本のタイトルは、「脳を知る・創る・守る・育む12」(「脳の世紀」推進会議編 金澤一郎、羽生善治、中谷裕教、近山隆、笠井清登、鍋倉淳一、津本忠治)です。テーマは「将棋と脳科学」、編集:「脳の世紀」推進会議、発行者:松田國博、発行所:株式会社クバプロ、発行日:平成22年5月25日、定価1200円+税。
それでは、脳の世紀シンポジウム講演収録集12について簡単に紹介いたします。
講演収録集12は、「脳の世紀」推進会議の主催により開催された第17回「脳の世紀」シンポジウムでの講演を収録したものです。第17回シンポジウムは2009年9月30日に、東京の有楽町・朝日ホールにて開催されました。
脳を知る・創る・守る・育む 12の目次
開会挨拶 NPO法人脳の世紀推進会議副理事長 金澤 一郎
Ⅰ章 特別講演
脳の可能性 将棋棋士 羽生 善治
対局は暗中模索のなかで進む/局面が進むとともにマイナスの選択肢がふえる/長考しているときの心理状態/大事な棋譜は盤と駒を使って覚える/知識やデータは必ずしも役立たない/知識を得るためのプロセスは役に立つ/まっさらな心境は新しい発想の創出のもと/局面の正確な把握には訓練が必要/新手を考えるより、その対策を探すほうが楽/新しい発見がモチベーションに/先手・後手どちらが優勢か
Ⅱ章 脳を知る
将棋棋士の直観を脳活動から探る 理研BSI研究員 中谷 裕教
棋士の直観/棋士の思考の特徴/なぜ、棋士の直観を調べるのか/将棋を用いて思考の研究を行う利点/研究体制と脳活動の計測/思考をどのように捉えるか/思考の小脳仮説/棋士の直観を脳活動から探る/
問一 局面の素早い理解にかかわる時間は/問二 局面を脳のどこで理解しているのか/
問三 直観による指し手の案出にかかわる脳部位/問四 読みによる検証と判断にかかわる脳部位/まとめ
Ⅲ章 脳を創る
経験を積んで直感を養う:コンピュータ将棋と機械学習
東京大学大学院工学系研究科教授 近山 隆
人工知能研究の流れ/統計的機械学習/コンピュータ将棋プレイヤ/必勝手の探索/ミニ・マックス探索/コンピュータ将棋プレイヤの勘所/探索の効率化……枝刈り/どこまで読むか/選択深化の手法/静的評価関数/直感の重要性/詰判定にかける時間の制御 /データから学ぶコンピュータ/コンピュータ将棋の(近い)将来
Ⅳ章 脳を守る
統合失調症の脳病態と早期介入
東京大学大学院医学系研究科教授 笠井 清登
精神疾患は一般人口において多い/精神疾患は人生早期に発症/精神疾患の社会的損失は甚大/国家の富は「精神の富」/統合失調症の臨床的な特徴/統合失調症の発症過程/臨床病気の特徴/
統合失調症の病態仮説/進行性脳病態仮説の再検討/前駆期の脳病態/早期診断に向けて/まとめ
Ⅴ章 脳を育む
発達期の神経回路機能の再編成
自然科学研究機構生理学研究所・教授 鍋倉 淳一
胎児の発達と行動/行動の発達と神経ネットワーク/活動する配線がかわる/余剰シナプスの除去は神経活動に依存する/余剰回路の除去によってより細かな機能が可能となる/神経細胞間の情報のやりとりがかわる/障害からの回復は発達の繰り返しか/生きた動物で脳回路の変化を見たい/生きた動物の脳の深部構造/ミクログリアによるシナプス監視/障害回復期における機能回路の再編成
閉会挨拶 NPO法人脳の世紀推進会議副理事長 津本 忠治
著者紹介
今回の脳の世紀シンポジウムから開会の挨拶が金澤一郎氏(故人)になりました。改めて読み直してみると、本の装丁など微妙に違っていました。今までは同じシンポジウムの本と脳が認識し、違っていることに気づきませんでした。
各セッションの間に「質疑応答」が掲載されており、シンポジウムで出た質問の回答も読めるので、より理解を深めることができます。伊藤正男先生と羽生棋士との質疑応答は面白いです。
また、特別講演「将棋と脳科学」の講師は羽生善治氏です。たぶん、日本国民であれば、誰でも知っていると思います。理研BSIの脳研究の実験に羽生棋士も参加されたようです。特別講演では、羽生棋士の将棋を指すときの思考や心理状態の話もあり、興味深いです。
他の脳を知る・創る・守る・育むの講演の中でも、将棋棋士の直感を脳活動から探る研究成果の発表もあります。