明日への一歩を焦らないための「正しいひきこもり方」

明日への一歩を焦らないための「正しいひきこもり方」

記事
コラム
外に出られないという状態は、単に体を休めているだけの時間ではありません。体が思うように動かず、気持ちが深く沈んでしまうのは、心と体が限界を迎えているというSOSの表れです。しかし、ただ家の中に閉じこもっているだけで、本当に脳や心が休まっているのかというと、甚だ疑問が残ります。焦りや不安、自己嫌悪が頭を巡り、脳はかえって疲弊していることも少なくないからです。

そこで、心と体を本当の意味で回復させるための、「正しいひきこもり方」をご紹介したいと思います。

まず、何よりも最初に行っていただきたいのが、精神科の訪問診療を行っている心療内科医への受診です。家から出られない段階だからこそ、専門医に自宅まで来てもらうことが最優先であり、不可欠なステップとなります。

次に、安心して治療を続けるための公的なサポートとして、「自立支援医療(精神通院医療)」の制度を申し込みましょう。ご本人が動くことが難しくても、ご家族などの代理人による手続きが可能ですので、まずは医療費の負担を減らし、安心して療養できる環境を整えます。

そして、日々の生活を支えるために、訪問看護の制度を積極的に活用してみてください。専門の看護師と相談しながら、まずは「換気」、次に「洗濯」、それから「掃除」や「ゴミ捨て」といった具合に、生活の優先順位を組み立てていきます。自分ができることとサポートしてもらうことのバランスを見極めながら、少しずつ環境を整えていくことができます。

また、部屋の環境を整えることと同時に、自分自身の身体を清潔に保つことも非常に重要です。

たとえば、「髭を剃る」という行為です。

外に出ない日々が続くと、身だしなみを整える気力が湧かないのは自然なことです。しかし、髭を剃らずに伸ばしたままにしておくと、思わぬ健康リスクにつながることがあります。動かない生活のなかでも、手や物を介して、髭にウイルスなどの病原菌が付着してしまう可能性は否定できません。それが原因で何らかの病気に罹患してしまうリスクを避けるためにも、髭を剃り、顔周りを清潔に保つことは、心身の健康を守る大切な自己防衛になります。鏡に向かって髭を剃るという行為そのものが、沈んだ気持ちにささやかな区切りをつけ、生活のリズムを取り戻すきっかけにもなるでしょう。

そして、こうした歩みを進める上で、ご家族の皆様の力が何よりも大きな支えとなります。

ご本人が動けないとき、ご家族だけで問題を抱え込む必要はありません。世の中には、当事者や家族を支えるための様々な行政サービスが存在します。ぜひ、社会福祉協議会、保健所、健康福祉センターなどの窓口を頼ってください。

これらは、福祉や健康に関する相談を広く受け付けている場所です。ご本人が相談に行けなくても、ご家族が現状を伝えることで、利用できる支援や適切な専門機関へと繋いでもらうことができます。制度の申請手続きのサポートや、今後の生活設計へのアドバイスなど、患者さんのためにできる具体的なアプローチを一緒に考えてくれる心強い味方です。行政サービスを活用するための情報収集や窓口への相談を、ぜひ患者さんの代わりに一歩踏み出して行ってあげてください。

外に出られない時期であっても、決して社会や医療から孤立する必要はありません。適切な制度や専門家の力を借り、身の回りの衛生を保ちながら、本当の意味での休養と少しずつの前進を、家族全員で歩んでいきましょう。

                        沙門蒼俊  合掌
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