■職場環境を悪化させてしまう『パラノイア』
周囲に対する疑念や根拠の無い不信感が強まった精神状態を意味する『パラノイア(Paranoia)』。
日本語では「偏執」を意味し、「他者が自分に害を与えようとしている」と信じ込む(固執する)傾向があります。
精神医学的には、「妄想性障害」や「統合失調症」として扱われることが多く、時には「パーソナリティ障害」の症状としても現れます。
この精神状態は「訂正する」ことが困難であり、本人は強く信じています。
深刻なケースの場合、個人の問題に留まらずに職場全体へ組織崩壊などの悪影響を及ぼすようになるため、管理職(マネジメント層)や人事には迅速な対応が求められます。
■『パラノイア』の特徴
『パラノイア』に陥ってしまうと以下のような悪影響を及ぼし、個人に留まらず組織全体の「心理的安全性」を損ねる事態を招くことになります。
●「被害妄想」に囚われてしまう
●「侮辱的」と捉える
●「攻撃的」な態度を取るようになる
●「猜疑心」が強まる
●「陰謀論」にハマってしまう
●「誇大妄想」に囚われてしまう
●「最悪の事態」を想定してしまう
●「社会的孤立」を深めてしまう
◆「被害妄想」に囚われてしまう
『パラノイア』に陥ることによって、「あの会議に自分が呼ばれなかったのは「のけ者」にされているからだ」と、勝手な物語を作り上げる「被害妄想」に囚われるようになります。
すると、周囲への不信感が強まるようになり、職場全体のコミュニケーション減少や、組織の崩壊につながるリスクが高まってしまいます。
◆「侮辱的」と捉える
『パラノイア』状態に陥ってしまうと、実際はそうでなかったとしても、他人の言動を「自分に対して侮辱的だ」と捉えてしまうようになってしまいます。
すると当人は、さらに不安や恐怖を感じるようになり、「自己防衛的」な行動を取るようになるのです。
◆「攻撃的」な態度を取るようになる
『パラノイア』という精神状態によって不安や恐怖を感じることから、自分を守るために「先制攻撃をする」「法的手段を取る」といった、食って掛かるようになってしまいます。
◆「猜疑心」が強まる
さらに、「他人の言葉は信用できない」「友人や家族すらも自分を陥れようとしている」と、猜疑心が強まってしまうことも。
◆「陰謀論」にハマってしまう
「猜疑心」が強まることで、周囲の同僚や上司の不遜な振る舞いは「自分を陥れようとしているからだ」と「陰謀論」的思考になってしまうことも、『パラノイア』の特徴の一つと言えます。
◆「誇大妄想」に囚われてしまう
一方で、「自分は特別な存在だ」「自分にしかできないことがある」という、誇大妄想に囚われてしまうことも。
◆「最悪の事態」を想定してしまう
例えば、同僚にメールを送ってすぐに返信が無かった際に「返信が遅い。何か気分を害することをしたから同僚は怒っているのか?」と、自分勝手に「最悪の事態」を想定するようになってしまうことも、『パラノイア』状態の特徴と言えます。
◆「社会的孤立」を深めてしまう
『パラノイア』状態に陥ることによる、被害妄想や猜疑心などによって、「誰も信用せず一人でどうにかしよう」とするため、職場内で孤立を深めることになってしまいます。
■職場における『パラノイア』の発生例
部下の立場、上司の立場それぞれにフォーカスすると、『パラノイア』に陥ってしまった際の振る舞いとしては、主に以下のような形となります。
●『パラノイア』に陥ってしまった部下
●『パラノイア』に陥ってしまった上司
◆『パラノイア』に陥ってしまった部下
他人の意図や言動を疑い、悪意を持って解釈する心理状態である『パラノイア』。
部下の立場で陥ってしまった場合、以下のような振る舞いをすることになります。
●上司からの些細な言動に対して、「自分への攻撃・脅威」と見なして過剰に解釈してしまう。
●過剰に疑り深くなり、周囲の人間を信用しなくなる。
●「陰謀論」めいた思考に陥り、不要な対立を引き起こす。
●職場の信頼関係が崩れ、組織内での協力が困難になる。
『パラノイア』に陥ってしまうのが部下の場合、上司からの指示に過剰に反応したり、不必要に警戒的な態度を取ることで、上司の苛立ちや不信感を招くことも。
その結果として、実際に上司が厳しく接するようになり、さらに部下の『パラノイア状態』を強めてしまう、という「悪循環」が生じてしまうことも。
この「悪循環」のメカニズムは、「自己成就的予言」という概念と関連していると言われています。
「自己成就的予言」とは、確たる根拠が無い思い込みや予測であったとしても、それを信じて行動することで、最終的にその通りの現実が引き起こされる心理的・社会的な現象のことです。
つまり、部下が「上司が自分に攻撃的だ」と信じ込むことで、実際に上司との関係が悪化してしまう、というわけです。
◆『パラノイア』に陥ってしまった上司
『パラノイア』は「上司」の立場であっても陥る可能性のある精神状態です。
●マネジメント対象である部下が「働いていない」と疑うようになり、「マイクロマネジメント」などの過度な監視や高圧的な態度で接するようになる。
●必要以上に進捗報告を強要するようになり、職場環境や部下のメンタルを悪化させてしまう。
『パラノイア』に陥ってしまうのが上司の場合、「生産性パラノイア」となることが部下の精神的負担を高めることになってしまいます。
「生産性パラノイア(productivity paranoia)」とは、上司が部下の働きぶりを過度に疑うようになる状態のことで、特にコロナ禍を経て広まったハイブリッドワーク下で問題視されています。
Microsoft社が生み出した言葉として知られており、同社が2022年9月に公表した「Hybrid Work Is Just Work. Are We Doing It Wrong?」というレポートによると、ハイブリッドワーク下において上司(管理職)の85%が「部下の働きぶり」に対して疑問視しているとのこと。
一方で、部下(従業員)側は生産性が高く問題無いとの認識であるとのことで、上司と部下との間で「生産性の認識」に大きな差が生じているのがわかります。
つまり、直接仕事振りを見ることができないハイブリッドワークという環境下では、上司は特に「生産性パラノイア」に陥りやすく、「しっかり働いているか」を過度に監視しようとすることで、部下の生産性が低下してしまうリスクがある、というわけです。
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