精神科の専門分化

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ご覧いただき、ありがとうございます。
精神保健福祉士『一教』と申します。

以前より敷居は低くなったと言われますが、まだまだ馴染みの薄い精神科に勤務しております。

メンタルに不調を来したとき、意を決して精神科に受診相談します。
ですが、せっかく勇気を出して相談したのに、こう言われてしまうことがあります。
「その患者様の、その症状では、当院で診ることはできません」。

「は?精神を病んで精神科に相談してるのに、診れないってどういうこと?」
きっとそう思われることでしょう。

私も、精神科領域の問題で相談の連絡をして下さった方に対し、そうお答えしたこともあります。中には、電話相談なく病院に来てしまった方に対しても、受付窓口で「診療をお受けできません」とお伝えしたこともあります。

言葉だけ拾うと、診療拒否のように見えますね。

実際、患者様にとっては、診療拒否以外の何物でもないと思います。
精神科なのに精神的な不調を診れないとは、どういうことにでしょうか?

一言でいうと、専門分化されているから
具体的にいうと、提供できる治療プログラムがないから、です。

■幻覚妄想が激しい
■感情のコントロールが効かない
■認知症が進行した
■発達障害で学校に行きづらい
■過食が止まらない/拒食がどうにもならない
■違法薬物に手を染めている
■アルコール依存症だ
上記は全て精神科で扱う問題です。もちろんこれが全てではありませんが。

診療科としては精神科ですが、認知症と子供の発達と違法薬物を同一医療機関で同じように診療することに無理を感じませんか?

幻覚妄想に対しては、薬物療法が主な治療法となります。
他の疾患も、不眠や気分不安定などに対しては対症療法的に薬を使用しますが、薬物やアルコールと向き合うミーティンググループは、どこの医療機関でも行っている訳ではありません。
過食や拒食の摂食に関する問題も、どこでも対応できる訳ではありません。
主に認知症を診る病院に、スクールカウンセラーと連携を図る発想はありません。
入院も含めて検討しなければならない方の相談を、病床のないクリニックでお受けすることはできません。

例えば、一言に内科といっても、心臓の動きや血流を診る循環器内科、呼吸状態を診る呼吸器内科、食べ物の消化吸収を診る消化器内科など、専門分化されています。
血圧が高くて消化器内科に行くはずはなく、胃やお腹が痛くて呼吸器内科に行くはずはない。
それと同じです。

上記の問題点や症状には、それぞれの治療プログラムがあります。
それらはどこでも行っている訳ではありませんし、プログラムを実施するには専門のスタッフも必要です。

受診先の選定や相談のコツなどは、上記も参考にしていただければと思います。

各病院が治療の対象とする病気は、それぞれのホームページに載っていることも多いのでそちらを基に選定していくのも一つです。
そして、相談員にどんどん症状や困りごとを投げかけていただきたいと思います。
「このような症状に対して、そちらではどの様な治療を行ってくれますか?」と聞いても、全然OKです。
相談員が治療方針を決めることはできないので明確な返答はできませんが、「お薬で経過を見ることは多いのですが、 症状の出方や薬の必要性はそれぞれ異なりますので、まずは医師とご相談下さい。治療のうえで必要、と医師から指示があれば、いろいろなサービスの情報提供をすることもあります。」くらいのことは答えてくれると思います。

よりきめの細かい医療や支援体制を築くとなると、専門分化されることもある程度は仕方ないことなのかもしれません。
お手元のスマホ1つで専門的で詳細な情報が手に入る世の中です。
相談される方の中にも、私より専門的な知識や情報をお持ちの方もいらっしゃると思います。
医療が必要な方に、適切な医療が提供できるよう、相談員として知見を広めていかなければならないと日々感じております。

お読みいただき、ありがとうございました。
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