学校へ行けなくなった生徒⑤

学校へ行けなくなった生徒⑤

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コラム

転校生の辞書


アミルは、別の国から来た。

日本語は少し分かった。

でも、教室の日本語は速かった。

先生の日本語。

友達の日本語。

プリントの日本語。

冗談の日本語。

注意の日本語。

全部、少しずつ違った。

アミルは辞書を持っていた。

けれど、辞書には載っていない言葉が多かった。

「空気読めよ」

「ノリ悪い」

「普通そうするでしょ」

アミルは、それらを調べようとした。

辞書は何も答えなかった。

ある日、給食当番のやり方を間違えた。

誰かが言った。

「日本ではそうじゃないよ」

アミルは思った。

自分は、どこの「普通」にも入れない。

次の日、学校を休んだ。

母親は言った。

「勉強が難しいの?」

アミルは首を振った。

難しかったのは、言葉ではなく、言葉の後ろにある見えない決まりだった。
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