政治家のユーモアセンスと通訳の苦労

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今日は、少し肩の力を抜いて、少し前に読み終えた評論家  呉智英氏の著書「ロゴスの名はロゴス」に書かれていたエピソードを取り上げます。

終戦間もない頃の話です。

アメリカを訪問した政府高官が日米友好を訴えたスピーチで、こんなことを言ったそうです。

「日本は『瑞穂の国』といって、米の国である。貴国アメリカは、漢字で書けば米国である。これを縁として、両国は仲良くしていかなければならない」

ううむ、これはジョークのつもりなのでしょうか。

呉氏は、「このウィットに富んだスピーチで、確かに会場は沸くには沸いた。ただし、笑わせたのではなく笑われたのだ。日本の高官のセンスはこんなものだ、というので。私はこの話は作り話と思う。いくら何でも、これほど強要もセンスもない高官は、日本にはいないはずだ。万一こんな高官がいたとしても、通訳が気を利かして全然違う訳を口にしただろう」と述べていますが、これは氏一流の皮肉なのでいいとして、実は似たような話は結構あります。

有名なところでは、小池都知事が防衛相時代に訪米し、当時のライス国務長官との面談で、「私は『日本のライス』と呼ばれています。私のことを『マダム寿司』と呼んではどうでしょうか」と英語でスピーチをしています(このジョークはその後の講演でも繰り返したそうです)。

昔から日本の政治家や高級官僚のユーモアのセンスなんてこんなものだったということです。

大体、小池氏を「日本のライス(長官)」と呼ぶ人なんていなかったのですが、ジョーク(のつもり)だったのですから、まあいいでしょう。

ただし、小池氏自身は、「日本にいるときも外国の方との接点があり、そのなかで生まれ、使っていたジョーク」だとしています。

つまり、本人は面白いジョークだと信じている。

自分はユーモアのセンスがあると思っている人の通例で、本人だけ受けていると信じて悦に入るという図式。

なぜか、駄洒落やくだらない言葉遊び(すべての言葉遊びが面白くないわけではありません)をユーモアだと思っている政治家が多いんですね。

蛇足ですが、なんでも小池氏は回転寿司と呼ばれているそうです。

日本新党→新進党→自由党→保守党→自民党と回転寿司のように渡り歩いたから。

ところで、呉氏の「・・・通訳が気を利かして全然違う訳を口にしただろう」についてですが、こういうジョーク(?)は通訳泣かせなんです。

「『瑞穂の国』といって、米の国である。貴国アメリカは、漢字で書けば米国・・・」をそのまま訳して、聴衆にわかってもらえるはずがない。

だからといって、長い説明を加えることもできないし、同時通訳では説明自体不可能ですからね。

そういえば、フランスでもトップといわれる通訳(大統領にも付いていました)からこんな話を聞いたことがあります。

ある会議で同時通訳をしていたときに、話者がジョークをいったのですが、それがわかりにくかったので、とっさに「今、スピーカーがジョークをいいましたので、皆さん笑ってください」といったそうです。

もちろん、聴衆は大笑いし、スピーカーも大満足。

そんなものなんですね。

最初に書いたようなジョークを口にする政治家や官僚は英語があまりできないのでしょう(小池氏はかなり語学ができるようですが)。

そして、言葉というものをあまり真面目に考えていない。

通訳が聞き返すと、いった通り訳せばいいんだなんていいますから、それがよくわかります。

ユーモアやジョークはもっとも訳しにくいものの一つとされています。

そもそも訳しようがないとか、また、上に書いたように感覚が違うのでそのまま訳してもどこが面白いのかわからないことが多いのです。

皆さんも通訳を利用する機会があったら、雰囲気を和らげようとして、安易に仲間内でいうような冗談を口にしないでくださいね。

通訳が困りますから。

では
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