はじめに
家系図を作ると、ご先祖様の名前や、かつて暮らしていた土地が分かります。でも、私が面白いと感じるのは、その先です。
「その土地には、どんな景色が広がっていたのだろう。」
名字を調べ、古地図を開き、その土地を歩いてみる。すると、名前だけでは見えてこなかった土地の歴史や、ご先祖様が暮らしたかもしれない風景が、少しずつ浮かび上がってきます。
今回は、「前田」さんの名前が残る土地を訪ねてみましょう。
ルーツの旅クイズ
全国第29位の名字「前田」さん。
「前田」と聞くと、加賀百万石を築いた前田家を思い浮かべる方も多いかもしれません。
では、今回の旅で訪ねる「前田」という地名は、現在のどこに残っているでしょう?
A 岐阜県安八郡神戸町
B 福井県越前市
C 石川県金沢市
ヒント
これは、約140年前の地図です。
「前田」という名字をたどっていくと、かつての美濃国に「前田」という土地があったことが分かります。現在も、その名前が残っています。
まずは、今昔マップで「前田」という土地を探してみましょう。
正解は…
正解は、
A 岐阜県安八郡神戸町
です。
今回訪ねるのは、岐阜県安八郡神戸(ごうど)町前田。ここは、かつての美濃国安八郡前田村にあたる場所です。
現在も「前田」という地名が残っています。さらに、この土地を調べていくと、前田氏ゆかりの人物の名前も見えてきます。
一方、加賀百万石の前田家をたどると、舞台は美濃から尾張へ。前田利家と深い関わりを持つ荒子という土地に行き着きます。
今回は、
美濃国前田
から
尾張の前田氏ゆかりの地
そして
荒子と前田利家へ。
「前田」という名前を手がかりに、その足跡をたどってみます。
「前田」という名字と土地
「前田」という名字は、ある場所から見て前にある田、手前にある田という意味から生まれた名字とされています。
こうした名字は、全国のさまざまな場所で生まれる可能性があります。実際、「前田」という地名は全国各地に残っています。
つまり、
「前田」という名字だから、すべて同じ先祖につながるわけではありません。ここが、今回の旅の大切なポイントです。
名字だけを見ていると、一つの家系に見えてしまうかもしれません。でも、その名字がどこに住んでいた人から生まれたのかを考えてみると、全国各地に、それぞれの「前田」があったことが見えてきます。
では、その中でも特に有名な前田家は、どこから来たのでしょうか。
少し寄り道|加賀百万石の前田家
ここで、少し有名な「前田家」に寄り道してみます。
加賀百万石で知られる前田家です。前田利家をはじめとする加賀前田家は、江戸時代に加賀藩を治めた大名家として知られています。
その出自については、前田家の系図などにさまざまな伝承があります。その中には、美濃国の前田に住んで「前田」を名乗ったという伝承もあります。
ただし、前田利家の父・利昌より前の系譜には不明な部分があり、現在の美濃国前田の前田氏と、加賀前田家を確実につなぐことができるわけではありません。
そこで今回は、無理に一つの家系としてつなげるのではなく、「前田」という名前が、どんな土地に残っているのかを見ていきます。
すると、面白いことに、美濃にも尾張にも「前田」という名前が残っていることが分かります。
二つの「前田」を訪ねる
まずは、美濃国前田です。
現在の岐阜県安八郡神戸町前田。ここは、かつての美濃国安八郡前田村にあたります。古い記録にも「前田郷」とみられる地名が登場し、現在まで「前田」という名前が残っています。
そして、この土地を調べると、戦国時代から安土桃山時代に活躍した前田玄以の名前も見えてきます。
「前田」という地名が残る土地に、実際に前田氏ゆかりの人物の名前が登場する。
そう考えると、ただの地名だった「前田」が、少し違って見えてきます。ただし、ここでも、「前田玄以の系統」と「加賀前田家」を一つの家系として結びつける必要はありません。
大切なのは、美濃の「前田」という土地に、前田氏ゆかりの歴史が残っていることです。
尾張国の前田氏
一方、加賀前田家をたどると、舞台は美濃から尾張へ移ります。現在の愛知県名古屋市中川区周辺です。
この地域には、かつて前田と呼ばれた土地があり、現在も前田西町という地名が残っています。そして、そこにあるのが前田速念寺です。
さらにその先にあるのが、荒子。
荒子は、前田利家と深い関わりを持つ土地です。
地図の上で見ると、
美濃国前田
↓
尾張国の前田
↓
荒子
↓
前田利家
というように、「前田」という名前を手がかりに、土地と人物の足跡を追うことができます。
二つの「前田」は同じ一族なのか?
ここで、気になることがあります。「美濃国前田の前田氏」と「加賀前田家」は、同じ一族なのか?
加賀前田家には、美濃国前田に住んで「前田」を名乗ったという伝承があります。
しかし、前田利家の父・利昌より前の系譜には不明な部分があり、美濃国前田の前田氏と加賀前田家を直接つなぐ確かな系譜が確認されているわけではありません。
そのため、
「二つの前田は同じ一族だった」と簡単に決めることはできません。
私は、ここが名字を調べる面白いところだと思っています。名字をたどっていると、
「この名字だから、この家系だろう」と考えたくなります。
でも、実際には同じ名字が、別々の土地で生まれていることがあります。だからこそ、名字だけで答えを決めるのではなく、土地を確認する。
古い記録を調べる。
地図を開く。
そして、実際にその場所を歩いてみる。
そうすると、一つの名字から、複数の土地と歴史が見えてきます。
今昔地図で「前田」を見る
では、「前田」という土地は、昔と今でどのように変わったのでしょうか。
約140年前の地図を開いてみると、そこには現在の「前田」につながる地名が記されています。
古地図だけでは、「この場所は、今のどこなのだろう?」と思うかもしれません。そこで、今昔マップを使って、昔と現在を重ねてみます。
すると、昔の「前田」と現在の「前田」が、同じ土地の上に重なります。
道路や建物は変わっていても、地名や集落など、昔の土地の記憶が現在につながっていることがあります。今昔マップは、昔の地名を調べるだけの道具ではありません。
昔の人が見ていた土地を、現在の地図の上に重ねることができる。それが、ルーツの旅で地図を使う面白さです。
YAMA散歩①|美濃国「前田」
まずは、岐阜県神戸町。
現在も「前田」という地名が残っています。ここは、かつての美濃国安八郡前田村。
名字を調べて、古い記録を開いて、地図を探す。その先に、実際の「前田」という土地があります。
ここが、今回の旅のスタート地点です。
地図の中で見つけた「前田」という名前を、実際の風景の中で見てみる。それだけでも、名字が少し身近に感じられてきます。
YAMA散歩②|尾張国「前田」
次に向かうのは、名古屋市中川区。現在の住所にも、前田西町が残っています。そして、その土地にあるのが前田速念寺です。
美濃にも「前田」。
尾張にも「前田」。
同じ名字を手がかりに、別々の土地を訪ねてみると、「前田」という名字が、一つの土地だけから生まれたわけではないということが、地図の上だけでなく、実際の風景からも感じられます。
YAMA散歩③|前田速念寺(前田城址)
前田西町にある前田速念寺。
ここは、前田氏の居城だったと伝えられる**前田城址**にあたります。現在は寺院となっていますが、ここに立つと、
「前田」という土地と「前田氏」の歴史が重なって見えてきます。名字を調べるだけなら、「前田」という文字で終わってしまうかもしれません。でも、その名前が残る土地を歩いてみる。
すると、
「この場所で、誰かが暮らしていた」
という実感が生まれてきます。
YAMA散歩④|荒子城址
前田速念寺から、さらに荒子へ向かいます。ここには、冨士権現天満宮(荒子城址)があります。
荒子城は前田利昌が築いた城で、前田利家も居城したと名古屋市が紹介しています。
ここまで来ると、最初に見つけた「前田」という名前から、前田利家という歴史上の人物へと旅がつながってきます。
前田という土地
↓
前田氏
↓
前田利家
地図の上で追ってきた名前が、実際の風景の中でつながっていきます。
YAMA散歩⑤|荒子観音寺
最後に訪れるのは、荒子観音寺です。前田家ゆかりの寺として知られ、前田利家が本堂を再建したと伝えられています。
境内には、国の重要文化財に指定されている多宝塔も残っています。
ここまで歩いてくると、
美濃国の「前田」
↓
尾張の「前田」
↓
荒子
↓
前田利家
という旅のつながりが見えてきます。
最初は一つの名字だった「前田」。
それをたどっていくと、土地があり、城跡があり、寺があり、そして歴史上の人物が見えてきました。
ルーツの視点|「前田」という名字から二つの土地へ
今回、「前田」という名字を手がかりに、二つの土地を訪ねてみました。
一つは、美濃国前田。
もう一つは、尾張国の前田氏ゆかりの地。
そして、その先に荒子と前田利家の姿が見えてきました。名字をたどっていくと、
名前 → 地名 → 古地図 → 人物 → 歴史というつながりが見えてくることがあります。一方で、すべてを一つの家系として結びつけられるとは限りません。
今回の「前田」も、美濃国前田の前田氏と加賀前田家との関係には、はっきりしない部分があります。だからこそ、無理に一つの答えにまとめるのではなく、
「この名前は、どんな土地につながっているのだろう?」と、一つずつ確かめていく。
古地図を開き、古い記録を読み、今昔マップで昔と今を重ねる。そして、実際にその土地を歩いてみる。
すると、何百年も前の「前田」と、現在の「前田」が、同じ土地の上で重なって見えてきます。
名字は、家系をたどるだけでなく、土地を訪ねるための入り口にもなる。
それが、今回の「前田」の旅で感じたことです。
家系図は旅の始まり
家系図を作ると、
「ここまで分かれば調査は終わり」と思われるかもしれません。
でも、私はそこからが本当の旅の始まりだと思っています。
「ご先祖様は、どんな場所で暮らしていたのだろう。」
「今も、その土地には何か残っているのだろうか。」
そんな疑問を、戸籍や名字、古地図、郷土史から一つずつたどっていく。すると、自分だけの「ルーツの旅」が始まります。
戸籍の読み方が分からない。
家系図を作ってみたい。
ご先祖様が暮らした土地を調べてみたい。
そんな方は、お気軽にご相談ください。
まずは、
「何が分かっていて、何が分からないのか」
を整理するところから、一緒に始めていきましょう。
あなたの名字には、どんな景色がありますか?
今回の旅では、「前田」という名字を手がかりに、
美濃国前田
から
尾張の前田氏ゆかりの地
そして
荒子と前田利家
までを訪ねました。
名字を調べ、古い記録を開き、古地図を探し、今昔マップで現在の地図と重ねてみる。すると、名字だけでは見えてこなかった土地の姿が、少しずつ浮かび上がってきます。
あなたの名字にも、そんな「名前の残された土地」があるかもしれません。
普段何気なく見ている地名も、少し調べてみると、そこに暮らした人々の歴史が残っていることがあります。あなたの名字は、どんな土地につながっているのでしょう。
その景色を探す旅をご一緒できたら嬉しいです。