【高校物理】台と小物体の運動 なぜ小物体の位置エネルギーが台にも配分されるのか?

記事
学び
なめらかな床上のなめらかな斜面を持つ台上で小物体をすべらせる
IMG_5571.jpg

小物体が高さhすべり降りたとき、小物体の速さvと台の速さVはいくらか?
これを求めるのに
エネルギー2物体.png

こんな式が問題集の答えに書いてあるのですが、どうして小物体の位置エネルギーが台にまで配分されるのでしょう?

小物体の位置エネルギーが小物体の運動エネルギーになる
エネルギー1物体.png
ではいけないのか? 

エネルギーの原理に立ち返って見ましょう

エネルギーの原理は「された仕事の分だけ運動エネルギーが変化する」です。これめちゃくちゃ重要!

この運動の過程ではたらく力をすべて挙げ、それぞれ仕事をするかしないか判断してみましょう
練習問題4-2.jpg

小物体にはたらく力は重力mgと垂直抗力n。台にはたらく力は重力Mgと小物体からの垂直抗力nと床からの垂直抗力N

まず、小物体に注目しましょう。mgは明らかに仕事をしてますね。
nは?
垂直抗力は斜面に垂直で小物体は斜面に平行にすべっているのだから仕事をしてない…としてしまいそうですが、ちょっと待った!

台から見ると、たしかに、小物体は斜面に平行にすべってますが、床から見ると台もすべっているのだから、小物体は斜面に平行にはすべっていません。つまり、垂直抗力nは仕事をしているのです。

小物体のエネルギーの原理は
エネルギー保存小物体.png
になります。 

次は台。あきらかに垂直抗力nは仕事をしてます。MgとNは仕事をしてません。
台のエネルギーの原理は
エネルギー保存台.png


ここで、ある考察をします。 

台が小物体に及ぼす垂直抗力をベクトルnとすると、小物体が台に及ぼす垂直抗力はマイナスベクトルnです(作用・反作用の法則) 。

小物体の変位をベクトルx、台の変位をベクトルXとすると、

ベクトルnがした仕事はn・x(内積)
マイナスベクトルnがした仕事は-n・x

この2つの仕事の和をWとすると
仕事の和.png
ここで、ベクトル(x-X)は台から見た小物体の相対変位です。台から見ると小物体は斜面に平行に滑るので、x-Xは斜面に平行です。nは斜面に垂直ですから、nとx-Xは垂直だということになります。したがって 
仕事の和0.png
つまり、小物体と台の間の垂直抗力がした仕事の和は0になるのです。 

先の、小物体と台のエネルギーの式①②を足すと、垂直抗力がした仕事の和が0になって
エネルギー2物体.png

これで目的の式にたどりつきました。
台にも小物体の位置エネルギーが配分される理由はこのようになります。

理由も分からず、たぶんエネルギー保存だろう、として使ってしまうのはあまりよくないです。

エネルギー保存をつかうのなら、エネルギー保存が成立していることを示してから使いましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

・独学で大学受験を目指しているが、どうしても誰かに質問したいことがあって困っている

・学校、予備校・塾で分からないことがあるが、質問しづらい雰囲気

こういう方いませんか。そんな方には【チャットサポート授業】


チャットのサンプルはこちら
504F20E8-9F6B-46DF-859B-B8E84D3EACC1_1_201_a.jpeg
9748C67A-7702-45E7-91BA-7FEFCC364E63_1_201_a.jpeg

生徒にはとても分かりやすいと好評です。

独学で一人悩みを抱え込まないように
予備校通いをムダにしないために

【チャットサポート授業】をお考えください。ぜひ。


プロフィール

高校物理・化学家庭教師
生徒合格実績
東京大学理Ⅲ、大阪市立大学医学部、近畿大学医学部、近畿大学薬学部など
学習参考書『高校物理発想法』出版
その他、Kindle書籍多数出版


サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す