気楽に読んでください、呼吸のおはなし ~その73~

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本日もお読みくださり誠にありがとうございます。
昨日の文を自分で読み返してみて、余りの難解さに今日その注釈を入れようかとも思ったのですが、蟻地獄にはまりそうなのでやめときます。
その代わりに、即興や自由に関して少し書いてみようかと思います。
即興とは、きっと皆さんご存知かと思いますが、事前の取り決めや約束事無く物事を進めて行くことです。インプロヴィゼーションと言われることもありまして、音楽でもお芝居でも即興演奏、即興芝居というのがあります。
この即興の世界ですが、突き抜けて目覚めてしまえば病み付きになること間違い無しの楽しさなのですが、最初は苦手な人が殆どです。
全くの丸腰の状態で、舞台装置も伴奏も何もない所で、何でもいいからやってみてくださいと言われて間髪入れず即座に何か出来る人は少ないと思います。
一瞬の躊躇い、イメージを思い描く間がそこに介在してしまうのが自然で普通の反応ですから。
そこでこんな遊びから初めてみるんです。
例えば目の前のパソコンのキーボード、或いはスマホ、これを、声のトーンだけで表現しようとしてみてください。
一瞬たりとも考えてはいけません(笑)
パッと見て適当に出した声が一番いいのです。声じゃなく、唾を飲み込んだりしたら、その音でもいいですし、でもこれは続け難いですけどね。
それでその声を出し続けて、声のトーンだけでは表し切れない何かを感じたならば、今度はそこにリズムを加えてみます。勿論言葉では無いけれども色んな子音、ノイズのような音、母音も色々と変わっても構いません。
そんな風に一見何の脈絡も無いような事を続けていると、きっと自然にメロディーのような音程の変化が起きているのにも気付くようになって来ます。
そしてこれは、ただ単にPCやスマホの存在を音で表しているのみならず、あなたにとってのPCでありスマホであり、あなたと対象物との関係性を表していることにもなっていたりします。
これは、即興という世界の入り口の、無数にある扉のほんの一例です。
きっかけとなる対象物は、皆さんの身の周りにある人物生物事物事象の全て、皆さん自身の心や体に息づくものも全てです。
自分の手相をまじまじと眺めながらいつの間にかまるでテーマ曲のようなメロディー、今生まれたばかりの筈なのに、何処かで聞いたことがあるような懐かしさを持った、不思議な旋律を口ずさんでたりするかも知れません。
自分の本当の声や表現を見失った人に、この即興遊びは想像以上の前向きな効果をもたらしてくれます。
そもそも同じ声は二度とは出せないし、同じ歌は二度とは歌えない。過去は帰って来ない。こんな当たり前のことを、実は人は大真面目に忘れてしまっていることが多いのです。
例えば科捜研の女が使うような音声解析装置を駆使してある人の声や歌を複数回録音し比較して、仮に数値が全く同じであったとしても、その二つは別のものです。一つは一回目に録音したもの、もう一つは二回目やそれ以降に録ったものです。
版画の例の方がもっと分かり易いですね。全く同じ作者の同じタイトルの版画を見ると、シリアルナンバーというのが附されていて、同じ図柄でも一枚一枚が全くの別物です。
誰か、同じ歌を10回も20回も繰り返し歌うコンサートをやってくれるとこの意味がより分かるかと思うのですが。
この世の営みで、即興で無いもの、インプロヴィゼーションでは無いものなど一つも無いのです。
実は、実はというか、本当に当たり前過ぎる程の当たり前で恐縮ですが、生きてこれから起こり得る全ての未来が即興、インプロヴィゼーションです。
それが、大体予定通りにスケジュールが進行し続けるとそうでは無いような錯覚に陥るだけで、ちょっと交通機関がストップしたりするとドミノ式に色々と変更を余儀無くされて、慌てて対応しなければならなくなるでしょう。
もしも声に不調を感じて、その声が元に戻らなければ表現出来ないなどと感じてしまった時に、この事は少々厳しめでも、本当の自由がそこにあることに気付かせてもくれます。
大事なのは声の好不調よりも、表現したい心や魂、そっちの方の筈ですよね。
今出来ることをやるしか無いのです、もしそれが、どうしても今伝えておきたいことであるならば。
人前に立った時、勝負に出た時、起こり得るハプニングも全てを味方にしてしまう力を人は皆備え持っています。
歌い慣れた定番のような一曲も、即興で出て来た再現不可能な不思議な旋律も、どちらもたった今一回きりの偶然に起こった音と音との繋がりに過ぎません。
即興の意味を体で理解したなら、どんなにこれまでに繰り返し歌い込んだ歌も、この次からは、その度毎に全く新しい別の歌のように歌える自分がそこには居る筈です。
こうして得た自由、気付かされた感覚は本当に素晴らしく楽しいものです。
こんなことを書いていたら、久し振りに即興のワークショップがやりたくなってしまいました。

つづく
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