一人の狼少年の日常・序盤

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 一目のつかない森、一つの小さい木の家が建っている。そこには、一匹の狼のような子供が住んでいる。頭には少し尖った耳が生えている。手足は明らかに人間のものでなく、灰色の狼である。大きめの尾も付いている。「狼少年」だ。
 そんな狼少年は、誰とも一緒にせず、一人で暮らしている。理由は、人間とも完全な狼とも言えないのでわかり合えない…というものではなく、ただ単にその少年が一人の方がいいと思うからだ。
 実際、少年の周りには何の騒ぎもなく、平和である。少年が暮らすには快適だ。
 普段は朝起きて、ご飯を食べて、外に出かけて、夜にもご飯を食べて、寝て…そんな繰り返しである。
 ご飯と言ったが、狼のように草食動物などを肉として食べることはあまりない。住処から少し近い川にたくさん泳いでいる魚を釣っては食べる。少年は、最初は不味いとは思っていた。しかし、段々と食べるのに慣れていった。自分はあの狼とは違うからだろうか、と考えたことはある。他に食べるものといえば、木の実やキノコぐらいである。動物の肉はあまり食べないと言ったが、食べるときは、だいぶ遠くの暗い森に出かけて、小さい草食動物を狩って持って帰る。そして肉として保存する。だが、その暗い森には、草食動物もいるが、大きいクマなど、狂暴な動物もいるので、少年は2、3匹程度狩ったらすぐに引き返すようにしている。少年は、自分はあまり強くないと思っている。大きな獲物を狩るのには自信がないらしい。魚や木の実の方を多く食べているからかもしれない。
 …と、ご飯の事情は長いがこんなものである。
 こんな感じに、狼とも人間とも若干違うが、生きるには充分な生活をしている。
 そんな日常が続いていた。
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