「鬼滅超え」が期待される『呪術廻戦』。その凄まじい人気の理由

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「週刊少年ジャンプ」で連載中の漫画『呪術廻戦』の人気が凄まじい。本作は、高校生の虎杖悠仁(いたどり ゆうじ)が“呪いの王”の魂を身に宿してしまったことをきっかけに、呪いとそれを祓う呪術師との戦いに巻き込まれていくダークファンタジーだ。
今年の10月2日にアニメ化がスタートしてから、毎週放送されるたびにTwitterでは関連ワードがトレンド入りし、Netflixのランキングでも連日のように1位を獲得。コミックのシリーズ累計発行部数は1500万部(デジタル版含む)に達している。ここ最近、大手書店でも入手困難が続いており、ネットでは高値で転売される事態も起こっているという。
『呪術廻戦』はアニメ放送開始のタイミングに限って言えば、累計発行部数が『鬼滅の刃』を超えている。『鬼滅の刃』はアニメの放送が開始した2019年の4月時点でシリーズ累計発行部数が350万部程度だったが、『呪術廻戦』はアニメ放送開始の10月時点で850万部。実に倍以上だったのだ。
「鬼滅超え」の人気が期待される本作。いったいなぜこれほどの人気を得ているのか、YouTubeで『呪術廻戦』と『約束のネバーランド』に関する考察チャンネルを運営するクロさんに聞いた。
『呪術廻戦』が持つ2つの魅力
『呪術廻戦』の魅力は、大きく分けて2つあるとクロさんはいう。
「まず、ジャンプの過去作へのオマージュが詰まっているんです。例えば、絵のタッチや主人公のキャラ設定は『BLEACH』に似ており、男性の師匠に男2人・女1人の弟子がいるのは『NARUTO』と同じ。呪術の技の複雑さも『HUNTER×HUNTER』に通じるものがあります。
だから、これらの作品が好きな20代後半から40代の男性たちを中心に刺さっているんです。過去作から影響を受けていることは、作者の芥見下々さん自身も公言しています。28歳の彼が、これまでのジャンプ作品の要素を現代的に昇華させているのが『呪術廻戦』だと言えます」(クロさん、以下同)
そして、もう一つの魅力は、「難解さ」。
「『呪術廻戦』に登場する“技”は仏教や神話、物理学的な法則からインスピレーションを得たものなど、『鬼滅の刃』のものもよりずっと複雑です。伏線も多いので、アニメや本誌で気になったところを知りたくてコミックを読み込む、という人も少なくありません。解説・考察のしがいがあることから、YouTubeの解説動画も他の作品より多い印象です」
ふつう、難解であれば読者は離れていくと思うが、その難解さゆえに解説・考察の動画やサイトが多数つくられ、それによってまたファンが増えていく現象も起きているという。
アニメと原作の相乗効果
ただ、作品の魅力だけではここまでコミックの売上は伸びなかっただろうとクロさんは考察する。
「鬼滅ブームによって、ふだんアニメを見ない、漫画を読まない層にもアニメの視聴やコミック購入の習慣が根づいたことが大きいと思います。
また『鬼滅の刃』では、アニメで人気に火がつき、コロナ禍のストリーミング視聴でファン層がさらに広がったところでジャンプ本誌の連載が佳境に入り、連載終了後に鬼滅ロスが発生している中で映画が公開される、という美しい流れがありましたが、この時の知見を活かして、『呪術廻戦』でも本誌、コミック、アニメのあいだで相乗効果を生み出す仕掛けをしているように見えます」
その“仕掛け”とは?
「例えば、アニメとジャンプ本誌の展開のリンクです。呪術師の釘崎野薔薇がアニメに初登場した時に幼い頃のエピソードが描かれていたのですが、その直後に発売された本誌で野薔薇の過去が明かされたり、アニメで呪術師の東堂葵が初登場した直後の本誌で葵の戦いがクライマックスを迎えたりと、アニメと本誌の盛り上がりを連動させているんです。
ジャンプは通常、月曜日に発売されるのですが、たまに土曜日に発売されることがある。アニメの放送が金曜の深夜なので、実質同じ日ですよね。そうしたアニメ・本誌同日の日にリンクをさせていました」
こうした仕掛けにより、本誌の読者はアニメを、アニメの視聴者は原作により関心をもつようになっているという。
アニメオリジナルの面白さも
また、アニメオリジナルの表現も原作ファンを楽しませているようだ。
「例えば、花御(はなみ)という呪いが具現化した『呪霊』のキャラクターがいるんですが、そのキャラクターが話す言葉は原作では文字化けのように書かれていて、何を言っているかわからないんです。ただ、その場にいる人は花御の言っていることはわかる、という設定。
それをアニメでどう表現するのかと思ったら、声が雑音のような音になっていました。ああ、こんな感じかと思ったら、誰かが声優のセリフが逆再生されていることに気づいて、そのことが瞬く間にSNSで拡散され盛り上がりました」
“声”といえば、自らの言葉が呪いの武器となる「呪言師」の狗巻棘(いぬまき とげ)がアニメに登場した際も大きな反響があった。
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「動くな」と言った時の狗巻棘〔PHOTO〕アニメ『呪術廻戦』公式Twitterより
「狗巻はイケメンキャラで女性人気が高く、その声優の内山昴輝さんもイケボで女性に人気なんです。ふだん、狗巻は言葉に呪いがかからないよう、『シャケ』『おかか』などおにぎりの具の名称でしか会話しないのですが、『動くな』と呪いを発動したときの声がイケボすぎてSNSで大盛り上がりでした。
イケメンキャラには五条悟という“最強の呪術師”もいます。彼はふだん目を隠しているんですが、初めて目隠しをとった時もその顔の美しさでSNSでは五条祭りが起こりました。五条悟の声優も女性から人気の中村悠一さんです」
上記の時、いずれも「#狗巻棘」「#五条悟」がTwitterでトレンド入りしている。イケメンキャラを人気のイケボ声優が演じることで、アニメ化を機に女性人気も高まっているようだ。
オープニングの映像にも仕掛けが
さらに、オープニングの映像にも視聴者の興味を惹きつける仕掛けがされているという。
「オープニングの映像の最後の方に、登場人物たちが木陰でくつろぐシーンがあるんですが、登場するキャラクターやその位置がたびたび変わるんです。それは誰が死ぬかのヒントなのではないかと、ファンのあいだではいろいろな予想が展開されています」
こうしたオープニン映像ひとつでも、ファンコミュニティを活性化させているのが凄い。
オープニングといえば、『鬼滅の刃』ではオープニング曲であるLiSAの『紅蓮華』が作品を多いに盛り上げていたが、『呪術廻戦』でもテーマ曲にこだわりを見せている。
「オープニング曲の『廻廻奇譚』を歌うのは、米津玄師と同じくボカロP出身のシンガーソングライターで、ネットを中心に熱烈な支持を受けているEveくんです。彼を起用したことで、作品のファン層は広がっているのではないでしょうか。エンディング曲もファンク&ヒップホップバンドのALIが手掛けていて、アニソンとは思えないスタイリッシュさです」
“ネクスト鬼滅”のジャンプアニメだからこそ、制作陣も力が入っているのだろう。アニメ制作を担当しているのも、映画『この世界の片隅に』やアニメ『ユーリ!!! on ICE』『ドロヘドロ』などヒット作を数多く手掛けているMAPPAだ(ちなみに、現在ジャンプで人気の漫画『チェンソーマン』のアニメ化もMAPPAが担当することが先日発表された)。
『鬼滅の刃』のブームを下地に、アニメと原作の相乗効果で多くのファンを獲得している『呪術廻戦』。来年1月のアニメ2期の放送で人気がどこまで上昇するのか注目だ。
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