怒りを抑えられない人は前頭葉が未発達

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フィニアスゲージは事故により太い鉄の棒で頭部を貫かれ、頭の左前頭葉を損傷しました。(画像はwikipediaより)
脳神経科学では有名な事例で、彼は事故前は真摯な人格だったのが事故後は一変して切れやすい衝動的な人物になったと言われてます。
前頭葉と怒りなどの衝動性には深い関わりがあるのでは、という人間における生きた事例となりました。




不思議に思うことがあります。
一度怒ったあと、それなりに時間が立っているのに再度同じことで怒りをあらわにする人がたまにいます。え、まだ怒ってるの?!とびっくりするくらい間隔が空いているのに怒る。

あおり運転の運転手も高速道路上にも関わらず永遠にピッタリと張り付いてマークし続ける執念にはむしろ何がそうさせているのか不思議に思うことがあります。



これには脳機能で説明ができます。



人は全て脳内の電気信号のONOFFが大量にピュンピュン飛び交うことで、それまでの経験や知識、特性などによってその人が一番やりたいと思う行動を取ることになります。
行動とはモチベーションであり、モチベーションに不可欠なのはノルアドレナリンドーパミンという神経伝達物質です。



前回は「扁桃体」について学びました。



ノルアドレナリンによって体内の血管を収縮させ、効率よく血を巡らせる戦うに特化した機能があります。

収縮すると勢いよく血が流れるので全身に血が巡り体を効率よく動かすことができます。結果、顔が真っ赤になったり瞳孔が開いたり血圧が上昇します。

戦闘態勢を整えさせ敵と戦うための神経伝達物質です。猫が目をまん丸にしてお尻をふりふりしている時はまさに良い例ですね。



ノルアドレナリンはやがてアドレナリンになり、闘争か逃走のうちたたかうことを選んだ人の脳はアドレナリンによって相手に勝つために、ちょっとした傷すら気にならないもの凄い集中力を発揮します。


そこに合わせて扁桃体はノルアドレナリンの興奮状態とともに敵に対して恐怖心を思い起こさせます。
恐怖を覚えたら戦えなくなるのでは、というのはごもっともですが闘争か逃走を瞬時に判断するということは生存率を上げるということです。

つまりなんとか勝てそうな相手に対してはその度に不安になっていたら勝てるものも勝てません。
相手に対して怒りを募らせ、体内の血流を良くするためにノルアドレナリンを流す。負けそうな状況になったら瞬時に逃げられるように切り替え逃げるための状況を分析する。

扁桃体と怒りの感情は切っても切り離すことはできない存在です。



ノルアドレナリンは血流が良くなるため脳も活性化します。
集中力が上がるということはそれだけ戦いに集中することができるからです。

もしあなたが誰かと武器を持って戦っていたとしたら、突然スマホが鳴って「あ、メールの着信だ。見なきゃ」とはならないはずです。
山登りの最中に熊の姿が遠くに見えた時に、「景色がいいなぁ。よし写真を撮ろう」とはならないはずです。
熊が見えた瞬間に血の気が引いて、ドキドキと胸が鳴り真っ先に逃げる生存方法を模索するためだけに集中するはずです。

生物はこのように神経伝達物質(ホルモン)による取捨選択を自動でできるように作られています。




人間の脳は大まかに3つに分かれているという話は前回しましたが、優先順位は脳の奥の方から順番に選択されていきます。


扁桃体は2番目に強い優先順位となっており、良い印象の相手、敵となりそうな相手を見た瞬間に判断できるようになっています。
会社の同僚で一度嫌いになった相手が近づいてきた瞬間に意識がそちらに向くのもこのためです。

嫌いな相手の情報を集めたくなくても自然と入ってくるのも、戦いに備えて分析をする必要があるからです。どうすれば相手の弱点をつけるか、会話でどう立ち向かえば相手にマウントが取れるのか。

過去の成功体験、失敗体験を扁桃体の近くにある海馬から情報をもらい扁桃体による情動をノルアドレナリンに変えて脳にインプットしていくというのは、勉強が楽しくて仕方がないという人と変わりはありません。

成功体験により相手を打ち負かした経験はドーパミンを誘発してもっと相手を打ち負かしたいという衝動になりモチベーションになります。




前頭葉による抑制



冒頭のフィニアスゲージという人は事故によって左前頭葉を損傷しました。
その結果性格が全く逆のような人になってしまったと言われています。

脳神経科学の発展で前頭葉は理性を司る部分であることがわかってきました。人間らしさたらしめているのはこの前頭葉の発達だということです。


人は単体では弱いため群れて生きる生物です。
群れるということは他人との接触が多くなるわけで、誰かと接するたびに衝突して大怪我を負うような行為は生命のリスクが高くなります。

前頭葉の発達は群れるためには必須のスキルとなりました。
ちょっと程度のイライラを抑えられなければ、簡単に誰とでも衝突する問題児です。それでは群れではうまく生活はできません。




前頭葉は脳の中で一番遠い位置にあるため扁桃体での瞬間的な判断とはタイムラグが生じます。そういう設計でなければ熊と出逢った時に逃げることはできないですからね。

怒りは6秒待てば収まる、みたいな話はそういう理屈です。
ただ個人差はあります。幼少期から虐待を受けてきた人は脳が未発達になることがあったりします。もしくは遺伝によって親の脳の特徴を受け継ぐこともあります。発達障害のADHDが衝動性の高い人が多いのも前頭葉による抑制機能が通常発達の人よりも低いからです。


そのため扁桃体による衝動性を抑えられないため、いつまでも恨みを持ち続けたり、過集中によってドーパミンを出し続けたりできてしまいます。


扁桃体をコントロールできないことが悪い、ということではなく扁桃体の活動や脳の機能を理解して活用できる人になる方が今後の人生においてアドバンテージはすごく高くなるということです。

常に衝動的に生きていく方が良い、という方はそのままで良いです。
ちょっとでも利用して自分の人生をもっと良くしていきたいのであればたくさん知識として持っていた方が良いです。




ここまでみていただきありがとうございました。

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