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悠真が……そんな顔するなら

昼休み。教室のざわめきがいつもより少しだけ遠く感じた。凪は、クラスメイトの 蓮(れん) からプリントを渡されていた。蓮は明るくて誰とでも気さくに話せるタイプ。男女問わず人気がある。凪とも席が近く、数学の宿題の話で時々やり取りをする。「これ見た? 俺の解き方、 合ってるか見てほしい」「うん、ちょっと待ってね」蓮のノートを覗き込む凪。さほど深い意味はない。ただ、数学が得意な凪にとってはよくある話しだった。――けれど。後ろの席から、視線が刺さる。(……また見てる)振り返ると、悠真がジッとこちらを見ていた。表情はいつもと違う。どこか硬く、冷たく、そして少し不機嫌だった。凪は慌てて視線を外す。(え……なんで?)蓮は気づかず、明るい声で続ける。「凪ってさ、 教え方めっちゃうまいよね。 家庭教師できるレベルじゃん」「そんなことないよ……!」笑って返す凪。でも、その声はどこか落ち着かない。蓮のノートに視線を落としたまま、心はまったく別のほうへ向かっていた。(悠真……怒ってるのかな?)放課後。凪がカバンを閉じようとしたとき、後ろから低い声がした。「……さっきさ」振り返ると、悠真が立っていた。正面から見ると、彼の眼差しはもっと鋭かった。「蓮と……なんの話してたの」「え? あ、あれは宿題の――」「近かったよね。やけに」(……え、嫉妬?)凪の胸が一気に熱くなる。「ち、近くなんて……」「近かったよ。俺から見たら」悠真は一歩近づく。凪は思わず後ずさりし、机の角にぶつかった。逃げられない距離。「……別に。蓮のこと、 好きとかじゃないよね?」「ちょっ……な、 なんでそういう話に……!」悠真は凪の目をまっすぐ見
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……凪、それ言うの反則

図書室の扉を開けると、いつもの冬の光が静かに差し込んでいた。凪は胸の奥の高鳴りを落ち着けるように深呼吸をひとつしてから、窓際の席に向かった。(見られると、弱い……)自分で言った言葉が頭の中で何度も反芻され、頬がまだじんわり熱い。ほどなくして扉が静かに開き、悠真が姿を現した。目が合った瞬間――また胸の奥で跳ねるような音がした。「来てたんだ」「……うん」悠真は席につくと、いつもより少しだけ距離を近く座った。ほんの数センチ。でも、その数センチが心臓の位置を揺らす。「今日の授業のときさ――」悠真が切り出す。凪はピクリと肩を揺らした。「そんなに見てなくてもよかったのにって、 思ってる?」「……ちょっと」「じゃあ……」悠真は意地悪に笑うかと思いきや、驚くほど真剣な目をして言った。「俺が見ても困らない方法、 ひとつあるけど」凪は息を飲んだ。「何……?」「見られたくないなら、 凪も見ればいいんだよ」「……は?むり」即答した凪に、悠真はくすっと笑った。「じゃあ今日は、 見たいだけ見ていいよ」「な、なんでそうなるの?」「凪が僕のこと見たときの顔、 好きだから」(……ずるい。ほんとにずるい)心のどこかがふわりと甘く溶けていく。ページをめくる音だけが響く図書室。二人の影が机の上で少し重なる。ふいに――凪のペンがころん、と転がった。「……あ」ペンは机の端から床へ落ち、悠真がそれを拾おうと同時に凪も身をかがめた。指先が――触れそうになって止まる。(……っ)肩が触れそうで触れない。指先も触れそうで触れない。その距離は、呼吸ひとつで埋まるような近さだった。「凪……」小さな声。耳の奥まで届く距離。凪は慌てて手を
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