何か起こった時に『いつか見た風景』という引き出しがあるかどうか」だということです。そして、経営判断のためにそうした「引き出し」を増やしておくことが有用であるのです。
本書に登場する、サイゼリアの堀埜社長は、「キャッシュレス決済」の話が入ってきた時に、瞬時に、店のオペレーション・什器・来客時間・性別などが変わっていくと読み取り、その上で「すぐに導入しない。ある程度普及してからで十分」と決断しました。「引き出し」のない経営者だと「時代がキャッシュレスを求めている」とすぐに飛びつき、無駄な投資をすることにもなりかねないのです。「引き出し」を持っていると適切な経営判断ができるのです。
「歴史は繰り返す」と言われますが、過去の歴史的事象の中にも変わらない本質的な部分があります。自分の会社の社史の中にも変わらない本質的な部分があるはずです。それらをしっかりと掴まえて「引き出し」にしまっておく、そして必要な時に「引き出し」から出して考える素材にするということが重要なのです。
何事においても変わらない本質的な部分は存在します。その本質的な部分をしっかりと理解していないと時代の流れに翻弄され、何度も言うように「何が目的で、何が手段か」が分からなくなってしまいます。目的達成の手段にしか過ぎないものが目的に昇華され、本来の目的・本質を見失った結果、目的化された手段だけで自己満足化してしまうのです。
これまでも取り上げているデジタル化やDXにしても、社会の流れで飛びついても、何の役にも立ちません。自社が抱える課題を解決するに本当に必要かを判断したうえで導入すべきなのです。そして、その判断には、「引き出し」が必要なのです。この「引き出し」に仕舞われている「いつか見た風景」というのは、過去に自分や先人たちが経験した事象が含まれるのです。過去に同じような事象が起きたときに自分や先人たちがどのように対処したのかということです。当然、全く同じ事態は起こりませんが、変わらない抽象化された本質が存在するはずです。それを思考や判断の指針として現在の課題に対処するということです。経営においても過去から学ぶということが重要です。日本の企業の場合、特にアメリカのカタカナ経営論や最先端の経営理論を振りかざしてみても、その土台が違うのでうまくいしません。その意味では「逆・タイムマシン経営論」は役に立つはずです。