また同じ失敗を繰り返す恋…脳が無意識に選ぶ『遺伝的に相性のいい人』の正体

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なぜ、いつも「合わない」と感じてしまうのか


ダイキのカウンセリングルームに、クライエントが入ってきた。少し緊張した面持ちで、椅子に腰掛ける。

クライエント「今日は、よろしくお願いします」

ダイキ「こちらこそ、よろしくお願いします。どんなことをお話しされたいですか?」

クライエント「あの...恋愛のことなんですけど」

少し言いにくそうに、クライエントは言葉を選びながら話し始めた。

クライエント「数年前から婚活してるんです。でも、なかなかうまくいかなくて。何人かとお会いするんですけど、いつも『なんか違うな』って感じちゃうんです」

ダイキ「『なんか違う』というのは、具体的にどんな感じですか?」

クライエント「うーん...条件的には悪くないんですよ。年収も、性格も、話も合うし。でも、なんていうか...ピンとこないっていうか。一緒にいても、心が動かないっていうか」

そう言いながら、クライエントは自分の胸のあたりに手を当てた。

「条件」と「相性」のズレ


ダイキ「なるほど。条件的には良いのに、心が動かない。それで、どんなふうに感じていますか?」

クライエント「正直、自分がおかしいんじゃないかって思うんです。友達は『そんな贅沢言ってたら結婚できないよ』って言うし、母親には『もう32なんだから、条件で選びなさい』って怒られるし」

クライエントの声が少し小さくなった。

クライエント「でも...条件だけで選んで、本当に幸せになれるのかなって。この間も、すごく真面目で優しい人とお見合いしたんですけど、どうしても『この人と一緒にいたい』って思えなくて...」

ダイキ「それは辛かったですね。周りからは急かされて、でも自分の気持ちは動かない」

クライエント「そうなんです。私、何を基準に選べばいいのかわからなくなっちゃって...」

クライエントは、困ったように首を傾げた。

ダイキ「もしよかったら、『この人だ!』って思った経験はありますか?」

忘れられない「あの感覚」


クライエント「...あります」

クライエントの表情が、少し変わった。

クライエント「10年以上前なんですけど。大学のサークルで知り合った人で。初めて会った時から、なんか...心臓がドキドキして。一緒にいると、なんか安心するっていうか、楽しいっていうか」

ダイキ「その時は、どんな感じだったんですか?」

クライエント「条件とか、全然考えてなかったです。ただ、一緒にいたいって思ったんです。その人の...匂いも好きだったな」

そう言って、クライエントは少し恥ずかしそうに笑った。

クライエント「変ですよね。匂いとか言うの」

ダイキ「いや、全然変じゃないですよ。むしろ、すごく大事なことをおっしゃってると思います」

ダイキはそう言って、少し前のめりになった。

ダイキ「その方とは、どうなったんですか?」

クライエント「結局、うまくいかなかったんです。価値観が合わなくて...。でも、あの『ドキドキ』は忘れられなくて。婚活で会う人たちには、あの感覚がないんです」

クライエントは、少し寂しそうな表情を浮かべた。

「相性」を決めるもの


ダイキ「その『ドキドキ』、そして匂いが好きだったという感覚。実は、それって脳が『この人は遺伝的に相性が良い』って判断してるサインかもしれないんです」

クライエント「え? どういうことですか?」

ダイキ「人間の体には、MHCっていう免疫に関係する遺伝子があるんです。そして、面白いことに、私たちは自分と違うMHCを持つ相手に惹かれやすいんですよ」

クライエント「違う...MHC?」

ダイキ「そうです。自分と遺伝的に違う相手を選ぶと、生まれてくる子どもの免疫システムが強くなるんです。だから、進化の過程で、私たちの脳は『遺伝的に違う相手』を魅力的だと感じるようになったんですね」

クライエント「じゃあ、あの『ドキドキ』って...」

ダイキ「そう。本能が『この人は遺伝的に相性が良い』って教えてくれてるサインなんです」

クライエントは、目を丸くした。

匂いが教えてくれること

ダイキ「それで、匂いのことなんですけど」

クライエント「はい」

ダイキ「人間は、無意識のうちに相手の体臭から、その人のMHCを感じ取ってるんです。そして、自分と違うMHCを持つ相手の匂いを『良い匂い』だと感じるんですよ」

クライエント「え...! だから、あの人の匂いが好きだったんですか?」

ダイキ「その可能性が高いですね。体臭って、香水とかじゃなくて、その人自身の匂いですよね?」

クライエント「そうです。汗とか、服から香る匂いっていうか...なんか、落ち着く匂いだったんです」

クライエントは、思い出すように目を閉じた。

ダイキ「それって、まさに『相性が良い』っていう脳からのメッセージだったのかもしれないですね」

クライエント「そっか...。でも、その人とはうまくいかなかったんですよね」

クライエントは、少し悲しそうな表情を浮かべた。

「本能」と「理性」のバランス


ダイキ「うまくいかなかったのは、どうしてだと思いますか?」

クライエント「価値観が...合わなかったんです。私は将来のこととか、真面目に考えたかったんですけど、相手はすごく自由な人で。計画とか立てないタイプで」

ダイキ「なるほど。遺伝的には相性が良くても、価値観が合わないと難しいんですね」

クライエント「そうなんです。ドキドキはしたけど、将来のことを考えると不安で...」

ダイキはゆっくりと頷いた。

ダイキ「つまり、相性って二つの側面があるんですよ。一つは、本能が感じる『遺伝的な相性』。もう一つは、理性が判断する『価値観の相性』」

クライエント「二つ...」

ダイキ「そうです。理想的なのは、両方が揃ってることなんですけど、なかなか難しいですよね」

クライエント「だから、婚活で会う人たちは、条件的には良いけど、ドキドキしないんですね...」

クライエントは、何かを理解したような表情になった。

なぜ、幼なじみに恋できないのか


ダイキ「もう一つ、面白い話があるんですけど」

クライエント「はい」

ダイキ「幼なじみとか、小さい頃から一緒に育った人って、恋愛対象として見にくいって感じたことありませんか?」

クライエント「あ、あります! 小学校からずっと一緒だった男の子がいるんですけど、全然恋愛対象として見られなくて。友達は『あんなにいい人なのに、もったいない』って言うんですけど」

ダイキ「それも、実は脳のメカニズムなんです。小さい頃から一緒に育った人を、脳は『家族』だと認識するんですよ。そして、家族に対しては恋愛感情を持たないようにプログラムされてるんです」

クライエント「え、どうしてですか?」

ダイキ「これも、遺伝的多様性を保つためなんです。昔々、人類がまだ小さな集団で暮らしていた時代、近親交配を避けることがとても重要だったんですね。だから、幼少期を一緒に過ごした人には、性的な魅力を感じないように進化したんです」

クライエント「へぇ...! そうだったんですか」

ダイキ「はい。これを『ウェスターマーク仮説』って言うんですけど、いろんな研究で確認されてるんですよ」

クライエントは、興味深そうに聞いていた。

自分の感覚を信じていい


クライエント「でも...じゃあ、私はどうしたらいいんでしょう。本能に従うべきなのか、条件で選ぶべきなのか」

ダイキ「どちらか一方、というよりは...」

ダイキは、少し間を置いた。

ダイキ「あなた自身は、どう思いますか? あの『ドキドキ』を感じる相手と、また出会いたいですか?」

クライエントは、しばらく考え込んだ。

クライエント「......本当は、出会いたいです。でも、それって贅沢なのかなって」

ダイキ「贅沢じゃないと思いますよ。むしろ、自分の感覚を大切にすることって、すごく重要だと思います」

クライエント「でも、周りは...」

ダイキ「周りの声も大切ですけど、一番大切なのは、あなた自身がどう感じるかじゃないですか? 結婚するのは、周りじゃなくて、あなた自身なわけですから」

クライエントは、ハッとした表情になった。

本能と理性、両方を大切にする


ダイキ「ただ、本能だけに従うのも、理性だけに従うのも、どちらも極端だと思うんです」

クライエント「というと?」

ダイキ「例えば、あなたが10年前に出会った方。遺伝的には相性が良かったけど、価値観が合わなかった。それで、うまくいかなかったんですよね」

クライエント「はい」

ダイキ「だとしたら、次に『ドキドキ』する相手に出会った時、今度は『この人とは価値観が合うかな?』って、冷静に見ることもできますよね」

クライエント「あ...そっか」

ダイキ「本能が『この人だ!』って言ってくれる相手の中から、さらに価値観が合う人を選ぶ。そういうアプローチもあると思うんです」

クライエントの表情が、少しずつ明るくなってきた。

クライエント「確かに...。条件だけで選ぶんじゃなくて、まず『ドキドキ』する人を探して、その中から選べばいいんですね」

自分の「好き」を見つめ直す


ダイキ「そうですね。それに、『ドキドキ』する相手って、何も外見がタイプとか、そういうことだけじゃないんです」

クライエント「え、どういうことですか?」

ダイキ「例えば、その人の話し方とか、仕草とか、笑顔とか。あるいは、さっき言ってた匂いとか。そういう、言葉にしにくいところで『好き』って感じることって、ありますよね」

クライエント「あります...!」

ダイキ「それって、あなたの本能が『この人は相性が良い』って教えてくれてるサインなんですよ。だから、そういう感覚を大切にしていいと思います」

クライエントは、何度も頷いた。

クライエント「そうか...私、自分の感覚を信じてなかったのかもしれないです。周りの声ばかり聞いて」

ダイキ「周りの声も、もちろん参考にはなります。でも、最終的に決めるのは、あなた自身ですから」

婚活のやり方を変えてみる


クライエント「じゃあ、これから婚活をどう進めたらいいんでしょう」

ダイキ「どう思いますか? 今までのやり方で、何か変えたいことはありますか?」

クライエント「うーん...」

クライエントは、少し考えた。

クライエント「これまでは、プロフィールを見て『条件が良さそう』って人に会ってたんです。でも、実際に会っても、全然ドキドキしなくて」

ダイキ「なるほど」

クライエント「だから、もっと...最初から『会ってみたい』って直感で思える人に会ってみようかな」

ダイキ「いいですね。直感って、意外と的確だったりしますから」

クライエント「それに、会った時に、相手の匂いとか、話し方とか、そういうのにも注目してみようと思います。条件だけじゃなくて」

ダイキ「素晴らしいと思います」

クライエントは、少し自信がついたような表情になった。

本能を味方につける


ダイキ「あと、一つ覚えておいてほしいことがあるんですけど」

クライエント「はい」

ダイキ「本能が『この人だ』って言ってくれる相手って、そんなに頻繁には現れないんですよ」

クライエント「そうなんですか?」

ダイキ「はい。だから、焦らないことも大切です。『また違った』って感じることがあっても、それは別にあなたがおかしいわけじゃない。ただ、まだその人に出会ってないだけなんです」

クライエントは、ほっとしたような表情を浮かべた。

クライエント「そうですよね...。私、急がなきゃって焦ってたのかも」

ダイキ「その気持ちも、すごくわかります。でも、結婚って、一生のことですから。焦って選んで後悔するよりも、じっくり探す方が良いと思いますよ」

クライエント「はい...」

変化の兆し


クライエントは、深く息を吸って、ゆっくりと吐いた。

クライエント「なんか...すごく楽になりました」

ダイキ「そうですか。良かったです」

クライエント「私、ずっと『自分の感覚がおかしいのかな』って思ってたんです。でも、それって、ちゃんと意味があったんですね」

ダイキ「そうですよ。あなたの本能は、ちゃんと働いてるんです」

クライエント「これからは、もっと自分の感覚を信じてみようと思います。条件も大事だけど、まずは『ドキドキ』する人を探して」

ダイキ「いいですね」

クライエントの表情は、カウンセリングの最初と比べて、明らかに明るくなっていた。

これからの一歩


クライエント「でも...もし、ドキドキする人になかなか出会えなかったら、どうしたらいいんでしょう」

ダイキ「その時は、出会いの場を変えてみるのも一つの方法ですね。今、どんな場所で出会ってるんですか?」

クライエント「お見合いパーティーとか、アプリとか...」

ダイキ「なるほど。もし、趣味のサークルとか、何か自分が好きなことをする場所で出会えたら、もっと自然に『この人いいな』って思える相手に出会えるかもしれないですね」

クライエント「確かに...! 最初に好きになった人も、サークルで出会ったんです」

ダイキ「そうでしたよね。共通の趣味があると、一緒にいる時間も楽しいですし、価値観も近いことが多いですから」

クライエント「じゃあ、何か趣味のサークルとか、探してみようかな」

ダイキ「いいと思いますよ」

90歳の自分から見たら


ダイキ「最後に、一つ想像してみてほしいんですけど」

クライエント「はい」

ダイキ「もし、あなたが90歳になって、今の自分を振り返った時、『あの時、こうしておけば良かった』って思うとしたら、どんなことだと思いますか?」

クライエントは、しばらく考え込んだ。

クライエント「......たぶん、『もっと自分の気持ちを大切にすれば良かった』って思うんじゃないかな」

ダイキ「そうですか」

クライエント「周りの声に流されて、本当は好きじゃない人と結婚したら...きっと後悔すると思います」

ダイキ「なるほど。じゃあ、今のあなたは、どうしたいですか?」

クライエント「自分の気持ちを、大切にしたいです。ドキドキする人を、ちゃんと探したい」

クライエントは、はっきりとした口調で言った。

ダイキ「素晴らしいですね。その気持ち、大切にしてください」

別れ際に


カウンセリングの終わりが近づき、クライエントは立ち上がった。

クライエント「今日は、本当にありがとうございました」

ダイキ「こちらこそ、ありがとうございました」

クライエント「なんか...すごくスッキリしました。これからは、もっと自分らしく婚活できそうです」

ダイキ「良かったです。また何かあったら、いつでもいらしてくださいね」

クライエント「はい!」

クライエントは、明るい笑顔でカウンセリングルームを出て行った。


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🙋 このブログを書いている人について
だいき|産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
会社員時代、職場の人間関係でメンタルが限界に。「このままではまずい」と一念発起し、コミュニケーションを学び直した経験が、産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの資格取得につながりました。
恋愛・婚活でも7年間で88人とデートを重ねながら、うまくいかない時期が長く続きました。その苦しさを知っているからこそ、脳科学・進化心理学・愛着理論といった知識を「自分ごと」として学び続けてきました。
キャリアブレイクコミュニティでは160回以上のワークショップを主催。さまざまな悩みや状況を持つ方と向き合い続けてきた経験が、相談の土台になっています。
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