「親が元気なうちに、終活の話をしておいた方がいい。」
頭では分かっている。
でも、いざ親を目の前にすると、
「まだ元気なのに、こんな話をしていいのだろうか?」
「縁起でもないと言われそう。」
「財産を狙っていると思われないだろうか?」
「機嫌を悪くされたら嫌だな。」
そんな気持ちになり、なかなか切り出せない。
これは、とても自然なことだと思います。
親の介護準備や終活について情報を集めれば集めるほど、
預貯金。
保険。
介護。
認知症。
住まい。
遺言。
お墓。
葬儀。
など、確認しておきたいことが増えていきます。
しかし、子ども側が「確認しなければ」と焦るほど、親には、「もう自分の死後の準備を始めろと言われている。」ように聞こえてしまうことがあります。
だから大切なのは、「何を聞くかより、どう話し始めるか?」なのです。
最初の一言で「終活しよう」と言わない
親との会話で、いきなり、
「そろそろ終活しない?」
「エンディングノートを書いた方がいいよ。」
「財産のことを教えて!」
と切り出すと、親が身構えてしまうことがあります。
子どもに悪気はありません。
むしろ、
「何かあった時に困らないようにしたい。」
「親の希望を大切にしたい。」
という気持ちから出た言葉です。
しかし、親側からすると、
「そんなに先が短いと思われているのか?」
「自分はもう何もできない高齢者なのか?」
「財産のことを知りたいだけなのではないか?」
と感じることがあります。
そこで、私は最初の一言として、こんな言い方をおすすめします。
「もし急に入院したり、何かあった時に私たちが慌てないように、大事なものの場所だけ一緒に確認しておかない?」
これなら、「死後の準備」ではありません。
急な入院や災害など、「誰にでも起こり得る“もしも”への備え」として話を始められます。
「あなたのため」より「私が困らないため」の方が伝わりやすい
もう一つ使いやすい言い方があります。
それは、「もし何かあった時に、私が何も分からないと困るから、少しだけ教えておいてほしい。」という伝え方です。
親に、
「あなたのために終活した方がいい。」
と言うと、どうしても親が「やらされる側」になります。
でも、「私が困ってしまうから助けてほしい。」と言われると、親の受け止め方が変わることがあります。
親は長い間、子どもを支えてきた人でもあります。
その親に、「子どもである私を助けるために教えて。」とお願いする。
この方が、親の自尊心を傷つけにくいのではないでしょうか?
終活の入口は「防災」でもいい
終活という言葉が重いのであれば、無理に使う必要はありません。
たとえば、
「地震が起きた時、通帳や保険証券ってどこにあるの?」
「急に入院した時、お薬手帳はどこにある?」
「保険証券とか大事な書類って、一か所にまとめてある?」
こんな会話からでも十分です。
防災を考える時には、
保険証。
医療情報。
緊急連絡先。
重要書類。
現金。
通帳。
印鑑。
などを確認することがあります。
実はこれらは、介護準備や終活で確認したい情報とかなり重なります。
つまり、「終活をしよう」と言わなくても、終活は始められるのです。
「最近どう?」という普通の会話から始めてもいい
さらに自然なのは、親の日常生活の話から入る方法です。
「最近、病院はどう?」
「薬、増えてない?」
「買い物は大変じゃない?」
「階段つらくない?」
「車に乗らなくなったら買い物どうする?」
こうした会話は、一見すると終活とは関係ないように見えます。
しかし、そこから、
医療。
介護。
住まい。
運転。
お金。
将来の希望。
へ自然に話を広げることができます。
たとえば親が、「最近、病院へ行くのがちょっと大変なんだよ。」と言ったら、「もし入院するようなことがあったら、私が病院に伝えられるように、飲んでいる薬くらい教えておいて。」と続けられます。
最初からゴールを「終活の話」にする必要はありません。
「親の困りごとを聞くこと自体が、終活の入口」なのです。
一度の話し合いですべて聞こうとしない
親との終活トークが失敗しやすい理由の一つに、「せっかく話すなら全部確認しておこう。」という子ども側の焦りがあります。
銀行は?
保険は?
遺言は?
介護は?
施設は?
葬儀は?
お墓は?
延命治療は?
これを一度に聞かれたら、誰でも疲れてしまいます。
しかも親からすると、「今日は一体何の話なんだ。」となってしまいます。
終活は、一回の家族会議で完成させるものではありません。
今日は病院の話。
次は保険。
また別の日に住まい。
その後にお金。
というように、少しずつ話せばいいのです。
私は、「一回の会話で一つ分かれば十分」くらいでよいと思います。
最初に「貯金はいくら?」と聞かない
特に注意したいのがお金の話です。
子どもとしては、介護費用に備えるためにも、「親にどのくらいお金があるのか?」を把握したいところです。
しかし、最初から、
「貯金はいくらあるの?」
「財産はいくら?」
と聞くと、親が警戒する可能性があります。
第32話でもお伝えしたように、最初に知るべきなのは、「金額より所在」です。
「銀行はどこを使っている?」
「保険はどこの会社?」
「重要書類はどこに置いてある?」
この程度から始めればいいのです。
残高まで知らなくても、「どこに何があるか?」分かっているだけで、緊急時の家族の負担はかなり違います。
「友人の親の話」をきっかけにする方法もある
自分たちの話として切り出しにくい場合は、第三者の話をきっかけにする方法もあります。
「知り合いのお父さんが急に入院して、保険証券が見つからなくて大変だったんだって。」
「友達のお母さんが倒れて、どこの銀行を使っているか分からなくて困ったらしいよ。」
「最近、親が元気なうちに大事なものの場所だけ家族で確認しておく人が増えているみたいだね。」
そのうえで、「うちも、大事なものの場所だけ確認しておかない?」と続けます。
人は、「あなたもやった方がいい。」と言われると抵抗を感じることがあります。
でも、他の家庭の例を聞くと、「確かに、うちも考えておいた方がいいかも。」と受け止めやすくなることがあります。
子どもから先に自分の情報を見せる
親だけに情報を出してもらおうとすると、「なぜ自分だけ?」という気持ちになることがあります。
そこで、子ども側から先に話してみる方法もあります。
「私も最近、保険や銀行を整理したんだ。」
「スマホが開けなくなった時のことを考えて、家族に分かるようにしたよ。」
「災害用の書類をまとめたから、お父さんたちも一緒にやってみない?」
こうすると、親だけの「高齢者対策」ではなく、「家族みんなで行う備え」
になります。
これはとても大切な視点です。
終活を、「高齢になった親だけがやるもの」にしない。
子ども世代も、自分の情報を整理する。
その姿を見せることで、親も参加しやすくなります。
「まだ早い」と言われたら、そこで終わりにしなくていい
親から、
「まだそんな年じゃない。」
「縁起でもない。」
と言われることもあります。
そこで、
「でも大事だから。」
「もう年なんだから。」
と説得しようとすると、会話がこじれやすくなります。
そんな時は、「そうだね。今すぐ全部やろうって話じゃないよ。」と一度受け止めます。
そして、「ただ、急に入院した時に保険証とか薬が分からないと私が困るから、その場所だけ今度教えて。」くらいで終えても構いません。
一度断られたからといって、終活の話が完全に失敗したわけではありません。
親にも考える時間が必要です。
数か月後に、別のきっかけから話せるかもしれません。
「終活トークは一度で成功させるものではない。」という気持ちを持っておくことが大切です。
「不機嫌になった」は失敗とは限らない
親がお金や死後の話を嫌がると、「やっぱり話さなければよかった。」と思うことがあります。
でも、少し不機嫌になったからといって、すべてが失敗とは限りません。
親がその日の夜に、「確かに通帳の場所くらいは伝えた方がいいかな。」と考えることもあります。
人は、初めて聞いた重い話に、その場ですぐ納得できるとは限りません。
だから、
話す。
少し時間を置く。
また話す。
という流れでよいのです。
大切なのは、親を追い詰めないことです。
絶対に避けたい3つの言い方
逆に、できるだけ避けたい言い方もあります。
一つ目は、「もう年なんだから!」です。
年齢を理由にすると、親の自尊心を傷つけやすくなります。
二つ目は、「ボケる前にやっておいて!」です。
認知症への不安を必要以上に刺激するだけでなく、親を傷つける可能性があります。
三つ目は、「死んだ後、こっちが困るから!です。
子どもの本音としては分からなくもありません。
でも、この言い方では終活が「死後の片づけ」に聞こえてしまいます。
伝えたいことは同じでも、言葉を変えるだけで、親の受け止め方は大きく変わります。
親への終活トーク、最初の一言5選
では実際に、どのように話せばよいのでしょうか。
私なら、次のような言葉から始めます。
【急な入院をきっかけにするなら】
「もし急に入院することになった時に私が困らないように、病院や薬のことだけ教えておいてくれない?」
【防災をきっかけにするなら】
「地震とか何かあった時に慌てないように、大事な書類がどこにあるか一緒に確認しておかない?」
【お金の話へつなげるなら】
「貯金額を知りたいわけじゃなくて、何かあった時のために、どこの銀行を使っているかだけ教えてほしいんだ。」
【保険の話へつなげるなら】
「せっかく保険料を払ってきたのに、必要な時に使えなかったらもったいないから、一度一緒に確認してみない?」
【一番シンプルに始めるなら】
「もし何かあった時に私が慌てないように、少しだけ教えておいてほしいことがあるんだけど」
このくらいの一言からで十分です。
終活の話ではなく「これからどう暮らしたい?」と聞く
さらに一歩進めるなら、親にこんな質問をしてみてください。
「これからも、この家で暮らしたい?」
「もし一人になったらどうしたい?」
「介護が必要になったら、家がいい?施設もあり?」
「何かあった時、誰に一番最初に連絡してほしい?」
これは、「死んだ後どうする?」ではありません。
「これからどう生きたい?」という質問です。
終活というと、人生を閉じる準備のように聞こえます。
でも本来は、
これからどこで暮らすのか?
何を大切にするのか?
誰とつながっていたいのか?
自分のお金をどう使いたいのか?
を考えることでもあります。
終活は、「死ぬための準備ではなく、自分らしく生き続けるための準備」
と考えた方が、親子ともに話しやすくなります。
今やっておきたいことは3つ
一つ目は、最初から「終活」という言葉を使わなくてもよいと考えることです。
急な入院。
防災。
保険。
薬。
大切な書類。
身近なテーマから始めます。
二つ目は、一度に全部聞こうとしないことです。
一回の会話で一つ分かれば十分です。
親のペースを大切にしながら、少しずつ情報を共有します。
三つ目は、「親のため」だけではなく「私が困らないため」と伝えてみることです。
「助けてほしい。」
とお願いすることで、親自身の役割も残すことができます。
最初の一言が、家族の未来を変えることがある
親に終活の話を切り出せない。
それは、あなたが親の気持ちを考えているからこそではないでしょうか?
無理に、「終活しよう」と言う必要はありません。
最初の一言は、「もし何かあった時に私が慌てないように、少しだけ教えておいてほしいことがあるんだけど」これで十分です。
そこから、
病院。
薬。
保険。
銀行。
住まい。
介護。
少しずつ話を広げていけばいいのです。
親が元気な今だからこそ、
本人の希望を聞ける。
一緒に考えられる。
選択肢を比較できる。
そして何より、親自身が決めることができます。
終活を「死後の準備」として切り出すのではなく、「家族が安心してこれからを生きるための会話」として始める。
それが、親に終活の話をするときの最も大切な第一歩だと思います。
第42話では、「親が話したがらない時の進め方」
というテーマで、終活や介護の話を拒否する親に対して、無理に説得せず、それでも準備を少しずつ前へ進める方法を整理していきます。
ご相談はお気軽に!!
まずは最初の一言を投げかけてみて下さい。