YAIBA

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小説
誰もいない部屋で一人ぼっち。
自分で埋めた鍵穴を見つめる。

笑顔を隠しながら、
もう二度とこの扉を開かないと誓ったのは、
いつのことだっただろう。

なにが悪かったのか分からない。
ちょっとかわいそうだと思ったから注意しただけなんだ。

健人はスネ夫みたいなやつだ。

光輝というジャイアンに媚びを売っている。
下手に出ていながらも実際にはうまくその力を利用する。
誰に対しても自分の方が上なんだとマウントをとりたがる。

ムードメーカーな部分もあるが、
調子に乗ってやり過ぎてしまうことがたまにきず。

あのときもそうだ。
なんの変哲もない給食の時間。

なにがきっかけだったか忘れたが、宏が鼻から牛乳を吹き出した。
それをきっかけに教室は爆笑に包まれた。
そこまでは良かったんだ。
みんなで笑っていられたから。

健人は宏を昼休み中ずっとイジっていた。
ダセーとか、カッコわりーとか、とにかくしつこい。
宏もうんざりしていた。

そんな宏をもっとへこませようとしたのか、
「だからお前は絵美に嫌われてるんだよ」と。

宏が絵美のことを好きなのは、薄々みんな気づいてる。
でも、わざわざ口にするやつはいなかった。

宏は、ちょっと嫌な言い方をすると、
なんの害もないやつだ。
クラスでも目立たない、
勉強も運動もやや平均より下。
絵を描かせるとめっちゃうまいけど。

「もうやめてやれよ」

そう発した俺の言葉に、
健人は鋭い目つきで睨んできた。
そのときはそのまま終わったが、
次の日から明らかな嫌がらせが始まった。

正義の味方のお出ましだ、とか、
ちょっと体育で活躍すると、
「やっぱ隆明はちがうなー」と
なんの感情もない顔で聞こえるように吐き捨てる。

とりあえず無視を続けていたら、
俺が無視される立場になっていた。

無視をされるって実際のとこ、
あんまりいじめを受けたって感じがしないんだよな。

あからさまに殴られたりとか、
金をたかられたとか、
物をとられたなんてあったなら、
反抗する気にもなるんだけど。

だんだん景色がモノクロになって、
声が遠ざかっていって、
ひとりぼっちの世界が大きな口をあけた。

その先は光が届かないこの部屋だった。

このまま消え入ってしまいたい。
親にも申し訳ない。
俺のせいで妹はいじめにあっていないだろうか?

たまに外に出てみたい気持ちにもなる。
たまに学校に行ってみたい気持ちにもなる。

でも暗闇の世界になれてしまうと、
光はまぶしすぎて怖い。

それと、
とにかくもうすべてが面倒くさい。

誰かと話すこと、
自分の気持ちを伝えること、
何がしたいのか、
何ができるのか、
人と関わり合うことのすべてが。

そんなとき1冊の本と出会った。
母親が食事と一緒に部屋の前に置いたみたいだ。

学校をつくるはなし。

学校をつくるってなんだ?って思ったが、
高校教師をしていた主人公が、
不登校の子供たちに安心して通える学校をつくる物語。

学校は楽しいところだ!っていいながら、
嫌なら学校になんか行かなくていいと言っている。

教師のくせに授業をすっぽかして、
学校で一番校長室に呼ばれている。

そんな破天荒な先生に興味を持った。
窮屈な社会の中で、自由に生きている人間に。

俺は久しぶりに口を開き、母親に尋ねた。
「この学校の先生に会ってみることってできるかな?」

俺がまたスタートラインに立った瞬間だ。

覚悟というのは、
暗闇を切り裂くキラッと光る刃を手にすることなのかもしれない。

その刃でうまく光の道に進めるかもしれないし、
そのまま錆付いてしまうかもしれない。

足下に引かれた一線を、勇気を振り絞って飛び越えた。

先生はそんな俺を笑いながら迎えてくれた。

自分で引いた線なんだから、
飛び越えられて当然だろ!?
大丈夫!
これからも君はそうやって飛び越えていけるから。

のんきな桜はまだ半分顔を隠しているが、
今日からこの会社で働く俺を、
ゆっくりと祝福してくれるだろう。

先生の言葉を今も思い出す。

刃を手に入れたら、今度は捨ててごらん。
素手で生きるんだ。
誰とも争わず。
誰とでもフラットに。
君は君らしく。

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