固定費について考える

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岸田首相が、賃上げ環境のさらなる整備に向け、賃金を引き上げた企業に対する法人税の優遇措置を拡充する方針を示しました。「分配強化」ですね。そのためには、「成長強化」のための施策がセットです。企業収益を高めるための規制緩和も今後期待されます。賃上げ施策については、実は今年4月からすでに実行されています(賃上げに連動した法人税優遇)。現在は給与支給の総額を対象にしていますが、岸田首相は「一人ひとり」を強調していて、今後は従業員全員に恩恵が行き届く「基本給」がターゲットになりそうです。一方財界は、「賃金引き上げの負担>法人税軽減」として、現行制度の利用はあまり進んでいません。

経営者は賃上げ(人件費増)には慎重です。あたりまえですね。人件費は固定費です。感染症不安で中小企業が経営危機に瀕していますが、多くの原因が固定費負担。主に従業員の給料と家賃です。私も中小企業診断士なので、資格更新のために、たまに中小企業さんの経営診断を実施します。損益分岐点は、従業員の採用で大きく変動する。正確には「作業にかかる人的コスト」は、変動費に入る場合と、固定費に入る場合があります。前者は外部発注です。業務委託とか下請けとか。後者は自社従業員の雇用。業務委託は外注先企業の利益が乗るので高めになりますが、雇用も社会保険料や教育費用などがかかる。日本ではよほどのことがないと解雇できないので、労務リスクもあります。最近は、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)が活発になって、従来自社でやっていた仕事も外出しする流れが加速しています。固定費の変動費化が進んでいるのです。

「固定費を上げろ」という力(政府)と、「固定費を下げろ」という力(経営者)のせめぎ合いの中で、生活者(多くは会社従業員)は振り回されそうです。結局「成長なくして分配なし」というのはそのとおりで、政府も企業も成長戦略をしっかり描くことが重要ですね。あたりまえの結論ですが、これが本質だと思います。

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