俺が見た、ヤバい奴
どうしてこうなったのか、俺には分からない。
あれは深夜のセルフのガソリンスタンドだった。
車の給油を終えて、そろそろ帰ろうとしたとき、視界の端に妙な光景が映った。
一人の男がいた。
ズボンを下ろし、給油ノズルを自分のケツの穴にあてがっていた。
最初は何をしているのか理解できなかった。
目の錯覚かと思い、二度見した。
だが、間違いない。男は本気だった。
「えっ?」
思わず声が漏れたが、男は気にした様子もなく、静かにトリガーを引いた。
ゴボッ……
俺は凍りついた。
ガソリンが彼の体内に流れ込んでいく。
異様な光景だった。
痛がる様子もない。むしろ、どこか恍惚としているようにさえ見えた。
しばらくすると、男はゆっくりと立ち上がり、今度は口を大きく開けた。
そして、信じられないことに、口からホースを車の給油口へと繋げたのだ。
「……は?」
まるで人間ポンプのように、男の体を通じてガソリンが車へと流れていく。
俺は震えながらスマホを取り出した。
動画を撮るべきか?
警察を呼ぶべきか?
いや、それ以前に、こんなことが現実に起こり得るのか?
どれくらいの時間が経ったのか分からない。
だが、メーターを見ると、しっかりと満タンになっていた。
男はノズルを抜き、ズボンを上げる。
そして、何事もなかったかのようにレシートを受け取り、静かに車に乗り込んだ。
エンジンをかける。
車のエンジン音は、まるで新車のように滑らかだった。
俺は立ち尽くした。
あの男は何者だったのか。
そして、次は軽油で試すつもりなのかもしれない——。
俺は、あの夜のことを誰にも話していない。