要望を無視するCMクリエイターたち

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前回のブログで…
『高いCM制作費を使い、一流と言われるディレクター、クリエイターが作ったCMでも、失敗作はあります。どんな作品がそれにあたるのか?次回のブログでお話しいたします』
…と書きました。今回はその続きです。

「ハズキルーペ」ご存知ですよね?渡辺謙さん、菊川怜さん、舘ひろしさんなどが出演したCMが話題になりました。
そのハズキルーペ販売会社の会長である松村謙三さんの著書「自分の頭で考える」(角川書店)の中に、TVCM制作にまつわる非常に面白いエピソードが書かれています。
文章量が非常に多いので、何回かに分けてご紹介します。TVCMに限らず、YouTubeやTikTokなどのwebCM、さらに企業や商品サービスのPR動画に関わる方は必見です。クライアントの本音がぶちまけられていますから。
以下、著書からの引用です。

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渡辺謙さんが考えた「世の中の文字は小さすぎて読めない!」という”怒り”をテーマにしたアイデアでいこうと決めて、大手広告代理店にCMクリエイターの依頼をしました。
大手広告代理店は、多数の大手メーカーのCMを手掛けている有力クリエイターを連れてきました。

パソコンで、それまでに制作してきたCMのプレゼンをしてくれましたが、疑問に思ったのは、風景や景色をかなりの尺(秒数)見せるものばかりだったこと。商品は最後に少しだけ見せる、何のCMかもわからない、いわゆるイメージCMが多かったことでした。

不安に思った私は、そのCMクリエイターに対して、会社の会議室に飾ってある絵(文化功労者・東京藝術大学名誉教授・絹谷幸二さんの作品)を指差して、「この絵を見てどう思いますか?」と尋ねてみたところ、「僕は、絵に興味がないので」との返事がきました。
「映画はどうですか?」と聞くと、「映画もあまり見ないです」との返答。
「CMクリエイターなのに、絵画も映画も見ないでクリエイティブな作品が作れるのですか。不思議ですね」と言ってみても、無反応でした。

内心かなり不安になったものの、横にいた担当役員が「ぜひ彼にCM案の絵コンテをいくつか提案させてください」と言うので、「渡辺謙さんが提示してくれた『怒り』をテーマにした案を持ってきてください」とひとまず依頼してみることにしました。

一週間が経ち、2つのCM案を持ってきました。
恐れていたとおり、ひとつの案は、スイスの山並みをずっと見せるもの。もうひとつの案は、ミラノ駅構内を上からずっと見せるシーンから始まるものです。景色を見せるためにCMを作ってもらうわけではありません。

このCMには100億円を投じる予定だったのだから、60秒CMの5秒を見せるだけで9億円が飛んでしまう。それでは空に向かって鉄砲を撃つのと同じではないか!まったくどうかしています。
「怒り」をテーマにとお願いしたのに、まったく「怒り」が入っていません。
なぜスポンサーの意向を無視して、自分勝手なモノを作ってくるのか?

「あなたには頼めない」、と言ったら帰っていきました。
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今回はここまでです。

「商品を売るためのCM」のはずなのに、「自分が作りたいCMを作る」という典型的な悪いパターンですね。私もTVCM制作会社にいた頃、こういうディレクターがいたのでよくわかります。

この続きは、また次回のブログでご紹介しますね!




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