[小説]第4話 追われる者たち
自宅兼研究室の扉が、静かに閉まった。
外は夕暮れに差しかかっており、窓越しに見える空は淡い橙色に染まっている。シドニーの街並みが、夕日に照らされて美しく輝いていた。
だが、その美しさを味わう余裕は、誰にもなかった。
研究室の中央に立ったスコット・ジョンソンは、腕を組み、低く唸るように言った。
「……さて、どうするかな」
その声には、医師として数多くの修羅場をくぐり抜けてきた男の重みと、父親としての焦りが混じっていた。
私は、周囲の機材を見渡しながら答える。
「やみくもに探している時間は、ないと思います」
自分でも驚くほど、冷静な声だった。
だが、内部では常に計算が走り続けている。
リサ・ブラウニー博士の容態は不安定。原因不明。時間制限あり。
これらの条件を考慮すると、効率的な行動が必要だ。
「そうだな」
スコットは短く応じた。
彼は、窓の外を見た。夕日が、ゆっくりと沈んでいく。
その横で、トムが少し考え込むように視線を落とし、やがて顔を上げた。
「……サラさんに、話をしてみたらどうだろ」
「サラさん……?」
私は、その名前を知らなかった。
データベースを検索したが、該当する人物は見つからない。
スコットが説明する。
「サラ・キャンベルだ。この街の有力者の一人で、リサの友人でもある」
「有力者……」
私は、その単語を記憶した。
スコットは続けた。
「彼女は、独自のネットワークを持っている。情報も、資源も、人脈も」
「もし誰かが助けになるとしたら、彼女だ」
その言葉に、私は即座に反応した。
「サラ・キャンベルに、会いに行きましょう」
トムが頷き、スコットも同意する。
「東の港に、倉
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