親の介護、何から話せばいい?
― 親も子も安心する、介護準備の小さな一歩 ―
スマートフォンに、親からの着信が表示される。
「また、何か言われるのだろうか」
そう思うと、すぐには電話に出る気になれない。
親が年を重ね、介護のことも気になっている。
けれど、今までより深く関わることを考えると、気が重くなる。
「親と距離を置きたいなんて、相談したら冷たい人だと思われるのでは...」
そのためらいを抱えている方へ。
「距離を置きたい」という気持ちも、介護準備の相談でお話しいただいてよいことです。
親が年を重ねても、これまでの関係はなくなりません
子どものころから、気持ちを聞いてもらえなかった。
何をしても否定され、兄弟姉妹と比べられてきた。
大人になってからも、自分の都合より親の希望を優先することを求められてきた。
そうした経験がある方にとって、親との距離は、自分の暮らしを保つために大切にしてきたものかもしれません。
周囲から「もう高齢なのだから」「親子なのだから」と言われても、これまでの出来事や気持ちが、すぐに変わるとは限らないでしょう。
親を心配する気持ちと、近づきたくない気持ちが、同時にある方もいます。
今は、関わりたくない気持ちのほうが強い方もいると思います。
相談するために、親への気持ちをきれいに整理したり、無理に前向きな言葉に変えたりする必要はありません。
今の関係と、今のご自身の事情から、考えていくことができます。
「距離を置きたい」の中身は、人によって違います
毎日の電話を減らしたい。
一人で実家を訪れることは避けたい。
頼まれるたびに仕事を休む状況を変えたい。
今は、直接連絡すること自体が難しい。
同じ「距離を置きたい」でも、困っている場面や望んでいることは異なります。
言葉にできそうなら、次の三つを短くメモしてみてください。
1.負担を感じる場面
長い電話、突然の呼び出し、責められるやり取りなど。
2.守りたい暮らし
仕事、睡眠、休息、自分の家族と過ごす時間など。
3.今、一人では決めにくいこと
どこまで関わるか、連絡をどうするか、誰に相談するかなど。
すべて埋める必要はありません。
「何がつらいのか、まだうまく説明できない」でも構いません。
また、「自分ができること」を急いで探さなくても大丈夫です。
今は引き受ける余裕がない、まだ判断できないという状況も、相談の大切な材料になります。
親に直接話す前に、相談できることがあります
「介護準備をするなら、まず親に連絡しなければ」
「兄弟を説得してからでないと、相談できないのでは」
そう考えて、立ち止まってしまうこともあるでしょう。
親が住む地域を担当する地域包括支援センターは、介護に関する総合相談窓口です。親の状況とあわせて、家族として関わるうえで難しい事情を伝えることもできます。
たとえば、
「親との関係に長年難しさがあり、私が頻繁に訪問したり、直接やり取りしたりすることは難しいです。介護が必要になった場合に備えて、今から確認できることを教えてください」
という伝え方です。
まだ詳しい状況を把握できていない場合は、「分かっているのはここまでです」と伝え、何を確認するとよいか相談できます。
すでに支援を受けている場合には、担当者に、ご自身が続けることの難しい対応を伝えることも考えられます。
親に必要な支援を考えるときには、**家族が実際に担える範囲や、担うことが難しい事情も含めて相談することが大切です。**
過去のことを、最初からすべて話さなくても大丈夫です
相談をためらう理由の一つに、「これまでの経緯を全部説明するのがつらい」という気持ちがあるかもしれません。
この個別相談では、たとえば、「詳しいことは、まだ話したくありません。ただ、親と二人で会うことが負担です」という伝え方からでも始められます。
親への気持ちが揺れていても、話す順番が前後しても構いません。
話せる範囲で、今困っていることをお聞かせください。
ご自身が希望し、やり取りできそうな場合には、連絡の方法や頻度、伝える言葉を一緒に考えられます。
直接のやり取りが難しい場合には、その事情を踏まえて、先に確認したい情報や相談先を整理していきます。
相談したその日に、親へ連絡するかどうかを決める必要もありません。
今の距離感から、介護準備を一緒に考えます
「親のことを考えると、昔のつらい気持ちが出てきます」
「介護が始まったら、また自分が我慢することになりそうです」
「どこまで関わりたいのか、自分でも分かりません」
そのような迷いを抱えたままでも、ご相談いただけます。
60分の個別相談では、ご家族との関係やご自身の暮らしを伺いながら、今困っていること、負担になっている関わり、確認したいこと、必要な相談先を一緒に整理します。
親との関係を良くすることを、相談の条件にはしていません。
今の状況を踏まえて、取り組めそうな準備を考える時間です。
ご相談は60分・3,000円(税込み)です。
次回はいよいよ最終回です。
「自分の暮らしを守りながら、介護準備の最初の一歩を選ぶ」をテーマに、これまでの連載を振り返りながら、ご自身の状況に合った一歩を考えていきます。