例えば風景を描くときは、
遠くのものを青く描くといいと言われます。
ただ、宇宙では逆ですから、今回は遠くを赤く描いています。
今日は物理のお話をします。
地上で、遠くの景色を青く描くのは、「空気遠近法」と呼ばれる技法です。
物理学では「レイリー散乱」といいます。
光の波長は、短いほど青く、長いほど赤いのですが、
短いほど空気中の分子などにぶつかりやすいので、
特に波長の短い青色が、空気中に散乱するのです。
(※遠くを描くとき、霧や雲がかかる場合は白っぽく描くこともあります。これは、ミー散乱と呼ばれる別の理論です。分子よりも大きな塵や水滴などにぶつかると、特定の色ではなく、光全体(白)が散乱するので、白く描くといいのです。)
一方、宇宙では話が別です。
宇宙は、常に拡大しています。
だから、全ての星は常に遠ざかっています。
そうすると、ドップラー効果の光版のような効果が起こります。
これを、赤方偏移といいます。
遠ざかる救急車の発する音が低く聞こえるのは、
発した音から救急車が離れていくことによって、
音の波長が伸びていくからです。
遠ざかる星も、発した光から離れていくことによって、
光の波長が伸びて、赤く見えるのです。
遠くにある星ほど、遠ざかる速度も早いので、
遠くにある星ほど、赤く見えるのです。
まあ、絵に描くほどわかりやすく色の差はないのですけど・・・。
なんでこんな難しい話してるんでしょうね。
そういうわけで、今回の絵は、
遠くの星ほど赤っぽく描いてみたのです。
この世界は、遠くの人も近くの人も、誰もが光や音を発していて、
それを他の誰かが受け取って、世界は成り立っています。
でもきっと、世界は日々広がっているし、
世界は遠ざかっているし、
遠くのものは実際と異なって見えるし聞こえるのだから、
そう見えるからといって、その色や音ではないのでしょう。
私たちは、この世界を見えるようにしか見られないし、
聞こえるようにしか聞けないのです。