(前回のあらすじ)
計画をいつでも細胞単位で即答可能。
――入力したこの言葉でAIが物語を展開。
一莉は鋭い言葉に圧倒されながらも、自分にない強みを前に刺激と不安を覚えた。
(本編)
久しぶりに帰った実家。夕飯を終えて、居間のテーブルで麦茶を飲みながら、一莉は意を決して切り出した。
「お父さん、私…起業したいんだ」
父は驚いた顔をしたが、すぐに表情を引き締めた。少し間をおいて、低い声で問いかける。
「……どうしてだ?」
単なる好奇心ではなく、本気で理由を知ろうとしている目だった。会社員として何十年も働き、転勤や人事の波を受け入れてきた父のまなざしに、一莉は背筋を伸ばす。
胸の内で渦巻く理由はたくさんある。精霊の言葉に励まされたこと。翔太との交流会での刺激。自分の心に浮かんだ「私は一人じゃないを形にしたい」という思い。
だけど今、父にどう伝えるかが試されている気がした。
言葉を探し、口を開こうとした。
一莉は父の視線を正面から受け止めながら、胸の奥を言葉にする。
「私の次の気持ちが分かるまで動きたいの」
父は眉をひそめる。わかったような、わからないような表情だ。
一莉は慌てて言葉を継いだ。
「前にね…『迷うなら、一つの事へ気持ちが分かるまで動く』って、すごく印象に残った考え方に出会ったの。迷ってる時間も大事だけど、それ以上に、動きながら自分の気持ちを確かめていく方が私には合ってるって思ったんだよね」
父は黙ったまま、麦茶を一口すすった。その沈黙が、一莉には重くもあり、試されているようでもあった。
だが、彼女の心には確かな感覚があった。動いているからこそ、立ち止まった時に見える景色がある。精霊や人との出会いから学んできた、その実感を今、父に伝えているのだ。
父はゆっくりと頷きかけ、口を開こうとした。