―子どもを一人にできない家庭の現実―
不登校になると、変化するのは子どもの生活だけではありません。
親の働き方も、家庭の生活も、大きく変わります。
特に小学校低学年の不登校では、その影響は深刻です。
中学生や高校生であれば、子どもが短時間一人で家にいられる場合もあります。
しかし、小学校1年生、2年生、3年生くらいの子どもが学校に行けなくなったとき、親は簡単に家を空けられません。
朝、子どもが泣く。
お腹が痛いと言う。
玄関で動けなくなる。
学校には行けない。
けれど、親は仕事に行かなければならない。
このとき、親は非常に厳しい選択を迫られます。
子どもを一人で留守番させるのか。
仕事を休むのか。
遅刻して出勤するのか。
祖父母に頼るのか。
職場に事情を話すのか。
場合によっては、退職を考えざるを得ないこともあります。
不登校を理由に、親が離職せざるを得なかったというケースもあります。
とくに、ひとり親家庭ではさらに切実です。
働かなければ生活が成り立たない。
しかし、子どもを一人にはできない。
貯金を切り崩して生活する人もいます。
副業で何とか収入を補う人もいます。
仕事を辞めずに済むよう、テレワークに切り替える人もいます。
介護休暇などの制度を利用しながら、学校外の居場所を探す人もいます。
ここで大切なのは、不登校を「家庭の中だけの問題」と見ないことです。
不登校は、子どもの心の問題であると同時に、親の就労、収入、生活設計に直結する問題です。
子どもが学校に行けなくなると、親も社会生活を続けにくくなる。
この現実を、もっと社会全体で共有する必要があります。
そしてもう一つ大切なのは、親が「不登校を受け入れると、もう働けなくなる」と思い込まないことです。
実際には、逆の場合もあります。
子どもを無理に学校へ行かせようとし続けると、子どもの状態が悪化し、親はますます家を離れられなくなります。
毎朝、泣く。
体調を崩す。
暴れる。
不眠になる。
チックや脱毛など、目に見える不調が出る。
こうなると、親は仕事どころではなくなります。
しかし、早い段階で「今は無理に学校へ行かせない」と決めると、家庭の緊張が少し下がることがあります。
子どもの体調が安定する。
表情が少し和らぐ。
家の中で過ごせるようになる。
そのうえで、親は現実的な体制を整えやすくなります。
祖父母に頼る。
会社に相談する。
在宅勤務を検討する。
学校と連携する。
外部支援を探す。
つまり、不登校を受け入れることは、親が働くことをあきらめることではありません。
親が働き続けるためにも、まず子どもの状態を安定させる必要があるのです。
親が壊れてしまえば、子どもを支えることはできません。
子どもを守るためには、親の生活も守られなければなりません。
私は、不登校支援には「親の働き方支援」が不可欠だと思っています。
学校、行政、職場、地域、親族、民間支援。
いろいろな力を借りながら、親子が生活を続けられる形を作っていく。
不登校は、親の努力だけで抱え込む問題ではありません。
家庭を孤立させないこと。
親を離職に追い込まないこと。
子どもだけでなく、親の生活も守ること。
これが、これからの不登校支援に必要な視点だと思います。