自動車業界は「100年に一度の変化」をどのように乗り越えようとしているのか? (自動車ディーラー編)

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ビジネス・マーケティング
自動車業界ではOEMがDXによるイノベーションに取り組み、サプライチェーンベースから見直しを図っています。そのような中で現在、販売のパートを担っている自動車ディーラーは、今後どのように変わっていこうとしているのでしょうか?

今回の100年に1度の変化の中で自動車ディーラーは最も大きな影響を受けるようになるのではないかと危惧します。OEM側はDXによる経営革新によって豊富なデータ活用を社内の設計開発部門からマーケティング部門まで徹底的に活用推進を図っていくことで、お客さまの声を全社に行き渡らせることが可能になり、新たに生まれ変わることができると思います。

一方で自動車ディーラーは、今後EVがトレンドとなり、且つ既にテスラが新しい販売方法を成功させているという新しい枠組みの中で、自らが国内販売の中でどのような立ち位置で存在意義を創り、これまでと同様レベルのキャッシュポイントを確保していくのかという根本的ともいえる命題を再構築していくことが求められるのではないかと考えます。

テスラなどは完全なD to Cの中できちんと利益を出すまでに至っています。テスラが先日発表した2021年7~9月期決算では、純利益が前年同期と比べ約4.9倍の16億1800万ドルと四半期としての過去最高を記録しています。

このようにEVで先行するテスラやNIOなどの新興EVメーカーが、自動車の販売方法をも一変させています。その影響は大きいものと考えています。

今後その状況を見ながら、時代からの要請でもある販売方法の1つとして、OEMも国内において、その方向性を探っていかざるを得ないのではないかと思います。

これまで自動車ディーラーは、その歴史の中でOEMと「運命共同体」という意識や側面が非常に大きかったことは事実です。自動車産業のサプライチェーンのなかで「販売機能」を独占することが可能になっていました。OEMが開発したクルマをたくさん販売していれば経営も成り立つことが可能でした。

しかし、時代は変わりビジネスモデルもまた変わっていきます。今後自動車業界全体がEV化の波によって経営革新に取組み、サプライチェーンの各プロセス、マーケティングシステム、商品開発システム、経営システムが変化していく中で、自動車ディーラーは改めてどんな機能を持つべきなのか、どこに存在価値を見出すのかを考える時に来ていると私は考えます。

国内市場においてもBMWが口火を切ったように、今後D to Cの試みが販売方法の1つとして開始されようとしていると思います。仮に、D to Cが将来主流になった場合、自動車ディーラーは新車販売時のキャッシュポイントだけでなく、お客さまとの最初の接点を失うということになる可能性が出てきます。

従って、今OEMが生き残りをかけて100年に一度の変化を乗り切るために懸命に対処しているのと同様に、自動車ディーラーとしても今後の在り方を考えていく必要があるのではないかと思います。

それについてはOEMが考えることだから任せておけばいいだろうという考えは、今回に関しては後々デメリットを被ることになるのではないかと考えます。任せるままにしていればOEMは自分たちにとっての「最適解」を選択していくのではないでしょうか。それも生き残るための選択であることは間違いありません。

OEMですら今後のEVトレンドで変化すると考えられるサプライチェーンで、そのプロセス途中のプレーヤーに、お客さまとの「接点」を確保されてしまう可能性も出てくるのではないかと思われます。

つまり、今後DXによるイノベーションの中で、どのプレーヤーもお客さまとの「接点」を見出そうとすると思うからです。お客さまとの「接点」確保が可能になればIT技術によってお客さま情報を直接手にすることが可能になります。「お客さま情報」を持つ者が、今後のビジネス展開において最も有利になるからです。

OEMにとっても新たに他のプレーヤーに介入されてしまうと、自分たちの存在が主役でなくなり、気がついたらいつの間にかお客さまとの「接点」も「お客さま情報」も希薄になっていたということがあり得るのではないかと思います。

したがって、これまで直接お客さまとの「接点」を独占していた自動車ディーラーとしても、今後自分たちがいかにお客さまとのコンタクトを維持するのか、お客さま情報を持てるのか、お客さまと最も良い関係を継続できるのかを、初心者の目線になって考えなくてはならないときが到来していると思います。

その際、まず現状分析として、テスラはどのように米国において販売とサービスを可能にしているのか、どのように自動車ディーラーを活用しているのか、あるいはできていないのか、今後どう活用しようとしているのか、またお客さまからみてどこで利便性が上がるのか、どこが不便なのか、コネクティッドが進展した際にどのようなCX戦略があるのか、それらを自動車ディーラーとして解決するにはどうすれば良いのかを考えていくことだと思います。

ポイントは「お客さま目線第一」で考えることであると思います。当たり前のことではありますが実はなかなかむずかしいことでもあります。徹頭徹尾、お客さまの立場にたって考えれば自ずと方向性は見えてくると思います。

実は、同様のことはサプライヤーについても言えると思います。これまではOEMの考え方に則って開発してきていたものと思います。例えばOEMが次期型では、このようなコンセプトのクルマを開発したいという考え方や方向性のもとで、各サプライヤーはその方向性に合わせて自社製品の設計開発を進めてきたものと思います。それがこれまでのような強固な協力体制を堅持することができた理由だったと思います。

しかし今後、自動車業界でイノベーションが進展していくことで、それまでのTire構造のビジネスモデルが大きく変容していく可能性があると思います。サプライヤーという立場も従来のTire1、Tire2といったレイヤー構造ではなく、1つの目的のために縦横含めて水平垂直結合していくことも可能になってくるのではないでしょうか。

そのことによって、それぞれのサプライヤーの知見や叡智が結合することで、どんなことが可能になるのか、どんな新しいことができるのか、どんなCX体験を提供できるのか、OEMにどんな新しい提案が可能になるのか、まだ欧米中国が手をつけていないことは何か等を、それぞれ各分野の知見を結集させて創り上げていくことが求められるようになっていくのではないでしょうか。

 テスラから始まった自動車のEV化イノベーションは、今後、国内自動車産業の各プレーヤーのビジネスモデルを大きく変えていくのではないかと思います。

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