自律創造型デザイナー7つの法則

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デザイン・イラスト

はじめに

ビジネス業界では日本のデザイナーは比較的年収が低く、裁量権限が狭い傾向にあると考えらます。クリエイティブに特化していることもあり、人財スキルの中身が見える化されていない部分もあり、企業内の戦略立案などの根幹に関わるマーケターやストラテジストが作成した戦略を綺麗にビジュアル化し具現化するような役割を担っていることも多いのではないでしょうか。

しかし、デザイナーは、単なるアートの創作者ではなく、ビジネスや社会の課題に対しても革新的なアイデアを生み出すことが求められています。特に欧州ではデザイナーが戦略面を立案することが当たり前になっているにも関わらず、日本ではスタイリストであり、アーティストであるかのような風潮やイメージが根強く残っています。デザイナーというポジションは、企業の中でも上位に位置付けられていることは稀なのではないでしょうか。

自律型人材とは日本能率協会マネジメントセンターによると以下のような定義であるとされています。

自律型人材とは

自律型人材とは、指示を待つのではなく、自らの意思で考え能動的に業務を遂行できる人材を指します。ただし、具体的に何を求めるのかは企業によって異なり、企業ごとに具体的な定義が必要になります。
なお、「じりつ」には「自立」と「自律」があり、それぞれ意味は異なります。「自立」は自分の足で立てる状態のことで、1人で仕事をこなせる、経済的に独り立ちしている状況などを指します。一方、「自律」とは、自分の意志を持ち、自らをコントロールしながら、目的や意義を考えて行動に移せる状態を指します。

指示待ちではなく、自ら問いを立てて、PDCAを回しながら創造的に業務に取り組むことが出来る人が自立創造型人材と言われているわけです。つまり仕事に創意工夫をしたり、上司に言われるでもなく、積極的に提案をしていける人が現代の社会、組織では求めらているとも言えます。

では、なぜデザイナーが自律創造型人材として適していると言えるのでしょうか。以下その理由を深堀してみました。

1.イメージをマネージする【表現力】

デザイナーは、視覚的なイメージを思考しやすくするために、豊かなイメージ力を養うための訓練を積んでいます。手書きスケッチを通じてアイデアを形にし、コンセプトをビジュアル化することで、イメージングのスキルを磨いています。これにより、デザイナーは頭の中で具体的なイメージを鮮明に描き出すことができ、イメージをマネージすることが出来るのです。

そのため、デザイナーは人々の共感を呼ぶイメージ作りに長けています。このスキルを用いて企業内のビジョンミッションを言葉にするだけでなく、イメージやビジュアル、ロゴ、ポスターや動画などの表現手法を用いて、全社員に共感されるインナーブランディングを創出することも可能となります。特に役員やトップマネジメントの思いを形にする時、デザイナーの力は発揮されやすいと考えます。言葉では表現できても、それを誰もが頭の中にイメージすることが出来なければ、ペンで書いた餅に終わってしまいます。

2.アイデアの量と質【発想力】

デザイナーは創造的な仕事をするために、常にアイデアを考え出す必要があります。彼らは日常的な経験や情報をアイデアに変換し、アイデアの数を普通の人よりも多くストックしています。これは、デザイナーが豊かな発想力を持っており、新しい解決策やデザインのアプローチを見つけ出す能力に繋がっています。

例えば私の場合は、以下のようなストックがあります。
①Pinterestを活用したイメージ収集
②オープンイノベーションプラットフォームを活用したアイデアストック
③就活から転職活動まで続くポートフォリオ作り
④各プロジェクトにおける没ネタ
などを参考に自分のイメージとアイデアの引き出しを拡張しながら、イメージをマネージし、発想を生み出す独自の手法を持っています。

①Pinterestを活用したイメージ収集

プロジェクトに参加する度にイメージのフォルダを作り収集を続けています。例えばCar Designのフォルダには過去にデザインの参考にしたコンセプトカーなどのイメージがストックされています。その他フィットネス製品のデザインイメージはインテリアフィットネスのフォルダの中に格納されています。このように、個々のプロジェクトで収集したイメージをストックしておくことで他のプロジェクトで似たようなキーワードが出てきた時にも瞬時にイメージを収集したり提案したりすることが可能になります。

②オープンイノベーションプラットフォームを活用したアイデアストック
オープンイノベーションプロジェクトへの参加によってアイデアのストックがどんどん増えていき、受賞を逃した提案物はそのまま自分のアイデアストックにもなるので、お題やテーマが何か提示をされた時にも瞬間的に過去に提案したアイデアや事業企画などを引き出して、瞬時に提案に結びつけていくことも可能になってくるわけです。

私の場合はwemakeというオープンプラットフォームで開催されている企業ごとの課題にアイデアを投稿することを七年程前から実施しており、アイデアのストック数は68件あります。

3.セルフマネジメントで目標をクリエイティブする

デザイナーは、自らの仕事やプロジェクトをマネジメントする能力も持っています。彼らは自己管理においてクリエイティブな方法を見つけ出し、目標を達成するために必要なスキルやリソースを組織化します。デザイナーはプレゼンテーションの経験も豊富であり、自らのアイデアやビジョンを他者に伝える力も備えています。

例えば、デザイナーであれば誰しもがやっていることとして、一つのプロジェクトが終了すると、その内容を振り返り、自分の役割や成果を整理して、ポートフォリオ化する習慣があります。具体的には、アイデアやイメージの整理、プロセス分析まで実施し、次のプロジェクトではより良いアウトプットに繋げるために、再現性を高めていくことを習慣付けているデザイナーが優秀なデザイナーとも言えます。

例えば私のポートフォリオは3年単位で新しいものに刷新をしています。デザインの実務経験やスキルアップに応じて、作品を入れ替えて、次のキャリアデザインの準備をしています。過去のポートフォリオから振り返ると、初期の頃はビジュアルが綺麗でインパクトのあるポートフォリオに注力していたり、最近のものはデザイン業務のみでなく、創造的な組織開発や、プロセスのスタンダード化に取り組んだことや、グラフィック、プロダクトから、UI・UXまで多岐に渡る担当範囲を整理しまとめていたりします。
これは長期的なキャリアデザインのPDCAをデザイナー自らが自律的に回していることになります。上手くいったこと、行かなかったこと、社会的に認められた経験、自分の好きを形にしたWILLに基づくプロジェクトなど、多様な自分の生き様を表現していることになります。就職活動から続く習慣は、転職活動のためだけでなく、自己を磨いて、他人に自分のことを知ってもらうための自己表現が出来る職能を持っているとも言えるのではないでしょうか。

4.自己評価と他己評価を常に行なっている

デザイナーは、自己評価と他己評価を常に行なっています。彼らは自らの作品やデザインを客観的に評価し、改善点や成果を把握することができます。また、他人の意見やフィードバックを積極的に受け入れ、それを自身の成長や学びに繋げることができます。このような自己評価と他己評価のプロセスによって、デザイナーは自身のスキルや能力を向上させ、より良いデザインを生み出すことができるのです。

自己評価はアート思考により自分が美しいと思うもの、感動した体験などをベースに自分事としてN1をベースに思考を張り巡らせます。そしてエンドユーザーの調査を元にユーザーに憑依するくらいのイメージを持って、デザインのレビューを実施します。自己の造形美や真善美の価値観と、ユーザー価値を対峙させて、デザインや事業・サービス、そして組織をブラシッシュアップしていけるのはデザイナー以外にはいないと思います。

5.何より創造することを楽しんでいる

デザイナーは創造性を最大限に発揮する仕事に従事しています。何より彼らは新しいアイデアやコンセプトを生み出すことを楽しみ、デザインプロセスそのものに喜びを見出しています。この情熱と楽しみが彼らを駆動し、さらなる創造性を追求する原動力となっています。

楽しいことや嬉しいかった事など、感情表現を形で伝える方法を知っているデザイナーは、これからの時代にAIで賄いきれない表現力を発揮する職種の一つになり得ます。感受性の高い人程、敏感に人の感情を察知し、得られるユーザーインサイトは深い部分にまで及ぶでしょう。定量定性によるユーザー調査では得られない、デザインによって生み出される感動体験がこれからの時代を刷新していく力を持っていることを、企業の経営者はいち早く目をつけていったほうが良いでしょう。

6.自分が感動したものやワクワクする体験を記憶してネタ化している

デザイナーは、日常の中で感動したりワクワクするような体験やアイデアを積極的に記憶し、それをネタ化しています。彼らはそのような体験やアイデアを自身のデザインに取り入れることで、新たな視点やインスピレーションを得ることができます。このような体験の蓄積が、デザイナーの創造力や独自性を育みます。

デザイナーと一緒に仕事をしているとワクワクする瞬間が訪れます。ディスカッションをしている時、ブレストをしている時、デザインの仕様を詰めている時、そして初めて世の中に製品やサービス、事業が発表になった時。デザイナーが作り出したブランドの世界観・表現によって、事業にこめたメッセージがユーザーに届いた瞬間は感動を生みます。

7.デザイナーとしての経験

デザイナーとしての経験も、彼らが自律創造型人財である理由の一つです。手描きスケッチを大量に描き、プロトタイプを製作し、レンダリングのイメージ表現力を鍛えてきたことで、デザイナーは視覚的なアイデアを効果的に伝える能力を持っています。また、プレゼンテーションの経験も豊富であり、他者に自身のデザインやコンセプトを魅力的に伝えることができます。さらに、アイデアを大量にアウトプットする習慣があるため、発想力にも優れています。

このようなデザイナーの素養を軽視してはいけません。彼らから学ぶことはデザイン思考ではなく、デザイナー試行なのです。デザイナーの試行錯誤のプロセスは確立されたものではなく、固有のプロセスを辿ります。非線形で定量化されておらず、定性的な側面をもち、客観的に評価しにくい要素がたくさん有る為、企業やビジネスの場面では、事業やサービスの売り上げに紐づきにくく、正当な評価がされてきませんでした。

しかし、現代のAI技術の発展によって、特にChatGPTやAI生成技術などによって、デザイナーの価値が高まるタイミングが訪れました。機械学習だけでは得られないデザイナー独自の表現技術や、伝達力、発想力によって、自律創造プロセスを体験してみては如何でしょうか?

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