【サンプル短編小説】小さな優しい輪の中で
あ!あいだのじいさんだよ。あいだのじいさん!いつもの公園で、散歩途中のあいだのじいさんに出会った。あいだのじいさんは、私と娘だけの秘密のあだ名。娘が好きな子ども向け番組に出てくるキャラクターの名前だ。それに似てるというわけでもなく、娘の中でブレイクワードだった"あいだのじいさん"という言葉がしっくりハマってしまったのだ。毎日毎日、私たちは公園で遊び、あいだのじいさんは散歩をしている。お互いの存在を認めざるを得なくなった頃、あいだのじいさんは娘に手を振ってくれるようになり、次第に娘も手を振りかえすようになった。そして少しだけ話をするようにもなり、今ではたまにお家にお邪魔してお茶をいただいたりもする。つぐみちゃん、こんにちは。あいだのじいさんは優しく手を振りながらこちらに向かって歩いてくる。あいだのじいさん!娘は今にも足が絡まりそうなほど危なっかしい走りで向かっていった。こんにちは。今日はいい天気でしたね。私もたわいもない話をする。娘は手に持ったダンゴムシをあいだのじいさんに渡した。白い手袋をしたあいだのじいさんの手のひらでコロコロと転がるダンゴムシを3人で見た。なんとも不思議な、愛おしくて可笑しな時間が流れた。空が少しオレンジ色に染まってきた。そろそろ帰ろうか。あいだのじいさんとダンゴムシと夢中で遊ぶ娘に渋々声をかけた。いつもすんなりうんとは言ってもらえない。まだかえらない。あいだのじいさんは、明日うちに遊びにくるかい?保育園お休みだろ?と聞いてくれた。娘は勢いよく、いく!プリン!と答えた。娘はお家に遊びに行くというより、大好物のプリンをいただきに行くのを楽しみにしているのだ。す
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