親の介護、何から話せばいい?
― 親も子も安心する、介護準備の小さな一歩 ―
「少し分かってきたけれど、私の場合は何から始めればよいのだろう」
親との話しづらさ。
兄弟姉妹との関係。
仕事や費用への不安。
そして、親と距離を置きたいという気持ち。
この連載では、介護を考えるときに言葉にしにくい、さまざまな迷いを取り上げてきました。
最終回は、これまでの内容を振り返りながら、今のご自身に合う「最初の一歩」を考えていきます。
家族への気持ちが決まっていなくても、準備は始められます
「親には元気でいてほしい。でも、連絡すると疲れてしまう」
「兄弟と協力できればと思うけれど、昔のことを思い出すと言い出せない」
「関わることを期待されても、自分にはその余裕がない」
家族だからこそ、頼みたい気持ちや分かってほしい思いがある一方で、過去の出来事が重く感じられることもあるでしょう。
もともと親子関係や兄弟関係が良くなかった方にとっては、介護の話を始めること自体が大きな負担になる場合もあります。
介護準備を始めるために、親を許したり、兄弟と仲直りしたりする必要はありません。
今分かっていること、まだ分からないこと、ご自身が困っていること。
そこから整理を始められます。
家族への気持ちが揺れていても、「今後どうすればよいか、一人では決めにくい」と相談してよいのです。
まず、自分が守りたい暮らしを確かめる
親のことを考えていると、自分の予定や希望を後回しにしてしまうことがあります。
続けたい仕事。
眠る時間や休息。
自分の家族との生活。
これからのために残しておきたいお金。
そうした事情も、介護準備を考えるうえで大切です。
紙やスマートフォンに、次の三つを書いてみてください。
1.今、いちばん気になっていること
2.自分の暮らしで守りたいこと
3.そのために、次に確かめたいこと
たとえば、
「平日の通院が増えたら、自分が毎回仕事を休むことになりそう」
「今の仕事を続けたい」
「家族以外の支援について、どこに相談できるか知りたい」
という書き方です。
一つしか書けなくても構いません。
「何が心配なのか」が一つ言葉になると、次に相談したいことも考えやすくなります。
今の自分に合う一歩を、一つ選ぶ
最初から、親のお金も、施設も、兄弟との分担も、すべて決めようとすると、手が止まってしまうかもしれません。
今の状況に近いものから、一つ選んでみてください。
親とのやり取りが負担なら
電話や訪問のどの場面がつらいのか、一つメモする。
直接連絡する前に、相談で伝えたいことを整理する。
介護費用が気になるなら
すでに分かっている支出を一つ書く。
親の収入など、分からないことは「未確認」として残す。
兄弟姉妹との分担に迷うなら
自分が今対応していることと、続けるのが難しいことを一つずつ書く。
話せそうな場合には、次に相談したい用件を一つ選ぶ。
相談先が分からないなら
親が住む地域を担当する地域包括支援センターを調べ、連絡先を保存する。地域包括支援センターは、介護について相談できる窓口です。
「休みの日に、相談窓口の連絡先を調べる」
「次の相談で、今の負担を一つ伝える」
そのくらい具体的な行動からで十分です。
どれを選べばよいか分からないときには、「最初の一歩を一緒に考えてほしい」と相談することもできます。
関わり方は、状況に合わせて相談し直せます
今はできると感じることも、仕事や体調、家計の状況が変われば、続けるのが難しくなるかもしれません。
親の状態や、必要な支援が変わることもあります。
だからこそ、「今の対応を続けられそうか」と、ときどき確かめることも準備の一部です。
無理が増えてきたときには、話せる家族や支援者に、「今の対応を続けることが難しくなってきました。別の方法を相談したいです」
と伝えることも考えられます。
家族と話すことが難しい場合は、その事情も含めて、外部の相談窓口に伝えられます。
ご自身の暮らしへの影響も、支援を考えるために必要な情報です。
最初の一歩を、一緒に選びたい方へ
「気になることが多く、何から確認すればよいか分かりません」
「家族との関係が難しく、一般的なアドバイスが自分には合わないと感じます」
「仕事や生活を守りながら、どこまで関われるか考えたいです」
そのような状態からでも、ご相談いただけます。
60分の個別相談では、親の状況、ご家族との関係、ご自身の暮らしを伺いながら、今の不安、最初に確認したいこと、家族への伝え方、必要な相談先を一緒に整理します。
親との話し合いや、兄弟の同意を済ませてから申し込む必要はありません。
まだ介護が始まっていない方も、何を相談するか決まっていない方も、お話しできるところから始められます。
ご相談は60分・3,000円(税込み)です。
全20回を通して、お伝えしたかったこと
この連載で大切にしてきたのは、これまでの家族関係を尊重しながら、親の状況と、ご自身の暮らしを一緒に考えることです。
すぐに家族と話せる方もいれば、まず自分の気持ちを言葉にする時間が必要な方もいます。
「今は、ここまでなら考えられる」
その範囲から、必要な人の手も借りながら、準備を選んでいきましょう。
親の暮らしを考えるとき、ご自身の仕事や生活も、大切にしてよいのです。
連載「親の介護、何から話せばいい?」は、今回で一区切りです。
全20回にわたり、お読みいただき、ありがとうございました。