■『イケア効果(IKEA効果)』とは?
購入者が自分で組み立てたり制作したものに対して、実際の客観的な価値よりも「高い価値」や「愛着を感じる」ようになる『イケア効果(IKEA効果)』。
この心理的なバイアスは、労力によって得られる過大評価を指し、自身の直感や経験によって物事を非合理的に判断してしまう行動経済学の「認知バイアス」の一種とされています。
この認知バイアスは、名称の通りスウェーデンの世界的な家具量販店「イケア(IKEA)」が由来となっています。
比較的安価でデザインが現代的であり、購入者・顧客自身が組み立てるオリジナルの家具を多数取り揃えているのが人気で、IKEA側としては家具を組み立て式にすることでコストを削減でき、低価格を実現しています。
■実証された実験
『イケア効果』は、ハーバードビジネススクールのマイケル・ノートン 氏、アメリカのデューク大学教授のダン・アリエリー 氏、イェール大学のダニエル・モション 氏の3名によって、2011年に提唱されました。
この3名は、以下の検証実験を行いました。
●被験者を「イケアの家具を自分で組み立てるグループ」と「完成された家具をチェックするだけのグループ」に分ける。
●それぞれの作業完了後、被験者らに「自分が組み立てた家具」「自分が点検した家具」に値付けしてもらう。
●「自分が組み立てた家具」には平均78セント、「自分が点検した家具」には平均48セントと値段を設定した。
実験の結果、「自身で組み立てた家具に高い価値を感じる」ことが明らかになりました。
■『イケア効果(IKEA効果)』が発生するメカニズム
行動経済学の法則の一つである『イケア効果(IKEA効果)』が発生するメカニズムは、以下の通りです。
●労力による過大評価:自分の「時間」や「労力」を注ぎ込むことで、その成果物に対して「無意識のうちに高いプレミアム(労力の対価)」を乗せて評価してしまうため。
●有能感の証明:自分の手で完成させることで「達成感」を得られ、「自己肯定感」が高まるため。
■身近な『イケア効果(IKEA効果)』の発生例
『イケア効果(IKEA効果)』は日常生活でもよく発生する事象です。
具体例としては、以下のケースが挙げられます。
●自分で作って食べる「知育菓子」
●自分で手間暇をかけて完成させる「プラモデル」
●「自分で作る」という達成感が味わえる「DIY」
●最終的に感動や知識の集大成を得られる「分冊百科(パートワーク)」
●単なる食事以上の体験価値が生まれる「焼肉」
●自分で育てた野菜を食べる「家庭菜園」
◆自分で作って食べる「知育菓子」
粉や水などの材料を混ぜたり、こねたりして、自分で形を作って完成させる「知育菓子」。
子どもの「考える力」や「創造力」、「手先の器用さ」などを育むことを目的としており、「自分で作る」工程を通じて楽しんで食べられるのが特徴です。
◆自分で手間暇をかけて完成させる「プラモデル」
「プラモデル」も『イケア効果(IKEA効果)』が生じる例として挙げられます。
自分でパーツを切り離し、説明書を見ながら一つ一つのパーツを組み立てていく「プラモデル」。
複雑であればあるほど、完成品ができるまでに相応の時間がかかりますが、時間をかけて完成させた「プラモデル」には、一層愛着が湧くものです。
◆「自分で作る」という達成感が味わえる「DIY」
イケアの家具のように、専門業者に頼まずに自分で家具などの製作や修繕、部屋の模様替えなどを行う「DIY」。
コストを抑えながら理想のアイテムを作れるだけでなく、「自分で作る」という達成感も味わえるのが『イケア効果(IKEA効果)』を誘発させていると言えます。
◆最終的に感動や知識の集大成を得られる「分冊百科(パートワーク)」
ディアゴスティーニやアシェット・コレクションズ・ジャパンなどの「分冊百科(パートワーク)」も、『イケア効果(IKEA効果)』の発生例の一つと言えます。
高額な書籍や複雑な模型を定期的に少しずつ集めて、最終的に大きな感動や知識の集大成を得られることが魅力で、多くの人を惹きつけています。
◆単なる食事以上の体験価値が生まれる「焼肉」
音や香りを感じながら自分好みに肉を焼くと、格別の味わいや達成感を得られることも、『イケア効果(IKEA効果)』の発生例の一つと言えます。
◆自分で育てた野菜を食べる「家庭菜園」
「家庭菜園」も、『イケア効果(IKEA効果)』の代表的な発生例の一つです。
種や苗から野菜が育つ過程を間近で見守り、水やりや温度管理、害虫対策などをして手間をかけることで、スーパーで買う野菜よりも「おいしい」と感じるようになります。
「手間をかけて育てる」という労力を経て収穫することで、『イケア効果(IKEA効果)』が発揮される、というわけです。
■『イケア効果(IKEA効果)』のビジネスシーンへの応用例
購入者・顧客に「参加する体験」を提供することで、単なる完成品を買う以上の満足感を生み出すことができ、一方で「組み立てる」「完成させる」コストを軽減できるという販売側のメリットも生じるようになる『イケア効果(IKEA効果)』。
『イケア効果(IKEA効果)』は、マーケティング(販売促進)だけでなくマネジメントなど、さまざまなビジネスシーンで活用可能な心理バイアスとして知られています。
●あえて手間を増やして売上をアップさせた「ホットケーキミックス」
●セールスマンを「企画会議」に参加させて商品の販売意欲を高める
●部分的な工程だけでなく「全行程」を経験してもらう
●「座談会」や「ユーザー会」を介して満足度を高める
◆あえて手間を増やして売上をアップさせた「ホットケーキミックス」
ユーザーに「あえて一手間かけさせる」ことで、楽しさや満足感を提供する商品例として「ホットケーキミックス」が有名です。
アメリカで発売された当初、ホットケーキミックスは「粉に水を混ぜて焼くだけ」という非常にシンプルな商品でした。
「自宅で簡単にホットケーキを作れる」ことが売りでしたが、当時は売れ行きが芳しくありませんでした。
そこで、水だけを加えて作る商品から、「卵や牛乳も加えて作る」商品へと変更しました。
その結果、「ホットケーキミックス」の売り上げはアップし、広く親しまれる商品になりました。
つまり、あえて「卵と牛乳を加える」手間をプラスしたことで、自分で作る「体験」と「実感」を得られるようになり『イケア効果(IKEA効果)』を発揮させた、というわけです。
◆セールスマンを「企画会議」に参加させて商品の販売意欲を高める
例えば、企画職ではない新卒採用の営業マンを「商品開発の企画会議」に参加させることで、販売する自社商品の強みや良さを知って「販売する自信」が強まり、セールス活動に活かすことができるようになるのも、『イケア効果(IKEA効果)』の活用例の一つです。
◆部分的な工程だけでなく「全行程」を経験してもらう
工場に勤務する従業員に「一つの工程」だけを任せるのではなく、「商品製造の全工程」を経験してもらうことで、製造商品に対する「愛着」を作り出し、製造する「モチベーション」を高めやすくなることも、『イケア効果(IKEA効果)』を活用させるケースの一つです。
◆「座談会」や「ユーザー会」を介して満足度を高める
実際に商品やサービスを購入・導入している消費者や顧客に「座談会」や「ユーザー会」に参加してもらい、その商品・サービスの使用感や不便さなどを意見してもらい、その情報を商品・サービス開発に反映することで、満足度がより高まるのも『イケア効果(IKEA効果)』の活用例と言えます。
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