絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む

すべてのカテゴリ

2 件中 1 - 2 件表示
カバー画像

昨日止まった時間が、また動き出そうとしていた

悠真は、凪の机の横に立ったまま、ほんの一瞬だけ迷うように視線を落とした。そして、静かに口を開く。「……昨日」その一言に、凪の指先がピクリと動く。周囲にはクラスメイトの話し声。なのに、二人の間だけ音が遠い。「ありがとう」それだけ。短い言葉なのに、胸の奥にまっすぐ届く。凪はゆっくり頷いた。「うん……」一瞬、沈黙。そのとき――「おーい悠真!」後ろから友達の声が飛ぶ。悠真は振り返り、軽く手を上げる。「すぐ行く」そして、もう一度凪を見る。少しだけ近づいて、声を落とす。「放課後、昨日の橋で待ってる」凪の心臓が一気に跳ねる。——昨日の続き。——逃げられない続き。「……わかった」その返事を聞いて、悠真は安心したように小さく笑った。その笑顔が、凪の胸をぎゅっと締めつける。悠真が去ったあとも、凪はしばらく動けなかった。周りのざわめきが戻ってきても、心だけは夕焼けの橋に飛んでいた。——今度こそ、何かが変わる。そんな予感が、はっきりとあった。恋は、静かに始まるものだと思っていた。でも本当は、静かに、そして確実に一歩ずつ踏み込んでくるものだった。放課後のチャイムが鳴った瞬間、凪の胸が小さく跳ねた。教室が一気にざわつく。椅子を引く音。笑い声。部活へ向かう足音。その中で、凪は席を立ちながら、無意識に探していた。——悠真。窓の外に見える夕焼けが、もう昨日と同じ色に染まり始めている。すると、向こうから悠真が現れた。紺のブレザーに紺のズボン。無地の紺ネクタイ。いつも通りの姿なのに、今日はなぜか特別に見える。悠真は凪の前で立ち止まり、少しだけ視線を落とす。「……行こ」それだけ。なのに、凪は胸がいっぱいになる。二人は
0
カバー画像

なのに、昨日までとは違う重さ

朝の光が、カーテンの隙間から差し込んだ。凪は目を開けて、一瞬だけ昨夜のことが夢だった気がして、すぐにスマートフォンを探す。画面をつけると、一番上に残っているメッセージ。「また明日」胸が、ふわっと軽くなる。——夢じゃなかった。布団から起き上がり、制服に着替えながら、鏡に映る自分を見る。いつもと同じ顔。なのに、目だけが少し違う。期待している目。学校へ向かう道は、昨日より少しだけ明るく見えた。教室に入ると、ざわざわとした朝の空気。凪は自分の席へ向かいながら、無意識に探してしまう。——悠真。いた。窓側の席で、いつも通りノートを広げている。その瞬間、悠真が顔を上げた。目が合う。ほんの一秒。なのに、昨日までとは違う重さ。逸らしたのは、ほぼ同時だった。心臓の音がうるさい。席に座っても、視線が気になって仕方ない。すると、机の上に影が落ちた。「……おはよう」悠真の声。凪はゆっくり顔を上げる。近い。昨日より、近い。「お、おはよう」短い挨拶。それだけなのに、空気が甘い。「昨日さ……」言いかけて、悠真が止まる。周りにはクラスメイト。少し気まずそうに、それでも笑う。「放課後、ちょっと話せる?」凪の胸が跳ねる。昨日の続き。今度は、逃げ場のない続き。「……うん」その返事を聞いて、悠真は安心したように小さく息を吐いた。そして自分の席へ戻っていく。凪はしばらく動けなかった。——なにを話すの?——また、近づくの?でも不安より、楽しみの方が大きかった。恋はもう、静かなだけじゃない。ちゃんと動き出していた。
0
2 件中 1 - 2