老人ホームの医療・介護体制はどこを見ればいい?看護、医療対応、要介護度、併設サービスから施設を読む

老人ホームの医療・介護体制はどこを見ればいい?看護、医療対応、要介護度、併設サービスから施設を読む

記事
学び
老人ホームを探すとき、料金や立地、部屋の広さは比較しやすい。

一方で、分かりにくいのが「医療や介護にどこまで対応できるのか」という部分です。

ホームページを見ると、

「24時間安心」

「医療機関と連携」

「看護師配置」

「介護体制充実」

といった言葉が並んでいることがあります。

ただ、これだけでは実際の体制までは分かりません。

看護師は24時間いるのか、それとも日中だけなのか。

夜間は介護職員が何人いるのか。

医療機関と「連携している」とは、具体的に何をしているのか。

胃ろう、インスリン、在宅酸素、尿道カテーテルなどが必要になった場合も対応できるのか。

現在は入居できても、状態が悪化したときに住み続けられるのか。

老人ホームを比較するときは、こうしたところまで見ておいたほうがいい。

2026年9月18日に厚生労働省が公表した「有料老人ホームの現状と課題について」には、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の入居者像、職員配置、医療処置、併設事業所などについて多くの資料が掲載されています。

今回は、この資料をもとに「医療・介護体制を見るとき、どこを確認すればいいのか」を整理します。

まず「看護師がいる」だけでは十分ではない
老人ホームのホームページで「看護師配置」と書かれていると、何となく安心感があります。

ただし、重要なのは「いるか、いないか」だけではありません。

確認したいのは、

何時から何時までいるのか。

毎日いるのか。

夜間も施設内にいるのか。

夜間はオンコール対応なのか。

緊急時には誰が判断するのか。

といった具体的な体制です。

介護付き有料老人ホームの場合、介護保険法上の人員基準があります。

厚生労働省資料では、要介護者については看護・介護職員を3対1、要支援者については10対1とする基準があり、夜間帯についても職員1人以上を配置することとされています。

ただし、この「3対1」は「入居者3人に対して、常に職員1人が横についている」という意味ではありません。

人員基準上の配置を示す数字なので、実際の時間帯ごとの人数は施設によって異なります。

そのため、見学するときには、

「夜間は何人で対応していますか」

「看護師は夜間も施設内にいますか」

と具体的に聞いたほうが分かりやすいでしょう。

サ高住では「看護師が常駐」が必須ではない
サービス付き高齢者向け住宅、いわゆるサ高住についても注意が必要です。

サ高住の基本は、高齢者向けの住宅です。

制度上、少なくとも状況把握と生活相談サービスを提供し、原則として日中は一定の資格を持つ職員などが常駐します。

常駐しない時間帯は、緊急通報システムによる対応も認められています。

つまり、

「サ高住=24時間看護師がいる」

わけではありません。

もちろん、実際には訪問看護ステーションを併設していたり、看護師を独自に配置していたりするサ高住もあります。

だからこそ、施設の種類だけではなく、個別の体制を見る必要があります。

今いる入居者の「要介護度」を見る
施設の介護体制を知るときに、意外と参考になるのが「現在どんな人が入居しているか」です。

厚労省の2025年度調査では、要介護3~5の中重度者が占める割合は、

介護付き有料老人ホーム 約39%

住宅型有料老人ホーム 約56%

サービス付き高齢者向け住宅 約33%

となっています。

ここで興味深いのは、住宅型有料老人ホームです。

「住宅型」という名前から、比較的元気な人が多いイメージを持つかもしれません。

しかし、この調査では住宅型の入居者の半数以上が要介護3~5です。

さらに、2015年から2025年の変化を見ると、住宅型では要介護3以上の中重度者の割合が48.9%から56.0%へ上昇しています。

つまり、

「施設の名前」

だけでは、その施設が実際にどの程度の介護ニーズに対応しているのかは分かりません。

施設ごとの重要事項説明書などで、

入居者の平均要介護度

要介護度別の人数

などを見ると、その施設の実態が少し見えてきます。

医療対応を見るなら「何ができるか」を具体的に確認する
「医療対応可能」という表現も、かなり幅があります。

たとえば、

服薬管理。

インスリン注射。

在宅酸素。

胃ろう。

経管栄養。

尿道カテーテル。

喀痰吸引。

人工肛門。

褥瘡処置。

こうした医療的な対応は、施設によって可能なものと難しいものがあります。

厚労省資料では、医療処置を必要とする入居者の割合について、特定施設では13.2%、住宅型では13.4%、サ高住では6.8%とされています。

また、どの類型でも「尿道カテーテルの管理」が最も多い医療処置でした。

ただし、これは全国調査の平均です。

目の前の施設が同じ対応をしているとは限りません。

そのため本人に必要な処置がある場合は、

「○○の対応は可能ですか」

と処置名を具体的に伝えて確認したほうがいいでしょう。

さらに大切なのは、「今できるか」だけではありません。

現在は自分でインスリン注射ができても、将来自分でできなくなった場合はどうなるのか。

今は経口摂取できても、将来胃ろうになった場合は住み続けられるのか。

今は軽度でも、夜間の吸引が必要になったらどうなるのか。

状態が変わった場合まで考えて確認することが重要です。

「協力医療機関があります」だけでは中身が分からない
老人ホームの資料を見ると、「協力医療機関」という項目がよくあります。

近くの病院名が書いてあると安心しやすいですが、病院名だけを見ても実際の連携内容は分かりません。

厚労省資料では、特定施設について、協力医療機関との定期的な会議や、相談・診療体制などに関する介護報酬上の仕組みも設けられています。

施設を検討するときには、

どの医療機関と連携しているのか。

急変時にはどこへ搬送するのか。

定期受診はどうするのか。

通院時に施設職員が付き添うのか。

往診はあるのか。

夜間に体調が悪化した場合、誰が医療機関へ連絡するのか。

といったところまで確認すると、実際の体制が見えやすくなります。

「医療連携あり」という一言を、もう一段具体化して見るわけです。

「併設している施設」も見ておく
住宅型有料老人ホームやサ高住では、同じ建物や隣接地に介護サービス事業所があるケースが多くあります。

厚労省資料でも、住宅型有料老人ホームやサ高住では、訪問介護、訪問看護、デイサービスなどの事業所が併設・隣接しているケースが多いことが示されています。

別の集計では、住宅型の79.1%、サ高住の83.4%に併設・隣接する介護・医療サービス事業所があるとされています。

これは施設を比較するときの大きなポイントです。

たとえば同じ住宅型有料老人ホームでも、

訪問介護だけが併設されている施設。

訪問看護も併設されている施設。

デイサービスもある施設。

クリニックや病院が近接している施設。

では、環境がかなり違います。

ただし、「併設されている=必ずそのサービスを使わなければならない」ということではありません。

何が併設されているのかと同時に、

実際に誰がサービスを提供するのか

も確認しておきたいところです。

本人が重くなったときに住み続けられるか
施設探しでは、どうしても「今の状態」で考えます。

しかし老人ホームは、数年間住む可能性があります。

現在は要介護1でも、数年後には要介護4になるかもしれません。

歩けなくなるかもしれません。

認知症が進むかもしれません。

医療処置が必要になるかもしれません。

だから、

「現在入居できますか」

だけでなく、

「どんな状態になると住み続けることが難しくなりますか」

も重要な質問です。

たとえば、

認知症による行動が強くなった場合。

常時医療処置が必要になった場合。

長期間入院した場合。

夜間の医療対応が必要になった場合。

看取りの段階になった場合。

施設によって対応範囲は異なります。

「終身利用できます」という言葉だけではなく、具体的な条件を確認したほうがいいでしょう。

看取りの実績も一つの情報になる
厚労省資料を見ると、有料老人ホームやサ高住は、単なる一時的な住まいではなく、最期まで暮らす場所としての役割も大きくなっています。

2025年調査では、退去理由として死亡による契約終了が、

特定施設 58.1%

住宅型 54.6%

サ高住 41.9%

となっています。

もちろん、死亡退去の割合が高ければ良い施設という意味ではありません。

ただ、

看取りを行っているのか。

どのような体制なのか。

家族はどこまで付き添えるのか。

医師や訪問看護との連携はどうなっているのか。

などは、長期間暮らすことを考えるなら確認しておきたい項目です。

ホームページを見るなら、この5つを確認する
医療・介護体制を比較するときには、少なくとも次の5点を同じように見ると整理しやすくなります。

1.介護職員・看護職員の配置

看護師がいる時間帯、夜間の職員数、オンコール体制などを見る。

2.現在の入居者像

平均要介護度や要介護度別の人数を見る。

3.対応できる医療処置

本人に必要な処置と、将来必要になりそうな処置を確認する。

4.併設・隣接サービス

訪問介護、訪問看護、デイサービス、クリニックなどがあるかを見る。

5.状態が変わった場合の対応

介護度の上昇、認知症の進行、長期入院、医療依存度の上昇、看取りなどについて確認する。

この5つを同じ項目で並べるだけでも、施設ごとの違いがかなり見えやすくなります。

「医療対応充実」という言葉だけで決めない
老人ホーム探しでは、どうしても短い言葉に目が行きます。

「24時間安心」

「看護師配置」

「医療連携」

「看取り対応」

しかし、本当に知りたいのは、その言葉の中身です。

何時に誰がいるのか。

何ができるのか。

何ができないのか。

誰が介護サービスを提供するのか。

状態が変化しても住み続けられるのか。

ここまで分解すると、施設同士を比較しやすくなります。

老人ホームの医療・介護体制を見るときは、

「あるか、ないか」ではなく、「具体的にどうなっているか」

を見る。

これが一番大事だと思います。



参考資料
厚生労働省
「有料老人ホームの現状と課題について」
有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第9回)参考資料3
2026年9月18日
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す