「個別支援計画は作ってあります」
そう答える事業所経営者に、一つ聞いてみたいことがあります。
「それ、いつ作ったものですか?」
就労継続支援B型の個別支援計画は、6ヶ月ごとの見直し・更新が義務づけられています。利用者の状況が大きく変わったときには、その都度更新することが求められています。
ところが実際の現場では、「同じ計画を1〜2年使い回している」事業所が珍しくありません。
2026年に入ってから、この「形骸化した個別支援計画」が原因で指定取消処分を受けた事業所が複数出ています。今日は、なぜ形骸化が起きるのか・どう防ぐかを正直にお伝えします。
■ なぜ個別支援計画は形骸化するのか
私が3拠点のB型を経営してきて感じた原因は、主に3つです。
① サービス管理責任者が「書類作成専任」になっている
本来、サビ管は利用者と直接関わりながら計画を作るべき役割です。でも実際の現場では「とりあえず計画を完成させること」が目的になってしまい、利用者の変化を見ていない形式的な計画になることがあります。
② 「利用者が変わっていないから更新不要」という誤解
利用者の生活状況、体調、就労への意欲——これらは静止することがありません。「目立った変化がない」と感じていても、実際には少しずつ変わっています。6ヶ月が経過したら、変化があってもなくても更新が必要です。
③ 更新のリマインダーがない
利用者が多い事業所ほど、誰の計画があと何ヶ月で期限切れか、誰も管理していないことがあります。後回しにしているうちに1年が経過——という話は珍しくありません。
■ 形骸化を防ぐカギは「アセスメント」にある
ここで一つ、根本的な話をします。
個別支援計画が形骸化する本当の原因は「更新を忘れる」ことよりも、
「アセスメントをしていない」ことにあります。
アセスメントとは、利用者の生活状況・障害特性・本人の希望・家族の希望・体調・対人関係・就労意欲などを多角的に把握することです。計画はアセスメントの結果を形にしたものであり、逆に言えばアセスメントなしに書いた計画はどんなに見た目が整っていても「その人の実態」を映していません。
現場でよくある光景を正直に言います。
サビ管が「利用者の状況をヒアリングする時間が取れないまま」計画を更新している——これがアセスメント形式化の実態です。「特に変化なし」という一行でアセスメント欄を埋めてしまっているケースが多く、結果として計画も「特に変化なし」の内容になり続けます。
6ヶ月ごとの計画更新は「書類を書き直す作業」ではありません。「この半年で利用者に何が変わったか・変わらなかったか」を利用者本人・家族・支援員の三者で改めて確認する、アセスメントの機会です。
具体的に何を確認するかというと:
・本人の「今の気持ち」:来ることへの意欲は上がっているか・下がっているか
・生活状況の変化:家庭環境・体調・服薬状況
・就労に向けた変化:できるようになったこと・まだ難しいこと
・関係性の変化:他の利用者・スタッフとのかかわり
・本人・家族の「今の希望」:6ヶ月前と変わっていないか
この5点を6ヶ月ごとに確認するだけで、計画は自然と「生きた内容」になります。アセスメントがあってはじめて計画に意味が生まれます。
■ 形骸化した計画の3つのリスク
① 運営指導で即指摘・減算確定
個別支援計画の未作成・形骸化は、運営指導で最も指摘されやすい書類不備の一つです。未作成減算(月額報酬の30%減)が適用されると、経営への打撃は相当なものになります。
② 監査に発展するリスク
運営指導で複数の書類不備が見つかると、「監査」に切り替えられる可能性があります。2026年に実際に複数の自治体でこのルートによる処分が出ています。
③ 利用者・家族との信頼関係の損傷
書類上の問題だけでなく、「計画が形骸化している=利用者のことを見ていない」という事実は、もし知られれば信頼関係に影響します。計画は「証拠書類」であると同時に「支援者が利用者を見ていた記録」でもあります。
■ 今日からできる形骸化防止の仕組み
① 個別支援計画の一覧表を作る
利用者名・計画作成日・次回更新予定日を一覧化します。ExcelでもGoogleスプレッドシートでも構いません。これを月1回確認する習慣にするだけで「気づかなかった」が防げます。
② サビ管に「月次報告」を求める
毎月1回、サビ管から「今月の計画更新予定者リストと更新完了確認」を報告してもらう習慣を作ります。経営者が確認する仕組みを作ることで、後回しにされにくくなります。
③ 運営指導を想定した「自己点検」を年2回行う
年1〜2回、チェックリストで自己点検する習慣を持ちます。個別支援計画の更新状況を必ずその中に入れることで、「来てから慌てる」状態を防げます。
これらの仕組みは難しくありません。今日からでも始められます。
「自分の事業所の計画、最後に更新したのはいつだろう?」と感じたなら、まず一覧表を作ることから始めてみてください。
何かご相談があれば、まずは話を聞かせてください。「書類を見てほしい」「何から手をつければいいか分からない」という段階でも大歓迎です。
#就労継続支援B型 #障がい福祉 #福祉経営 #個別支援計画 #運営指導対策 #書類整備 #サービス管理責任者 #めだか福祉サポート