あの時、助けた命と対峙して

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コラム

3年前の夏頃だったでしょうか。

ある晩、仲の良い友人宅でバーベキューのお誘いがあり、家族みんなでお邪魔することになりました。

その頃は今の露明けのようにとても暑く、日中は立っているだけでも汗が出てくるような猛暑でしたが、夜はガラリと変わり涼しくて快適に過ごせていました。

その日は田舎ということもあり虫の声が良く響き、人通りも少なく民家も離れているのでワイワイ騒ぐ事が出来てとても楽しいバーベキューになりました。
ふと、友人宅の大きな掃き出し窓に目をやると、可愛い猫と目が合いました。

名前はサクラ。

キジトラ柄のキリっとした美形猫です。

サクラはいつもこの周辺を散歩するのが日課らしく、日中は寝てばかりだけど夜は活発な好奇心旺盛猫ちゃんです。

私はお酒が入っていて猫好きなせいか、みんなと離れていつの間にかその猫とじゃれあっていました。

撫でるとゴロゴロと甘えてきてくれるので、こちらも調子に乗って抱っこもしてあげます。


「サクラは可愛いね」


そんな独り言をつぶやきながら見ていると、素朴な疑問が頭を過りました。


「人以外にもできるのかな?」


ふと思ったそんな好奇心から、サクラに意識を集中させていつものように先の未来を視ようと試みます。
でも、案の定モクモクと不思議な靄がかかってうまくはいきません。

動物は無理なんだね。

やがてその日の楽しいひと時は終わり、私も含め友人達はみな解散、帰宅し、いつもは21時には寝るのにその夜は24時頃に寝ることになり、目はもう限界でした。




気が付くと私は友人宅の長くて赤いソファに座っていて、前側にぐったりと横たわり、ぐったりとして倒れているサクラを見つけました。


友人とその奥さんが涙をためながら


「がんばれ、がんばれ!」


目をウルウルさせながら、前足にそっと手を添えて必死に声をかけている様子がぼんやりと見えました。

その時の桜の体の前足と後ろ足の間には、どんよりとした深くて黒い霧がグルグルと周り、何かを私に教えようとしてくれているようにも感じられます。



ハッと気が付くと目が覚め、それが夢だったのだと実感しました。

しばらくはただの夢だからと放っておこうとも思っていましたが、それでもだんだん、あの夢が気になって友人に電話し


”昨日サクラの様子が少し変だったよ”


”定期的に診察してもらったほうがいいんじゃないかな”


と、それとなく注意を促して様子を見てみようと試みました。




それから次の年の春頃、友人から一本の電話がかかってきました。


「ありがとう」


その電話では、注意を促してから数か月経った頃、獣医に診察をしてもらっていると比較的早い段階のガンが見つかって、術後無事家に戻ってきたそうです。

サクラは家族にとても愛されていて、友人ファミリーには欠かせない一員。
あの時私の助言がなかったらどうなっていたかととても感謝されました。

友人に夢の話をしようかとも思いましたが、小さい頃に変な奴とか、怖いとか、白い目で見られた経験もあるので可能な限りは伏せて、できるだけやんわりと伝えるようにしています。



「本当に、無事でよかった...」



それがら現在、つい先日の日曜日のこと。

久しぶりに友人宅にお邪魔する事があり、例の掃き出し窓を覗くといつもの場所にいつものサクラが外を眺めていて


”早く外に出してくれないかなぁ”


といった様子できょろきょろとしていました。

動物にも有効なのかは定かではありませんが、あの日見た夢がきっかけでサクラは今があるのかなと、セミの鳴き声のする空を仰ぎました。




本当に、無事で良かった。




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