自分で言った言葉なのに、自分が一番驚いている。

自分で言った言葉なのに、自分が一番驚いている。

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コラム
安心感が、今日も凪の心をそっと包んでいた

午前中の授業は、あっという間に過ぎていった。

黒板に書かれる文字をノートへ写しながらも、
凪の頭の片隅には、さっき陽菜に言われた言葉が残っていた。

誰かのことを考える前に、自分のことも大事にして。

そんなことを言われたのは、初めてだった。

昼休み。
凪は自然と教室の入口へ目を向けた。

(……あ。)

陽菜を探してる。
そう気づいた瞬間、思わず苦笑した。

昨日から、何度目だろう。
自分でも理由は分からない。

でも、探してしまう。

「凪。」
聞き慣れた声がして顔を上げる。

「待った?」
陽菜がお弁当を抱えて立っていた。

「ううん。」
その一言だけで、また胸が軽くなる。

二人はいつものように机を向かい合わせた。

「今日は卵焼きあるよ。」
陽菜がお弁当箱を開けながら笑う。

「昨日、母が作りすぎちゃって。」

「美味しそう。」

「一個食べる?」

「え、いいの?」

「もちろん。」

陽菜は何のためらいもなく卵焼きを箸でつまみ、
凪のお弁当箱へそっと置いた。

「ありがとう。」

凪も自然に、自分のおかずを一つ差し出す。

「じゃあ、これ。」

「わあ、唐揚げ。」

「交換ね。」

二人は顔を見合わせて笑った。

ほんの小さなやり取り。
胸の奥がじんわりと温かくなる。

「凪。」

「ん?」

「今日、朝より笑ってる。」

「え?」

「ほんと。」

陽菜はいたずらっぽく笑う。

「朝はちょっと固かったもん。」

凪は思わず自分の頬に触れた。

笑ってる……?
そんなこと、自分では気づかなかった。

「陽菜といるからかな。」
言ってしまってから、凪ははっとした。

(え……。)

自分で言った言葉なのに、自分が一番驚いている。

陽菜も少しだけ目を丸くした。

でも、すぐにふわりと笑う。

「じゃあ、今日もたくさん笑ってね。」

その笑顔につられて、凪も笑った。

教室の窓から初夏の風が吹き込み、白いカーテンが静かに揺れる。
その風景を眺めながら、凪は思う。

(この時間が、好き。)

まだ、それが何という気持ちなのかは分からない。

でも。、以前のように
「誰にどう思われるか」ばかりを考えていた自分より、
「誰と一緒にいたいか」を考えている自分がいる。

その小さな変化に、凪はまだ気づいていなかった。

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