私のルーツ旅・第3話|漁師?鋳物師?──地図に隠された「もうひとつの地図」

私のルーツ旅・第3話|漁師?鋳物師?──地図に隠された「もうひとつの地図」

記事
コラム

「確かに、ここに住んでいた」
はずなのに──


名前が、ない。


ようやく見つけた先祖の本籍地。
期待を胸に旧土地台帳を取り寄せた──


しかし、そこにご先祖の名前はなかったのです。


つまり、この本籍地は先祖が所有していた
土地ではなく、「賃貸」していた可能性が出てきました。


居ても立ってもいられず、
私は戸籍を片手にその場所へと向かいました。


ここが、先祖の暮らした場所なんだな。


その場所は、私の実家から
さほど離れていないところでした。


先祖はどんな仕事をしていたのだろう?
やはり漁師だったのだろうか。
そう思ったのには理由があります。


図書館で司書の方が教えてくれた言葉──


「この辺り(戸籍にあった本籍地)
に住んでいるなら、8割は漁師だよ。」


確かに、海が近くにある場所でした。
漁師として暮らしていたと
考えるのが自然に思えました。


ふと、道端に立つ道標が目に入りました。
「鍋町」と書かれており、何やら説明書きもあります。


この町の規模は、はっきりしないが、古新宿町と新宿町一部を含む小町だった。小田原北条氏時代から街には鍋などを作る鋳物師(いもじ)が多く住んでいたので、この名がついたと言われている。
昔から鍋物屋、鋳掛屋、釜屋、屋根屋等で賑わった職人の町であった。


「ここは、鋳物師が住んでいた通りなのか……?」


城下町であれば、生活道具や武具の鋳造が
行われていたとしても不思議ではありません。


鋳物師か? それともやはり漁師か?


この土地について、もっと深掘りしていけば
何かわかるかもしれない──


実は、もうひとつ
気になっていたことがありました。


それは
「本当にこの土地は賃貸だったのか?」
という疑問です。


というのも、相続手続きの際によくあるのが、
登記簿の内容と固定資産評価証明書に
記載された項目が異なるケース。


加えて、公図の精度も必ずしも
高いとは言えません。


ましてや明治時代に本籍地と
されていた土地です。


当時の住所表記や地番と、
現代の地図が一致している保証はありません。


いや、むしろ異なっている可能性の方が高い。
そこで、私はこんな仮説を立てました。


「戸籍に示された本籍地──
本当に、この場所で合っているのだろうか?」と。


法務局で発見!先祖が過ごした“本当の場所”

明治期の地番が記された戸籍を手に、
私は法務局へ向かいました。


古い土地の記録は、
そこに暮らした人々の暮らしの痕跡を、
かすかに伝えてくれます。


「旧土地台帳」や「古地図」などを頼りに、
土地を通じて先祖の“生活の手がかり”に
迫っていきました。


先祖は、どんな場所に住み、
何を仕事としていたのか──


法務局で、本籍地とされていた場所を中心に
「地図に準ずる図面」を取得したところ、
「区画整理」が行われていたことがわかりました。


要するに──
地番がずれていたのです。


区画整理の前と後で地図が異なることが判明し、
それぞれの地図を丁寧につないでいくことにしました。


縮尺も違っていたため、
2枚の地図を重ねても、
場所は完全には一致しません。


しかし、地番を確認していくと、
どうやら全く違う場所を
調べていたことに気づいたのです。


そこで、戸籍上の本籍地を、
区画整理前の図面で確認。


さらに、現在の公図と
照らし合わせて再検証。


こうして、該当する地番の
公図にある旧土地台帳を、
改めて取得しました。


そして──


見つけました。


ご先祖の「長男家筋」の方の名前が、
そこに載っていたのです。


危うく、まったく関係のない土地を
ご先祖のゆかりの地だと
勘違いするところでした。


古い時代のことを調べるときには、
あらゆる「常識」を検証する必要があると、
改めて感じました。


その時代の背景を丁寧に追うことも重要ですし、
「本当にそうなのか?」と常識を疑う視点を
持って仮説を立てることが、やはり大切なのです。


さて、先祖の職業について──


地名から「鋳物師かもしれない」と考えたものの、
そもそも場所を取り違えていたため、
この仮説は見事に外れてしまいました。


であれば、やはり海が近いことから、
漁師だった可能性が高いのでしょうか?


戸籍情報だけでなく、町史や市史などの
地域資料を読み解けば、当時の空気を
感じ取ることができそうです。


また、やはり「人から人へと伝わる話」──
口伝を聞くことも、これから試みたいと思いました。


そこで、今回集めた戸籍をもとに、
まずは家系図を作成して整理してみようと思い立ちました。


バラバラだった情報をつなぎ直すため、
家系図という形で視覚的にまとめてみようと考えたのです。
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