第45話 遠距離介護になる可能性がある人の準備法

第45話 遠距離介護になる可能性がある人の準備法

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親は地方に住んでいる。

自分は東京や大阪など、離れた地域で働いている。

今は親も元気だから、年に数回帰省する程度で特に困っていない。

でも、もし介護が始まったらどうなるのか。

「毎週帰らなければならないのだろうか」

「仕事を続けながら対応できるのか」

「急に倒れたら、すぐには駆けつけられない」

「交通費だけでもかなりかかりそう」

そんな不安を感じている方も多いのではないでしょうか?

遠距離介護の難しさは、介護そのものだけではありません。

距離。

時間。

交通費。

仕事。

緊急対応。

そして、「すぐ行ってあげられない」という罪悪感。

これらが重なります。

だからこそ、遠距離介護では、「自分が何度も実家へ通うことを前提にしない」ことが大切です。

目指したいのは、「自分が離れていても、親の生活がある程度回る仕組みをつくること」です。

遠距離介護で最初に考えるのは「何時間で行けるか?」

まず確認しておきたいのは、実家までの距離です。

地図上の距離ではありません。

実際に、自宅を出てから親の家に着くまで何時間かかるのか?
を把握します。

電車。

新幹線。

飛行機。

バス。

タクシー。

乗り換え時間も含めて考えます。

たとえば、

片道2時間なら日帰りできるかもしれません。

片道4時間なら、宿泊が必要になる可能性があります。

飛行機を使う距離なら、当日に必ず移動できるとは限りません。

つまり、距離によって、介護のやり方そのものを変える必要があります。

「何かあれば自分が行けばいい」ではなく、「自分が行けない時間を誰が支えるか?」を考えることが重要です。

「すぐ駆けつける人」を自分だけにしない

遠距離介護で一番困るのが、突然の出来事です。

親が転倒した。

救急搬送された。

自宅で具合が悪くなった。

デイサービスから連絡があった。

近所で姿を見かけないと言われた。

こうした時、遠方にいる子どもがその場ですぐ対応することはできません。

だからこそ、

親の近くで動ける人や機関を確認しておきます。

親戚。

近所の信頼できる人。

地域包括支援センター。

ケアマネジャー。

民生委員。

訪問介護や訪問看護。

高齢者向けの見守りサービス。

などです。

遠距離介護で重要なのは、「自分が何時間で行けるか?」以上に、「自分が着くまで誰が動けるか?」です。

地域包括支援センターは介護前から調べておく

第44話でもお伝えしましたが、遠距離介護になる可能性がある人ほど、親の地域の地域包括支援センターを調べておくことをおすすめします。

まだ要介護認定を受けていなくても構いません。

親の住所を担当するセンターはどこなのか?

電話番号は何番か?

相談できる時間帯はいつか?

これだけでもスマートフォンに保存しておきます。

親に変化があった時、「まずどこに電話すればいいのか?」が分かっているだけで、初動は大きく変わります。

遠距離では、現地の情報を自分だけで集めるのは大変です。

だからこそ、地域の相談窓口とつながること自体が介護準備になります。

かかりつけ医と薬を把握しておく

遠方に住んでいると、親の通院状況を意外と知らないことがあります。

「病院には行っているみたい」という程度で、

病院名。

主治医。

持病。

服薬。

次回受診日。

を知らないケースもあります。

親が元気な間は、それでも困らないかもしれません。

でも突然入院すると、

「何の病気がありますか?」

「どんな薬を飲んでいますか?」

と家族が確認を求められることがあります。

そこで最低限、

かかりつけ医。

持病。

薬。

お薬手帳の場所。

を確認しておきます。

全部覚える必要はありません。

写真を撮って保管する方法でも構いません。

遠距離介護では、現場に行かなくても必要な情報を説明できる状態をつくっておくことが大切です。

実家へ帰る回数より「帰る目的」を決める

介護が始まると、「もっと帰らなければ」と思いやすくなります。

でも、目的もなく頻繁に帰省すると、時間も交通費も消耗します。

そこで、帰省する時に何をするのかを決めます。

たとえば、

通院同行。

ケアマネジャーとの面談。

家の安全確認。

郵便物や重要書類の整理。

親との今後の話。

施設見学。

こうしたことをまとめて行います。

一回の帰省で複数の用事を済ませる。

これだけでも負担は変わります。

「頻繁に帰る人」になるより、「必要な時に効果的に帰る人」になるという考え方が大切です。

オンラインでできることは意外と多い

遠距離介護では、すべてを現地で行う必要はありません。

たとえば、

家族会議。

施設探し。

介護サービスの情報収集。

兄弟姉妹との調整。

ケアマネジャーとの連絡。

保険や制度の確認。

などは、電話やオンラインでも対応できます。

場合によっては、ケアマネジャーとの面談にオンラインで参加できることもあります。

遠距離介護では、「現地でなければできないこと」と「離れていてもできること」を分けると、負担を減らしやすくなります。

見守りは「毎日の電話」だけにしない

親が一人暮らしの場合、「毎日電話する」
という方法があります。

もちろん有効です。

ただし、電話だけに頼ると、

出なかった。

聞こえづらい。

親が電話を嫌がる。

毎日同じ時間にはできない。

という問題もあります。

そこで、

配食サービス。

見守りセンサー。

緊急通報サービス。

スマートフォン。

地域の見守り。

訪問サービス。

など、複数の方法を組み合わせます。

たとえば、

週数回は配食サービス。

定期的にデイサービス。

毎晩家族が電話。

何かあれば緊急通報。

という形です。

重要なのは、一つの方法に頼らず、いくつかの目で親を見ることです。

交通費を「介護費」として考える

遠距離介護では、見落とされやすい出費があります。

それが交通費です。

新幹線。

飛行機。

高速バス。

タクシー。

さらに宿泊が必要になる場合もあります。

一回ではそれほど大きく感じなくても、月に何度も続けば家計への負担になります。

そこで、

片道いくらか?

往復いくらか?

宿泊したらいくらか?

月2回帰省したらいくらか?

を一度計算してみます。

介護費用というと、施設費や介護サービス費だけを考えがちです。

でも遠距離介護では、子どもの移動費も大きな介護関連支出になります。

家族で分担できる場合は、交通費も含めて話し合っておくとよいでしょう。

仕事との両立は「介護が始まる前」に確認する

遠距離介護では、仕事への影響が大きくなりやすいものです。

通院のために休む。

緊急時に早退する。

帰省のために有休を使う。

朝一番の新幹線で移動する。

場合によっては宿泊する。

これが続くと、ワーキングケアラーの負担はかなり大きくなります。

だからこそ、介護が本格化する前に、

勤務先の介護休業。

介護休暇。

時差勤務。

短時間勤務。

テレワーク。

フレックスタイム。

相談窓口。

などを確認しておきます。

制度があっても、「介護が始まってから初めて調べた」では、使い方が分からず慌てます。

遠距離介護こそ、仕事を辞めずに済む準備を先にしておくことが重要です。

「実家の近くへ引っ越す」は最後の方で考える

親の介護が心配になると、「自分が実家の近くに引っ越した方がいいのでは?」と思うことがあります。

場合によっては必要な選択肢でしょう。

しかし、それを最初から選ぶ必要はありません。

引っ越せば、

仕事。

配偶者の仕事。

子どもの学校。

住宅。

人間関係。

自分の老後。

にも影響します。

まずは、

介護サービス。

見守り。

地域の支援。

親戚。

施設。

住み替え。

などを検討し、それでも難しい場合に考えます。

介護では、

親の生活を守るために、子どもの生活をすべて変えることが必ずしも正解ではありません。

親を自分の近くへ呼ぶ場合にも準備が必要

逆に、「親をこちらへ呼び寄せよう」という方法もあります。

これも簡単ではありません。

親にとっては、

友人。

かかりつけ医。

近所付き合い。

行き慣れた店。

地域とのつながり。

を失う可能性があります。

さらに、住民票や医療、介護サービス、住居の変更も必要になります。

だから、「近くにいれば安心」だけでは決められません。

親本人が、

どこで暮らしたいのか?

どんな生活を大切にしたいのか?

を聞いておく必要があります。

遠距離介護の解決策は、

子どもが戻る。

親を呼ぶ。

だけではありません。

親の家に泊まれる状態かも確認しておく

意外に見落とされるのが、実家の環境です。

介護が始まると、急に実家へ泊まることがあります。

しかし、

子ども部屋が物置になっている。

布団がない。

暖房が使えない。

家が片づいていない。

ということもあります。

緊急時に数日滞在する可能性があるなら、

どこで寝るか?

必要な日用品はあるか?

Wi-Fiなど仕事環境はあるか?

を確認しておくと安心です。

テレワークが可能な仕事であれば、実家で一時的に仕事ができる環境を整えておくことも、介護と仕事の両立に役立つ場合があります。

親の近所の人とも「顔が分かる関係」を

遠距離に住む子どもにとって、親の近所の人は大切な存在になることがあります。

もちろん、介護をお願いする必要はありません。

ただ、

「遠方に住んでいる娘です」

「何か気になることがあれば連絡をください」

と挨拶しておくだけでも違います。

親がしばらく外へ出ていない。

新聞がたまっている。

様子がおかしい。

という変化を、近所の人が気づくこともあります。

親が長く暮らしてきた地域には、家族には見えない小さな支援ネットワークがあることがあります。

それを大切にすることも、遠距離介護の準備です。

「駆けつけられない罪悪感」を背負わない

遠距離介護で多くの人が感じるのが、「自分は何もしてあげられていない」という罪悪感です。

近くにいればもっとできるのに。

毎日会えない。

病院にも毎回付き添えない。

そう思うことがあります。

でも、介護は、親のそばにいる時間の長さだけで決まるものではありません

必要なサービスを調べる。

ケアマネジャーと連絡を取る。

費用を管理する。

親へ電話する。

施設を探す。

緊急時の体制を整える。

離れていてもできることはあります。

自分が毎回駆けつける介護ではなく、自分がいなくても支援が回る介護
をつくる方が、長く続けられる場合もあります。

親が元気なうちに「もしもの時」を一度話しておく

遠距離だからこそ、親と確認しておきたいことがあります。

「もし救急搬送されたら、誰に連絡してほしい?」

「急に入院したら、必要な物はどこにある?」

「自分で生活するのが難しくなったら、どうしたい?」

「この家で暮らし続けたい?」

「こちらの近くに住む選択肢はどう思う?」

すぐ答えを決める必要はありません。

でも、一度話しておけば、

「親はこう考えていた」

という手がかりになります。

離れて暮らしているからこそ、元気な時の親の意思を聞いておく価値が大きい
のです。

遠距離介護の準備で確認したい7つのこと

遠距離介護になる可能性がある方は、まず次の7つを確認してみてください。

1.実家まで実際に何時間かかるか?

2.自分が到着するまで現地で動ける人や機関はあるか?

3.地域包括支援センターはどこか?

4.かかりつけ医、持病、薬を把握しているか?

5.毎月どの程度の帰省費用がかかるか?

6.勤務先で使える介護支援制度は何か?

7.親本人は将来どこで暮らしたいと思っているか?

すべてを今すぐ決める必要はありません。

一つずつ確認しておくだけでも、突然介護が始まった時の混乱を減らせます。

今やっておきたいことは3つ

一つ目は、親の地域で「現地で動ける人」を確認することです。

親戚。

近所。

地域包括支援センター。

医療・介護職。

自分以外の支援者を一つでも増やします。

二つ目は、遠距離介護にかかる時間とお金を見える化することです。

移動時間。

交通費。

宿泊費。

仕事を休む日数。

を一度具体的に考えます。

三つ目は、勤務先の制度を確認することです。
介護が始まってから仕事を辞めることを考えるのではなく、仕事を続けるために使える制度を先に知っておきます。

遠距離介護のゴールは「毎回駆けつけること」ではない

遠距離介護になる可能性がある人の準備で、一番大切なこと。

それは、自分がどれだけ頻繁に実家へ帰れるかを競わないことだと思います。

遠くに住んでいれば、できないことがあります。

それは当然です。

だからこそ、

現地の支援者につながる。

介護サービスを使う。

情報を共有する。

見守りの仕組みをつくる。

仕事の制度を確認する。

必要な時だけ帰省する。

という形に変えていきます。

親を支えるために、子どもが仕事や家庭、自分の人生をすべて犠牲にしてしまえば、その介護は長く続きません。

遠距離介護で目指したいのは、「離れていても親を支えられる仕組み」です。

距離をゼロにすることはできなくても、

情報の距離。

支援の距離。

相談先までの距離。

は縮めることができます。

親が元気な今だからこそ、「何かあったら帰ればいい」から、「何かあっても、まず現地で支えられる」という準備へ変えておく。

それが、遠距離介護から親の生活と子どもの人生の両方を守る、大切な人生防衛になるのです。

第46話では、「親にペットがいる場合の終活で見落としやすい点」というテーマで、親の急な入院や施設入所、認知症、そして亡くなった後に、残されたペットを誰がどのように守るのかについて整理していきます。


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