「ピッ」の代わりに「ブッ」。春、スーパーで響く音。
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コラム
「ピッ」の代わりに「ブッ」。春、スーパーで響く音。
春の陽気が心地よいある日のこと。私は近所のスーパーへ買い物に行った。新鮮な野菜、ふっくらと焼き上がったパン、特売の卵。店内には、春の訪れを感じさせる穏やかな雰囲気が漂っていた。
しかし、その穏やかさを打ち砕く音が、レジから響いてきた。
「ブッ!!!」
……ん?
異変に気づく
私は思わず足を止めた。今の音は、決してスキャナーの「ピッ」ではなかった。むしろ、何かが弾けるような…いや、明らかに屁の音だった。
恐る恐るレジの方を見ると、レジ担当の店員が、何事もなかったかのように次の商品をスキャンしていた。
そして──
「ブボッ!!!!」
……間違いない。スキャンのたびに屁をこいている。
私は唖然としながら、レジに並んだ。前にいたおばあちゃんも一瞬、怪訝そうな顔をしたが、店員は何もなかったように微笑んでいる。
「○○円になります~♪」
彼の顔には一切の動揺がない。むしろ、どこか誇らしげな表情すら浮かべている。まるで「これが普通ですが、何か?」と言わんばかりに。
レジの戦場
私の番が来た。カゴを差し出すと、店員はまずキャベツを手に取る。そして、スキャナーをかざした。
「ブッ!」
キャベツが屁とともにスキャンされた。
次に牛乳。
「ブボッ!!!」
私の心臓が跳ねる。何だこの音圧は。もはやスキャナーより屁のほうが主張している。
卵をスキャン。
「プスゥ…」
長めの屁が出た。こもった音が響く。私は耐えられず、思わず咳払いをした。
しかし、店員は動じない。淡々とスキャンを続けている。
スキャナーが鳴るたびに屁。屁。屁。
もはや私の脳内では、屁の音がBGMのようになり始めていた。
お客さんたちの反応
異変に気づいたのは、私だけではなかった。後ろに並んでいた小学生がクスクス笑っている。おばあちゃんは「春の風は強いねぇ」と謎の解釈をしながら、そっと鼻を押さえた。
しかし、最も驚くべきは、店員の堂々たる態度だ。
「ポイントカードはお持ちですか?」
屁をこきながら、彼は一切動揺せずに接客している。まるで「屁をこくことはレジ業務の一環である」と言わんばかりに。
私は耐えきれず、意を決して聞いてみた。
「あ、あの…大丈夫ですか?」
彼はニッコリと微笑み、こう言った。
「春ですねぇ。」
終わりに
春は新しい風が吹く季節。
彼の尻からも、新しい風が吹き荒れていた。
私はそっとレジ袋を受け取り、店を出た。
遠くでウグイスが鳴いている。「ホーホケキョ」。
スーパーの自動ドアが閉まる瞬間、最後にもう一発、店内から響いた。
「ブッ…」