中小企業経営のための情報発信ブログ161:日本の優良企業研究

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
さて、今日は、新原浩朗著「日本の優良企業研究」(日本経済新聞社・日経ビジネス文庫)という本を紹介します。著者の新原氏は、経済産業省の官僚で、現在は内閣官房成長戦略会議事務局長代理を務めています。関係ない話ですが、2019年に菊池桃子の再婚相手として話題になりました。
トヨタ、キャノン、シマノなど日本を代表する30社の優良企業の経営者・従業員の意識を検証、徹底分析し、そこから見いだされた共通の経営減速を「6つの条件」として提示しています。
戦後大成長を遂げた日本企業は、バブル崩壊後の失われた30年で、急速に力を失い、企業だけでなく社会全体に閉塞感が覆っています。しかし、日本企業の中にも、不況下や現在のコロナ禍でも成功を続ける企業はあります。日本企業にだって欧米の企業に負けない優れたところはあるはずです。「日本企業の良さとは何か」をテーマにしたのがこの本です。
この本の冒頭には、次のように結論(優秀な日本企業とは)が書かれています。
自分たちが分かる事業を、やたらと広げずに、愚直に、真面目に、自分たちの頭で きちんと考え抜き、情熱を持って取り組んでいる企業
これは、以前紹介した「コア・コンピタンス経営」に通ずるものです。さらに言えばまさに「選択と集中」であり、日本型選択と集中である「ランチェスター経営」にも通じます。
これらは、大企業だけでなく、中小企業にも通じます。
ここでは、この本の6つの条件を見ていきます。
1.分からないことは分ける
 分からない事業はやらないということです。
 以前紹介した楠木建著「ストーリーとしての競争戦略」にもあげられているマブチモーターですが、ブラシ付き小型モーターという最も技術的に成熟した分野に特化し、更に重要なこととして「モーターの標準化」を戦略のカギとしています。これにより「標準化⇒大量生産⇒規模の経済⇒低コスト」という長期利益を生み出すことが可能となったのです。このマブチモーターが世界屈指のひげそりメーカーであるブラウンから破格の条件でモーターの開発を依頼されますが、マブチモーターはあっさりと断ります。そのかわり自社モーターでブラウンが必要とする性能の商品を10分のⅠの価格で提供したのです。今やブラウンが採用する小型モーターはマブチモーターだけです。このようにトップが現場の実態を徹底的に理解しているから、具体的に事業の絞り込みができ、分からないものはやらないと判断(意思決定)できるのです。
 ダメな会社のトップは、自社の事業が何か明確に分かっていないのです。複数の事業を行なっていてもかまいません。以前紹介したキングジムは何屋さん分からないぐらい色々な商品を販売しています。しかし、社長自身自社の事業を把握しているので、コロナ禍でも「売れないものは諦める、売れるものを売る」と判断でき過去最高益を出しているのです。
2.自分の頭で考えて考え抜くこと
 持続的成長している優秀な企業のトップは、例外なくロジカルに物事を考えています。一見単なる思いつきで常識外れないし決定でも、実に論理的に説明できるのです。
 例えば、ヤマト運輸の宅配便ですが、当時通便局を相手に一運送業者がゼロから同じような配達の仕組みを日本全国に展開しようというのは常識外れの挑戦でした。しかし、ヤマト運輸の小倉社長は、実にロジカルに考えて考え抜いて仕組みを作りました。「47都道府県に、それぞれ1つずつのハブターミナルを作り、その下に20の営業所を作る、夜の間にハブへトラックで荷物を運び朝に営業所から配達する、これで翌日配達が可能になる」と考えたのです。当時郵便局の小包は配達に5日程度かかっていました。「翌日配達ができれば郵便局に勝てる」というわけです。
 問題は「儲かるか」ということです。コストの大部分は、配送拠点や配送員の人件費などの固定費です。小倉社長は「総費用を上回る取引数量があれば儲かる」と考え、取引数量を増やすこと、それには「サービスを良くすれば、取引量はついてくる」と結論づけたのです。「サービスが先、利益はあと」という標語をつくり、全社で優先順位を徹底したのです。
 重要なことは、経営トップが自分の頭で考えて考え抜くことが大切なのです。
3.客観的に眺め、不合理な点を見つけられること
 人間というのは自分本位、自己中心的で、物事を客観的に見るというのは不得手です。しかし、優秀な経営者や経営トップは物事を客観的に見て判断しています。主観的にしか物事を見れなければ、自分に都合がいいようにしか見えてきません。それでは、不合理な点も自己都合で解釈することになります。
 ヤマト運輸の小倉社長も入社直後結核を患い4年以上職場を離れ、復帰後経営破綻した運送会社に出向し生の現場を見ています。
 キャノンの御手洗冨士夫会長は、本社勤務の経験がほとんどなく海外子会社育ちでしたが、先代社長の急逝で社長に就任し、キャノンを変革しました。
 2人とも創業者一族とは言え、本流から外れることで、客観的に会社を眺めることができたのではないかと思われます。客観的に会社を見つめることができれば、改革が必要な不合理な点が見えるのです。それを自己都合で解釈することもありません。
 中小企業の中には、後継者である子供を最初から役員としているところも多いのですが、いったんは外(取引先等)に出して外から会社を眺めさせるか、他の社員と同じように一から現場仕事をさせるべきではないかと思います。
4.危機感を持って企業のチャンスに転化すること
 「ピンチをチャンスに変える」とよく言われますが、難しいものです。やはりピンチはピンチです。しかし、人間追い詰められれば、「火事場の馬鹿力」ではありませんが、思いがけないアイデアや発想が生まれるものです。そうなれば新しい方向性を見いだし、新しいビジネスモデルを構築するチャンスになります。
 ダメな企業は、危機に直面すると焦ってこれまでやってきたことを全否定し、成功している他社の真似を始めます。あるいは、危なくなっていても、危機的状況から目をそらし「自分のところは大丈夫」と楽観的で、これまでの事業を見直すことすらせず、これまでの事業にしがみつきます。
 正しい危機感をキャッチする感性を研ぎ澄ますことが大切なのです。
5.身の丈に合った成長を図り、事業リスクを直視すること
 変革には時間と労力がかかります。思い切った改革は必要ですが、少しずつ前に進めていくしかありません。
 成功して持続的に成長を遂げている企業は、自ら生み出したキャッシュフローの範囲内で、身の丈に合った投資を行なっています。ムリはしていません。何事もムリをすれば、必ずそのしわ寄せがどこかにきます。身の丈に合った範囲内であれば、継続的に投資を続けることができます。それが持続的な成長を促すのです。
 また、どのような事業にもリスクはつきものです。時に投資を行なった事業が失敗することもあり得ます。身の丈に合った投資であれば、リスクを最小限に抑えることができ、致命的な痛手を受けることはありません。その失敗を糧に次へとチャレンジできるのです。
6.世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること
 いつも書いていますが、稲盛経営や永森経営、更に経営の神様と言われた松下幸之助氏は「利他」の精神を常に語っています。「世のため、人のために仕事をする」というのが、企業を統治する理念であり、企業を長期的に発展させる基です。確かに「儲ける」ことができなければ企業は成り立ちませんが、儲けるためには「利他」の精神が必要不可欠ではないかと思います。
 長期的に持続的に成長している企業の経営者や社員にはお金儲け以外の使命感や倫理観といったものが備わっているように思います。企業不祥事の事例を見ると、利益追求が目的化され、使命感や倫理観といった理念やビジョンが欠けているように見えます。
この本が指摘している上の6つの条件は、企業だけでなく個人にも当てはまります。
企業の原点は人です。業績が悪い企業にも優秀な人材が眠っています。その人が能力を発揮できる仕事がない、場所がないのです。社員が自立的に働ける仕組みを整え、自立的な社員を支援することが大切です。
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