気楽に読んでください、呼吸のおはなし ～その７４～

今日もお読みくださり誠にありがとうございます。

益々ブログタイトルとの乖離が激しい内容となって来ております。

昨日から即興に関することを書いています。

今日は読者離れを覚悟で、書くコラージュをやってみます。

突然ですが、僕も歌を歌います。それで、残念ながら今から言うような経験はこれまでに一度も無いのですが、もしこれからお伝えするようなシチュエーションが本当にあったなら、僕はその時が最も上手く歌える時だと自信を持って言えます。

それは、街を歩いていたら突然見知らぬ誰かから、｢あのー、これでちょっと一曲やってもらえませんか｣とギターを手渡された時。

僕は、格闘技や武道の経験は無く、憧れだけは抱く身なので何も偉そうなことを言う積もりは無いのですが、空手などの型に付いては常々疑問を抱いています。

それはどういうことかと言いますと、あの型というのは、その多彩なバリエーションとは、あらゆる場面を想定して、考え得る状況の数だけ網羅しようとしたマニュアルなのか、それとももっと違う深淵な意味合いを備えたものなのか、ということです。

体がひとりでに動いてしまう位に練り込んでおけば、いざという時、その場に臨んだ時にも体が勝手に動くようになる、その為の型、きっとそこは、そうなのかなとは思います。

でも、もしもあの型というものがそこまでの意味合いだけで終わるならちょっと自分の憧れとは違ってしまうのです。

受験勉強で色んな問題をとにかく数をこなしておけ、というのと似た意味があって、しかもそれだけだったらと思うとがっかりしてしまうのです。

それだったら、戦いという場面における敵から被るあらゆる危険には打ち勝ったり時には逃げたりも出来るでしょうが、僕が型に夢を見るのは、例えばその闘ってる場面で、急に考えられないような土砂崩れや落石が発生した場合に、敵もろとも巻き込まれて一巻の終わりになってしまうのか、それともそれすら回避できる感覚を磨く意味を持つのか、といったことです。

格闘技と言えば、今ではストリートファイトに近いような凄惨なものまでが市民権を得ていますが、あのようなリアルファイトの先駆けとなった有名な試合があります。

それは、1976(昭和51)年に行われた、アントニオ猪木対モハメド・アリの格闘技世界一決定戦と銘打たれた一戦です。

お遊び程度のエキシビションの積もりで話を進めていたアリ側と、ガチンコの真剣勝負で本気でアリに勝とうとしていた猪木陣営の思惑が見事なまでのミスマッチとなり、結果有名な、猪木は殆どの時間マット上に寝転んで蹴りを繰り出し、アリはそれを避けるという、所謂 " 猪木アリ状態 " が必然的に生まれ、世紀の凡戦と揶揄される結果となったあの試合です。

しかしこの試合は年月を経る程にその価値が見出されるようになり、" 真剣勝負とはこのような試合を指す " とまで近年言われるようになって、再評価、評価の掌返しを起こさせました。

とにかく " その場 " に身を投じ感性のままに表現してみる時、それが余りに本質的過ぎて、出来合いの予定調和に慣らされた周囲の眼からは理解されないことも往々にしてある、それを織り込み済みでやるのが即興の極意です。

ボブ・ディランが何年か前にノーベル賞を受賞しました。後々彼とも共演することになるアル・クーパーというミュージシャンはデビューの頃のディランに関して面白い思い出を語っています。

｢あのディランのダミ声を聞いた自分の母親が物凄い嫌悪感を抱いているのを見て、『こいつは絶対売れる』と思った｣と。

そしてこれは、期待を裏切ることすら恐れない、厭わない、そんな意味合いを更に強調するようなおまけです。これもディランのエピソードからですが、あのダミ声で叫ぶような歌い方、そう、アル・クーパーの母親が嫌悪した、時代の先を行くそれまでに無かったような鮮烈な歌声と歌い方ですが、実はあれ、ディランの若き日のアイドルであり先輩フォークシンガーである、ランブリン・ジャック・エリオットという人の真似なんだそうです。

決して元々のディランオリジナルの表現様式では無かったという、多重性時限装置付き期待の裏切りを見事にやってのけたディラン。

と言うよりも、｢聞き手が勝手にそう思ってただけだろう。俺はハナッから俺の好きな事を俺の思ったようにやってただけのこと｣という彼の声が聞こえて来そうで痛快です。

自分が今、本当にやりたいことって何でしょう。

本気で、これだけは何があっても譲れないことってどんなことでしょう。

心と体が揃って気持ちがいい瞬間とは、どんな時なのでしょう。

それまでに無かったものを生み出し体現すること。

即興の記事を書いてみてその繋がりで浮上してきた幾つかの思いをコラージュのように書いてみました。

つづく