【金曜の23時、机の上の話】
金曜の23時すぎ、事務所の机の上に、PDFと付箋とExcelの印刷物が散らばっている。来週月曜の朝、本部会議に月次報告書を出さないといけない。データは揃っている。先月の売上、店舗別の客数、シフトの過不足、本部監査のスコア、人員の出入り、設備の不具合、クレーム件数——フォルダの中には全部入っている。
それなのに、画面のWordは白紙のままで、カーソルだけが点滅している。
書き出しの1行が出てこない。何から書けば全体が成立するのか、頭の中で順序が決まらない。気づくと23時半になっていて、明日も10時から店長会議があった、と思い出す。
——こんな夜、ありませんか。
【情報はある。骨組みが組まれていない】
報告書が金曜の夜に白紙のままになるのは、情報が足りないというより、骨組みが組まれていないから、というのが、書こうとして詰まる側から見える景色。
データはフォルダにある。Excelを開けば数字は読める。先月のドラフトを開けば構成も使える。それでも詰まるのは、「先月の構成をそのまま今月に当てはめていいのか」「今月はこの数字が動いたから、その文脈で組み直すべきではないか」「本部はどの数字を一番気にしているのか」を、書きながら同時に判断しようとするから。
書く作業と、構成を決める作業と、論点を選ぶ作業を、1人で同時にやろうとすると、頭の中の処理が詰まる。詰まると手が止まる。手が止まると時間だけ過ぎる。金曜の23時に白紙、というのはたいていこの状態。
【素材→構成→ドラフトの3段で渡す】
去年から手元で運用しているのが、報告書を1人で組まずに、ChatGPTに3段で渡すやり方。
1段目は「素材だけ渡す」。先月のデータを箇条書きで貼る。売上前年比、客数、客単価、人件費率、シフト過不足、監査スコア、人員の出入り、クレーム件数、特記事項——とにかく事実だけ並べる。文章にしない。順序も気にしない。
2段目は「構成だけ作らせる」。素材を貼ったあとに、「この内容で月次報告書を書く場合、本部が一番読みやすい構成は何か、見出し案を5つほど出してください」と渡す。返ってくる見出し案を見て、「これとこれは要らない」「この順番のほうがいい」と頭の中で並び替える。並び替えた結果が、その月の報告書の骨組みになる。
3段目は「骨組みに沿ってドラフトを作らせる」。並び替えた見出しと素材を一緒に渡して、「この見出し順で、月次報告書のドラフトを書いてください」と渡す。返ってくるのは、たいてい7〜8割は使えるドラフト。残り2〜3割は、自分の言葉に直したり、本部に伝えるニュアンスを足したりする。
この3段に分けてよかったのは、書く作業と構成を決める作業を分離できる、ということ。1人で書いていたときは、画面の上でこの2つを同時にやろうとして詰まっていた。分離すると、それぞれ1工程ずつ集中できる。結果として、金曜の23時に白紙だった画面が、金曜の22時には7割埋まっている、という現実に振り替わる。
【自分の過去の報告書を、隣に置いておく】
もう1つ運用しているのが、過去の自分の報告書スタイルを、ChatGPTの隣に置いておくこと。
最初に1回だけ、過去半年分の月次報告書のうち、自分でも「これはよく書けた」と感じる2〜3本を渡して、「私の報告書はこういうトーンと構成です。次回以降、私の月次報告書を書くときは、このトーンに合わせてください」と覚えさせる。覚えさせると、ドラフトの粒度や語尾が、自分の手で書いたものに近くなる。返ってきた文をそのまま使える率が、明らかに上がる。
これをやり始めて気づいたのは、報告書の「自分らしさ」は、語彙や言い回しよりも、見出しの粒度と、数字を出す順番と、最後の段落の置き方に出ている、ということ。21年書き続けてきても、そこまで自覚はしていなかった。ChatGPTに過去のドラフトを並べて読ませてはじめて、「自分はこの順番で書く癖がある」と外から見えた。
【これは20実例のうちの2つ】
上で書いたのは、ChatGPTを日々の業務に組み込んでいる実例のうちの、月次報告書まわりの2つ。
ほかにも、1on1の前後にChatGPTを開いて論点を整理する、毎朝の朝礼ネタを毎日違う角度で組ませる、半年分の面談メモから評価コメントの叩きを作る、新人のOJT進捗を観察ログから組み立てる、シフトの偏りから人員のメンタル兆候を拾う——こうした実例を、現役のマネージャーがいまどう使っているかという視点で20本まとめて、ココナラのコンテンツ市場で記事として出している。
「1on1・報告書・朝礼が半分の時間で動く 店舗運営20年マネージャーのAI実用例20選」
買い切りのテキスト記事で、20の実例と、そのまま使える日本語プロンプト10個が入っている。「ChatGPT単体で、まず自分の業務に何が乗るか掴みたい」「いきなり開発までは要らない」という段階の人向け。
【入口】
月末や週末の夜に、報告書の前で1人で詰まっている人へ。
仕組みを大きく変える必要はない。次の報告書を書くとき、いきなりWordに向かわず、先に5分だけChatGPTに素材を箇条書きで渡して、構成案だけ作ってもらう。それだけで、白紙の画面と向き合う時間が消える。
その積み重ねを、もう少し体系的に見たい人向けに、上の20実例の記事を置いている。月次報告書、1on1、朝礼、評価コメント、観察ログ——書く・整理する系の業務がいくつ重なっているかで、効き方は変わってくる。
金曜の23時、机に散らばったPDFと付箋とExcelの印刷物。その光景自体は変わらない。ただ、白紙のWordの画面のほうは、たぶん変えられる。3段に分けて渡すだけで、22時には7割埋まっている、という現実のほうに振り替えられる。