親の介護、何から話せばいい?
― 親も子も安心する、介護準備の小さな一歩 ―
「兄弟なんだから、協力すればいいでしょう」
そう言われるたびに、「それができたら、こんなに悩んでいない」と感じることはありませんか。
話すと、いつも自分の意見を否定される。
頼みごとをすると、昔のことを持ち出される。
親のことを相談したはずが、言い争いになってしまう。
親の介護が気になっていても、兄弟とのやり取りを思うと、準備に手がつかない。
今回は、以前から兄弟姉妹との関係が難しかった方に向けて、今の関係とご自身の暮らしを踏まえた介護準備を考えます。
同じ家で育っても、家族への思いは違う
親から、いつも兄弟と比べられていた。
自分の話だけ、真剣に聞いてもらえなかった。
困ったときに助けを求めても、取り合ってもらえなかった。
そうした経験が重なって、距離を置いてきた方もいるでしょう。
同じ親のもとで育っていても、それぞれが受けてきた言葉や、家族の中で感じてきたことは同じとは限りません。
介護の話を始めたことで、以前のつらい気持ちまで思い出すこともあると思います。
「協力しよう」と言われても簡単には応じられない。その背景にある事情も、介護準備を考えるうえで大切なことです。
親への思いも、兄弟との距離も、今の気持ちを無理に変えてから相談する必要はありません。
まずは、今分かっていることと、自分の事情を整理する
兄弟との話し合いが難しいと、「何も進められない」と感じるかもしれません。
そんなときは、まず手元のメモに、次の三つを書いてみてください。
1.親について分かっていること
暮らしている場所、通院先、日常生活で困っていそうなこと。分からない部分は「未確認」のままで構いません。
2.自分が関われそうな範囲
仕事を休める頻度、移動にかかる時間、ご自身の体調。親や兄弟との連絡で、どのくらい負担を感じるかも含めます。
3.一人では判断しにくいこと
どのような支援があるのか、誰に相談すればよいのか、家族に何を確認する必要があるのか。
書いた内容を、そのまま兄弟に見せる必要はありません。
「何が分からなくて困っているのか」
「今の自分には何が難しいのか」
が少し見えるだけでも、相談の出発点になります。
やり取りできそうなら、確認する用件を一つに絞る
ご自身に余裕があり、兄弟ともやり取りできそうな場合には、今回確認したいことを一つに絞る方法があります。
たとえば、親の通院先が変わったと聞いたものの、新しい病院名が分からないなら、「母の通院先が変わったと聞きました。今の病院名が分かれば、教えてもらえますか」と、必要な情報を具体的に尋ねます。
そのやり取りの中で、今後の役割分担まで一度に決めようとしなくても構いません。
ただ、用件を絞っても、責める言葉が返ってきたり、話が別の方向に進んだりすることはあります。
その場合は、言葉をうまく選べなかった自分だけのせいにしないでください。
連絡すること自体がつらいときや、強い言葉を向けられる不安があるときは、先に第三者へ相談し、情報の確かめ方から考えることもできます。
協力が難しい事情を、家族以外の相談先にも伝える
「兄弟に頼めないなら、自分が全部やるしかない」
そんなふうに考えて、できる範囲を超えて引き受けそうになる方もいるかもしれません。
介護の支えを考えるときは、家族以外の相談先も含めて探していけます。
地域包括支援センターは、高齢者やご家族が介護について相談できる公的な窓口です。
親が住む地域を担当するセンターに、たとえば、兄弟関係が難しく、協力を頼みにくい状況です。私も仕事があり、頻繁には行けません。どのような支援を相談できますか」
と、親の状況と自分の事情を一緒に伝える方法があります。
窓口の連絡先は、親が住む市区町村のホームページなどで確認できます。
支援を考えるためにも、「家族ができること」だけでなく、「家族だけでは難しいこと」を伝えてよいのです。
「兄弟と話せない」という悩みから、ご相談ください
「家族の事情を、どこから説明すればいいか分からない」
「兄弟と話す前に、自分の考えを整理したい」
「関わりたい気持ちと、距離を置きたい気持ちの両方がある」
そのような状態からでも、介護準備の相談を始められます。
60分の個別相談では、親の状況や家族との関係、仕事・暮らしへの影響を伺いながら、今分かっていること、関われそうな範囲、確認したいこと、家族への伝え方や相談先を一緒に整理します。
家族関係のすべてを説明しきれなくても大丈夫です。