ねえ、不安なの。手を握っていて。
ほんとはあなたの家へ行きたいわ。
でも今はまだ風が強すぎる。
あたしは平気でも、あなたが吹き飛ばされてしまう。
大きな声で叫んだわ。
あなたがあたしの願いを叫べって言ったのだもの
おかげで風はびゅうびゅう吹き荒れた。
あなたったら風が強いと家から出ないんだもの。
だからあたしから、会いに行かなくちゃ。
ねえ、離れそうよ。強く握っていて。
ほんとはあなたの家へ行きたいわ。
あなたは傍に抱きしめる人がいるのに
あたしの胸は独りキリなんて不自然よ。
一緒にいるのが自然だわ。
だからあたし達は、出会わなくちゃ。
食事やお茶の約束はいらない。
お散歩なんて過程はいらない。
どうしてあたし、神様なんてなったんだろう。
美しければ人が集まり、
気高ければ尊敬されて、
聡明であれば話を聞いてくれると思ってた。
なぜ人が集まってもあたしを見てくれないの?
なぜ尊敬されても崇拝されるだけなの?
どうして、聞くだけで話しかけてくれないの?
あなたは何にもない癖に、独りではない。
やはり不自然よ、あたしたちはより近づくべきだわ。
あたしは確固たる存在であるのに、
あなたはどこまでも中途半端な存在。
ねえ、もっと来て。中途半端なあなたが必要なの。
女神の形を作り上げてきたあたしには
あなたのような形が定まらない時間が必要なの。
あなたとあたし、二人が一緒がいいの。
世界の中で不器用を愛せる二人でいられることが、
自然で、自由と呼べるものなのよ。