ご覧いただき、ありがとうございます。
精神保健福祉士『一教』と申します。
私が勤務している精神科では、認知症や高齢者を対象とした「物忘れ外来」を週に1日設けております。私も認知症ケア専門士として、精神疾患とは別の視点で、ご家族や施設の方からの相談対応をさせていただいております。
先日、とある特別養護老人ホームの施設長さんが「日本の、今の高齢化社会における、特別養護老人ホームの役割は…」とおっしゃっていました。
また、テレビでは「高齢化社会なのだから、高齢者へのワクチン接種を早急に」とコメンテーターの方が語っていました。
それらを聞いて、「ん?」と思いました。
日頃、認知症や高齢者にまつわる相談や報道を通して気になることがあります。
それは、「言葉の選択」です。
間違った言葉の選択は、自らの無知を知らしめるだけでなく、状況を把握すらしていないと受け取られても致し方ありません。
特別養護老人ホームの施設長さん、テレビのコメンテーターの方の話を例としてあげましたが、私はよく耳にする「高齢化社会」という言葉が嫌いです。
なぜなら言葉の選択として間違っているから。
似た言葉に高齢社会、超高齢社会がありますが、それらとの違いは、以下の通り比率の違いです。
■「高齢化社会」高齢化率7%以上
■「高齢社会」同、14%以上
■「超高齢社会」同、21%以上 ←日本は今ココ
※高齢化率は、総人口に対する65歳以上の割合をいいます。
※ちなみに去年の日本の高齢化率は28.7%(総務省統計局HPより)でした。
「〜化社会」は、「〜になりつつある社会」という意味です。
今の日本は、高齢者の多い社会になりつつある状況でしょうか?
なりつつあるどころか、ダントツで世界のトップを突っ走っています。
「高齢化社会」という言葉から受ける印象として「鎖国を終えて開国し、近代化、国際化の波を受けて、開かれた社会」と同等に聞こえます。
つまり、「いつの時代の話だよ!?」ってことです。
日本が高齢化社会に突入したのは1970年。今から51年前のことです。
表現としては「超高齢社会が到来しており、高齢化率の上昇が止まらない社会」が正しいでしょう。
高齢化率の上昇が急であったが故に、その変化に付いて行けず「高齢化社会」という言葉だけ取り残された感じがします。
状況を把握すらしていないと申し上げた理由も、ここにあります。
世間一般から見るとほんの些細な違いで、無知というのは大袈裟すぎないか、というご指摘もあろうかと思います。
ですが、割合として数%~数10%の違いが、人数になると数万人となり、医療・介護の枠でみると予算は数兆円にのぼります。
高齢化率の上昇が止まらないということは、かかるお金はどんどん増えるのに、働き手はどんどん減っていく、というのは周知のことでしょう。
高齢者の数だけでこのようなことが言え、かなり危機感のある話です。
それなのに、高齢者福祉に従事している方でさえ「高齢化社会」という悠長な表現をされている。
現状を捉えていないにも関わらず、それらしい言葉で問題点を語られても、何の説得力もないと思うのです。
精神保健福祉士は時にソーシャルワーカーとも呼ばれ、病院と社会とをつなぐ接点の役割も担っています。
故に、社会情勢をきちんと捉えることが必要ですし、的外れな表現をして患者様やご家族に誤解を与えてもいけません。
主に言葉を用いた相談業務に携わる相談員として、言葉の持つ語感、適切な表現を大事にしなければならないと思っています。
ちょっとしたニュアンスの違いで捉え方が全然違ってしまう、っていうことも、けっこうあるんですよね…。
小言のような投稿で大変恐縮です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。