至福の時間
仕事終わりにリビングで過ごす数時間が私の至福の時間だ。
コンポでビルエバンスのピアノをかけながら、ソファに沈み込む。
お気に入りのカップに少し濃いめのコーヒーを淹れて、足なんてこんな感じで思いっきり伸ばしちゃう。
オフィスでこんなことをすると、すぐに上司のお小言が飛んでくるけど、ここなら大丈夫。
なぜなら、ここは私のスウィートホームだから。
私は本当にこの時間が好き。
仕事終わりの心地よい解放感と充実感に浸りながら、軽く目を閉じる。
今日はお客さんの入りが、本当に少なかった。
2時間に1組入るか、入らないかのペースで、店長に聞くと、この一日でトータル7組だったそうだ。
こんな日は、一日中、カウンターの横にぼーっと立っていることになる。
たまに店長と雑談をするが、ずっと一緒にいるとさすがにネタも切れてくる。
おまけに店長からは、今日、きつい一言を言われた。
(そのことは後で詳しく話すわね。)
こんな日は、仕事中もこのソファに身を沈めて、頭を空っぽにして、おいしいコーヒーをいただくことを思い描いてしまう。
そう、今ちょうどこのソファで、至福の時間にひたっているように…
私が勤めているのは、コントベリーガーデンにある、こじんまりした喫茶店だ。
そこで、ウェイトレスとして働いている。
飲み物やサンドイッチなどの軽食を作る店長と私二人の本当に「こじんまり」としたお店だ。
だから、お客さんの数は私の仕事の量に直結する。
多すぎると、お客さんからの注文の聞取りが、雑になる。
あちこち走り回って、どうしても注文の聞き間違えや聞き漏らしが出てくる。
注文メモが店長の調理台の上に何枚も横並びに並ぶ
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